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感染症科

2016年2月16日 (火)

Clinical practice guideline for the management of candidasis:2016

カンジダ症のガイドラインの2016年Updateを読んでいます。      
17のClinical questionに答える形で推奨事項が140ほどあって、全部読むのは大変なので興味のあるところをピックアップして訳します。      
最初はカンジダ血症についてです。好中球減少状態とそうでない状態で推奨がわかれています。こちらのGLもGRADE systemでつくられています。

 

青字は管理人のコメントです。投与量などは気をつけて訳しているつもりですが、訳が間違っている可能性もあります。必要に応じて原典、添付文書にあたるようにしてください。

 

Pappas PG, Kauffman CA, Andes DR, Clancy CJ, Marr KA, Ostrosky-Zeichner L, et al. Clinical Practice Guideline for the Management of Candidiasis: 2016 Update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2015 Dec 16;civ933.

 

Ⅰ 非好中球減少状態の患者のカンジダ血症の治療は?      
推奨
      
1. エキノキャンディンを初期治療として推奨する。       
[カスポファンギン:ローディング70 mgその後、1日50mg、ミカファンギン:1日100mg、アニデュラファンギン:ローディング200 mgその後1日100 mg]
      
(強い推奨、質の高いエビデンス)      
安全性の高さと効果からキャンディン系が第一選択として推奨されています。      
移行性の問題からキャンディン系が使わない方がよいといわれるのはどこか?         
答は「
眼、中枢神経、尿路です。回診で後輩をいじるネタにどうぞ。

   

2. 重篤な状態ではなく、フルコナゾール耐性カンジダが検出される可能性が低い患者では 静脈内または経口フルコナゾール[800 mg(12mg/kg)ローディング後 400mg(6mg/kg)1日1回] もエキノキャンディンの代替薬として許容される

 

3. アゾール系の感受性試験はすべての血流感染症と、他の臨床的に重要なカンジダの分離株で推奨される。       
エキノキャンディン感受性試験は、エキノキャンディンでの治療歴がある患者、C. glabrataまたはC. parapsilosisによる感染症の患者では考慮すべきである。         
(強い推薦、質の低いエビデンス)       
C. parapsilosisはキャンディン系に対するMICが高めだから、フルコナゾールの方がよいのでは、という話がありましたが、臨床的には治療失敗は確認されていないという報告がありました。

 

4. エキノキャンディンからフルコナゾールへの変更は以下の場合に推奨。(通常は5-7日以内)       
患者が安定していて、フルコナゾール感受性カンジダ(例:C. albicans)による感染症で、抗真菌薬開始後の繰り返した血液培養が陰性化している場合         
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)。       
真菌症であまりDe-escalationというのは意識されませんが、”Step down therapy”として「点滴エキノキャンディン→5-7日で安定してたら内服アゾール」という流れが推奨されています。エキノキャンディンで治療完遂するのと安定したらアゾール内服に変更するのとでアウトカムに差はなし、とする報告があったからのようです。この報告ではアニデュラファンギンのようですが、キャンディン系はだいたいデータを読み替えることが多いので、ミカファンギンでもよいということかな。

 

5. C. glabrataによる感染症の場合は、フルコナゾールとボリコナゾールに感受性の株であれば、高用量フルコナゾール800mg1日1回(12mg/kg)か、ボリコナゾール200-300(3-4mg/kg)1日2回への変更のみ検討してもよい。      
(強い推奨、質の低いエビデンス)
      
C. glabrataとC. kruseiはアゾールに比較的耐性。 

 

6. 脂質製剤アムホテリシンB(AmB)(1日1回3-5mg/kg)は他の薬剤が副作用で使えない場合、他の薬剤が手に入らない場合、他の薬剤に耐性がある場合は代替薬として妥当である。       
(強い推奨、質の高いエビデンス)       
AmBは副作用を考えるとカンジダ血症では第一選択ではありませんが、出番はあります。      
ちなみにカンジダ血症の治療にはイトラコナゾールの出番はありません。

 

7. AmBからフルコナゾールへの変更は以下の場合に推奨。(通常5-7日以内)       
患者が安定していて、フルコナゾール感受性カンジダによる感染症で、抗真菌薬開始後の繰り返した血液培養が陰性化している場合。       
(強い推奨、質の高いエビデンス)         
こちらもStep down therapyの話。

 

8. アゾール系とエキノキャンディンに耐性のカンジダによる感染症が疑われる場合は、脂質製剤のAmB(1日3-5mg/kg)を推奨する。       
(強い推薦、質の低いエビデンス)

 

9. ボリコナゾール[400mg(6mg/kg)1日2回を2回投与後 200mg(3mg / kg)を1日2回]はカンジダ血症に有効であるが、初期治療としてはフルコナゾールを超える有利な点はごくわずかである。       
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)         
投与回数は多いし、体内動態のバラ付きが大きいし、相互作用が多くて、認容性が劣る、と本文にはあります。      
C. kruseiによる真菌血症の患者では状態が許せば経口にステップダウンする場合にボリコナゾールが推奨される。       
(強い推薦、質の低いエビデンス)       
C. krusei、C. guilliermondiiはフルコナゾール耐性、ボリコナゾール感受性。

 

10.好中球減少状態でないカンジダ血症の患者は診断から1週間以内に散瞳を伴う眼科診察を受けるべきである。できれば眼科医によるものが望ましい。       
(強い推薦、質の低いエビデンス)       
患者さんのリスクを層別化すれば全員じゃなくてもいいんじゃない?という意見もありますが、早期発見による失明の予防の重要さを考えるとやはり全例での診察を推奨する、だそうです。

 

11.フォローの血液培養はカンジダが陰性化された時点を確立するために、毎日または隔日に行うべきである。       
(強い推薦、質の低いエビデンス)       
S. aureusとカンジダは必ず血培をフォローして陰性化を確認です。

 

12.明らかな転移性合併症のないカンジダ血症の治療の推奨期間は、カンジダ血症による症状が消失して、カンジダが血液培養から陰性化してから2週間である。       
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)       
今のところ短縮して大丈夫というデータはなく、これがスタンダードの治療です。      
状態がゆるせば点滴から内服への変更はありだろう、というのは上述の通り。

 

 

Ⅱ 非好中球減少状態の患者のカンジダ血症では中心静脈ラインを抜去すべきか? 

 

13.カンジダ血症で中心静脈カテーテル(CVCs)が感染源と考えられ、安全に抜去できる場合は、できるだけ早期に抜去すべきである。      
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)      
カンジダ血症の原因のほとんどはCVCs なので、バイオフィルムを除去する意味で抜去が重要です。とはいえカンジダ血症は腹腔内を原因で起きることもあります。残念ながらCVCs由来と腹腔内由来を区別することはできないので、全例抜去を推奨ということになっています。      
なおC. parapsilosisだけは非常に高率にCVCsと関連していて、早期の抜去のメリットがはっきりしています。       
C. parapsilosisはバイオフィルム産生能力が高くて環境表面や皮膚に付着しやすいようです。

2016年2月 2日 (火)

クラリスロマイシンと心血管イベント

クラリスロマイシンが短期的な心血管イベントのリスク上昇に関連しているという香港からの報告です。
アジスロマイシンについても心血管死亡リスクの上昇が2012年に報告されています

その後も似たような報告をいくつか見た記憶があるので、これが何件目なのか覚えていませんが…
日本でも外来でクラリスロマイシンは大変多く処方されています
風邪薬がわりに気軽に抗菌薬を処方することの隠れた危険性を指し示す結果です。

 

Wong AYS, Root A, Douglas IJ, Chui CSL, Chan EW, Ghebremichael-Weldeselassie Y, et al. Cardiovascular outcomes associated with use of clarithromycin: population based study. BMJ. 2016 Jan 14;352:h6926.

問題点
クラリスロマイシンの使用と心血管アウトカムとの間の関連性はどのようなものか?

方法
このPopulation based studyでは香港で2005年-2009の間に経口クラリスロマイシンまたはアモキシシリンを投与された18歳以上の成人の心血管アウトカムを比較した。 研究期間の5年間のクラリスロマイシンの投与を受けた患者の年齢、 性別、暦年に応じて1人または2人のアモキシシリン投与患者にマッチさせた。コホート分析の内訳はクラリスロマイシン(N = 108 988)、アモキシシリン(N = 217 793)であった。自己対照ケースシリーズとケースクロスオーバー解析には、クラリスロマイシンを含むヘリコバクター・ピロリ除菌治療を受けた患者も含まれていた。主要アウトカムは心筋梗塞。二次的アウトカムは、すべての原因による死亡率、心疾患による死亡率、非心臓疾患の死亡率、不整脈、および脳卒中。

結果とLimitation
傾向スコアで調整した死亡率の比は、抗菌薬開始から14日以内の心筋梗塞で3.66だった。(95%CI 2.82-4.76)クラリスロマイシンでは132イベント[1000人年あたりの率44.4]、アモキシシリンでは149イベント[1000人年あたりの率19.2]だった。長期的リスクの増加は認められなかった。同様に、二次アウトカムのrate ratioは、脳卒中を除き、アモキシシリンの使用に対してクラリスロマイシンの現在の使用により有意に増加していた。自己対照ケースシリーズ では、クラリスロマイシンを含むピロリ除菌治療と心血管イベントの関連があった。治療が終了後にリスクがベースラインに戻った。クロスオーバー解析もクラリスロマイシンを含むピロリ除菌治療の使用中の心血管イベントのリスクの増加を示した。アモキシシリンに対するクラリスロマイシンの調整した絶対リスク差は、1年間に1000患者あたり1.90件の心筋梗塞イベントの過剰(95%CI1.30-2.68)であった。

この研究での新しい知見
クラリスロマイシンの使用は香港人の集団で、心筋梗塞、不整脈、心臓死亡の短期リスク上昇と関連していた。しかし長期の心血管リスク上昇とは関連していなかった。

2015年12月 1日 (火)

AHA IE guideline 2015 update その2 Staphylococcus編

AHAの心内膜炎ガイドラインUpdate Recommendationsの訳第2弾はStaphylococcusです。今回はIEという言葉のかわりに心内膜炎という言葉にしています。検索にひっかかりやすくするためです。最初に自然弁、それから人工弁についての記載になっています。ところどころに青字で管理人のつぶやきが入ります。

 

   
◇Staphylococci   
1. 弁輪周囲への進展、心外の転移性病巣などの心内膜炎の合併症が出現していないかを継続的に監視するのが妥当である。      
(Class IIa; Level of Evidence C).

 

◆人工弁、異物のない状況でのStaphylococusによる心内膜炎    
○静注薬物乱用者の右心系心内膜炎      

1. Staphylococcusによる右心系の心内膜炎にゲンタマイシンの追加は推奨しない。(Class III; Level of Evidence B).      
静注薬物乱用者(IDU)の右心系心内膜炎は経験的に治療に反応がいいことが知られているので、そこまでやらんでもいいよっていう意味。日本ではあまり役に立たない知識です。

 

○静注薬物乱用者以外の感染性心内膜炎      
1. ゲンタマイシンはMSSAでもMRSAでも自然弁の心内膜炎の治療に使うべきではない。(Class III; Level of Evidence B).      
 とうとうMSSAによる自然弁のIEの推奨でゲンタマイシンが外されました。2005年までは最初の3-5日の追加が推奨されていましたが、効果が確かでなく腎機能障害が多いという報告があり推奨されなくなりました。心内膜炎に対するダプトマイシンの臨床試験でもアミノグリコシドの併用を行った標準治療群で腎機能障害の出現が多かった、というのも根拠になったようです。       
 
2. MSSAによる心内膜炎で脳膿瘍を合併した場合、セファゾリンではなくナフシリンを用いるべきである。ナフシリンが使えない場合はバンコマイシンを用いる。(Class I; Level of Evidence C).   
セファゾリンに中枢神経系移行がないのはかなり有名になってきました。抗ブドウ球菌ペニシリンが手に入らない日本の感染症科医にとっての大問題、MSSAがBBBの向こう側に入っちゃったらどうしよう問題に対してあっさりバンコマイシン使え、ということになっています。根拠は記載なし…      
      

3. S. aureusの菌血症でオキサシリン感受性がわかるまでバンコマイシンと抗ブドウ球菌用βラクタムを併用するのが役に立つかどうかは明らかではない。(Class IIb; Level of Evidence B)   
MSSAの菌血症に対してバンコマイシンで治療すると予後が悪いという話がありましたので、感受性がわかるまではβラクタムとバンコマイシンを併用した方がよいのではないか?という話がありました。この件についてはデータ不足ということもあり、保留の立場のようです。      
      

4. ペニシリン感受性のStaphylococcusによる心内膜炎は水性ペニシリンGではなく、抗ブドウ球菌用のβラクタムで治療するべきである。理由は一般的な検査室ではペニシリンの感受性を検出できないからである。(Class I; Level of Evidence B).      
 これも時々話題になりますね。S. aureusが本当にペニシリナーゼを産生しないかどうかを検査するのは難しいので、ペニシリンGに感受性とでても使うのはやめておけ、という立場ですね。表現形とペニシリナーゼ遺伝子の関連についてはこちらの論文が参考になります。 
   
5. MSSAによる合併症のない左心系の自然弁心内膜炎にはナフシリンか同等の抗ブドウ球菌ペニシリンの6週間投与を推奨。合併症がある場合には最短6週間の治療を推奨。(Class I; Level of Evidence C).      
       
6. MRSAによる左心系の心内膜炎に対してダプトマイシンは代替薬として妥当である。(Class IIb; Level of Evidence B).       

ダプトマイシンはまだ代替薬の扱いですね。MRSAのガイドラインでは同じくらいの推奨度でしたが、こちらではバンコマイシンの方がより強く推奨されています。     
   
7. ダプトマイシンの投与量は感染症専門医にコンサルテーションして選択するべきである。(Class I; Level of Evidence C).
もともとは6mg/kgでしたが、最近は8-10mg/kgがよいのでは、という話があります。というか出てきてからわりとすぐに多いほうがいいんじゃね、という話になったような気がします。

 

○βラクタムにアレルギーがあるか、使えない場合のMSSAによる心内膜炎の治療      
1. ペニシリンに対してアナフィラキシー以外の反応の既往が確実な場合はセファゾリンが妥当である。(Class IIa; Level of Evidence B).      
       
2. MSSAによる心内膜炎の治療にバンコマイシンの使用を考慮しなければならない場合は必ずβラクタムが使用できないかアレルギーの評価をするべきである。 (Class I; Level of Evidence B).       
       
3. 心内膜炎の再発率が高いのでクリンダマイシンの使用は推奨しない。(Class III; Level of Evidence B).
   
ふだんはあまり意識しない殺菌性か静菌性かという話がここでは重要です。引用されている文献によるとかなり昔から知られていたことのようであります。      
      

4. MSSAによる左心系の心内膜炎に対してバンコマイシンのかわりにダプトマイシンを使うのも妥当である。(Class IIa; Level of Evidence B).

 

○追加、併用治療      
1. Stpahylococcusによる自然弁の心内膜炎の治療にルーチンでリファンピシンを追加するのは推奨しない。(Class III; Level of Evidence B).      
どうしても血培が消えない時なんかに追加されることはあるだろうけど、結局薬の問題じゃないことの方が多いですよね。     
      
2. バンコマイシン耐性のStaphylococcusによる心内膜炎の治療は感染症専門医にコンサルトするべきである。(Class I; Level of Evidence C).      
コンサルトされても正直困るなぁ…

 

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◆人工物がある状況での感染性心内膜炎    
○コアグラーゼ陰性ブドウ球菌      

1. バンコマイシンとリファンピシンを最低6週間、初期2週間のみゲンタマイシンを追加して投与する。(Class I; Level of Evidence B).      
菌量が多いとリファンピシンは耐性をとられやすいので十分にバンコマイシンが効いてくるまで数日併用を待てという意見もあるよ、と紹介されています。理由はどうであれなんでもかんでも同時に突っ込むと副作用が出た時に混乱するので、待てるものなら少し待つというのは悪くないように思われます。      
      

2. コアグラーゼ陰性ブドウ球菌がゲンタマイシンに耐性の場合は、感受性のある別のアミノグリコシドを使用してもよいかもしれない。(Class IIb; Level of Evidence C).      
 別のアミノグリコシド…アルベカシンも含むのかしら?私にもわかりません。 
 
3. コアグラーゼ陰性ブドウ球菌がすべてのアミノグリコシドに耐性の場合は、感受性のあるキノロンを使用してもよいかもしれない。(Class IIb; Level of Evidence C)      
       
4. 細菌学的に再燃がみられた場合は、手術検体か血液の培養で検出された細菌の感受性をすべて慎重にやりなおすべきである。(Class I; Level of Evidence C)

 

○S. aureus      
1. 組合せの抗菌薬治療を推奨。(Class I; Level of Evidence C).      
2. βラクタムのレジメンでもでもバンコマイシンのレジメンでもゲンタマイシンを最初の2週間追加する。(Class I; Level of Evidence C).       

自然弁では用済みになってしまったアミノグリコシドもまだ人工弁では現役です。

 

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次回は腸球菌編です。

2015年11月29日 (日)

AHA IE guideline 2015 update その1 総論 Streptococcus

10年ぶりにAmerican Heart Association(AHA)の心内膜炎治療ガイドラインがUpdateされました。

ヨーロッパのESC ガイドラインも今年Updateされたので、2015年で米欧のガイドラインがUpdateされたことになります。   
自分の勉強のためにRecommendationのところだけ訳していくことにしました。   
最初に総論と診断についての記載があって、その後Streptococcus, Staphylococcus, Enterococcusとグラム陽性球菌によるIEの治療、   
その後HACEK, Non-HACEK GNR, Fungi, Culture negativeと続き、最後に合併症についての治療の記載が載っている構造は2005年の   
ガイドラインとかわらないようです。   
個人の勉強用のブログです。誤訳の可能性もありますので、疑問な点は原著にあたってください。ところどころ管理人のコメントが青字で入ります。投与量が表にまとまっているところは表をそのまま貼っておきます。

 

Baddour LM, Wilson WR, Bayer AS, Fowler VG, Tleyjeh IM, Rybak MJ, et al. Infective Endocarditis in Adults: Diagnosis, Antimicrobial Therapy, and Management of Complications A Scientific Statement for Healthcare Professionals From the American Heart Association. Circulation. 2015 Oct 13;132(15):1435–86.   

 

◇診断について      
1. 最低3セットの血液培養を異なる穿刺部位から採取すべきである。最初の検体と最後の検体は最短1時間開ける。      
(Class I; Level of Evidence A).      
2. 心エコーはIEが疑われる患者では迅速に行うべきである。      
(Class I;Level of Evidence A).    

診断の基本はもちろんDukeのクライテリアです。ここでは省略。

 
◇心エコーについて      

1.IEを疑ったらまずはTTE(経胸壁心エコー)を行う。(Class I; Level of Evidence B).

 

◇繰り返す心エコー   
1. 以下の場合はTEE(経食道心エコー)を行う。最初のTTEで陰性か、不十分な結果だったが、IEの疑いが続いている。または最初のTTEで陽性だったがしんない合併症が疑われる場合。(Class I; Level of Evidence B).    
2. 最初のTEEで陰性であったにもかかわらず、IEの強い疑いがある場合は3-5日後に再検するか、臨床的な変化があった場合にすぐに行うよう推奨する。(ClassI; Level of Evidence B).      
3. 最初のTEEが陽性で、心内合併症が疑われる場合はTEEを再検するべきである。(Class I; Level of Evidence B).

 

◇治療終了時の心エコー      
1.  抗菌薬治療が終了した時点でTTEを行うのはベースラインとなる状態を把握しておく意味で理にかなっている。(Class IIa; Level of Evidence C).

 

◇抗菌薬治療 治療の原則      
   

1. 抗菌薬開始時点で最適な経験的治療レジメンを決めるため感染症専門医にコンサルトするのが望ましい。(ClassI; Level of Evidence B).    
2. 治療期間は陰性化した血液培養が採取された日からカウントするのが理にかなっている。(Class IIa; Level of Evidence C).      
3. 血液培養陰性が確認されるまで24時間から48時間毎に最低2セットの血液培養を採取するのが理にかなっている。(Class IIa; Level of Evidence C).      
4. 手術で得られた検体が培養陽性だった場合は弁膜の手術をした日を基点として治療期間を完遂するのが理にかなっている。(Class IIa; Level of Evidence B).      
5. 手術で得られた検体が培養陰性だった場合は手術前の投与日数をあわせて全体の投与日数とするのが理にかなっているだろう。(Class IIb; Level of Evidence C).      

ここはややこしいところなので、原著にあたっていただきたい。2005年のCID2011年のCMIに術後2週間の投与で充分か?ということを検討したスタディがでています。といっても日本では4-6週間の抗菌薬投与が終わるところで手術が行われることが多いのではないでしょうか。      
実際にはケースバイケースで治療期間を設定していくことが多いと思います。
      
6. 2剤以上を含むレジメンでは抗菌薬の投与は同時か、ごく近い時間に投与するのが理にかなっている。(Class IIa; Level of Evidence C).      
これはシナジー効果を最大限に得るため、と本文に記載がありました。アミノグリコシドとβラクタムはどっちを先にすべきか、みたいな議論が日本ではよくされますね。どうでもいいとは思いませんが、全体からすると瑣末なことのように思えます(個人の感想です)。

 

 

◇Viridans group streptococcus(VGS), Streptococcus gallolyticus (以前のStreptococcus bovis), Abiotrophia defectiva, Granulicatella Species

◆自然弁         
◯高度感受性のVGSとS. gallolyticus (MIC ≤0.12 µg/mL)
       
       

1. 水性のペニシリンGとセフトリアキソンはともに4週間の治療のオプションである。(Class IIa; Level of Evidence B).         
2. 合併症のないIEで治療に対する反応がよく、腎機能障害がない人であれば、ゲンタマイシンを含む2週間の治療レジメンも理にかなっている。(Class IIa; Level of Evidence B). 
       
以前から記載されている2週間レジメン。やったことないし、やってる人を見たこともない。         
3. ペニシリンもセフトリアキソンも使えない場合は、バンコマイシンによる4週間の治療も理にかなった代替治療である。         
4. 望ましいバンコマイシンのトラフは10-15μg/mLである。(Class I; Level of Evidence C).
         
VGSによるIEに対するバンコマイシンのトラフの目安が示されました。これは2005年にはなかったはず。MRSAでは15-20μg/mLがスタンダードになっていますが、なんでもかんでもこのトラフにしておけばいいというわけではない。しかし本文を見ても根拠は示されていません…Expert opinionでしょう。          
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◯相対的に耐性のVGSとS. gallolyticus (MIC 0.12 ~0.5µg/mL)              

1. 初期の2週間ゲンタマイシン1日1回投与を併用したペニシリンの4週間投与するのが理にかなっている。(Class IIa; Level of Evidence B).               
2. セフトリアキソンに感受性がある場合はセフトリアキソン単剤も考慮。(Class IIb; Level of Evidence C).               
3. βラクタムが使えない場合にはバンコマイシン単剤も理にかなっている。(Class IIb; Level of Evidence C).       
       
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A. defectivaとGranulicatella属、ペニシリンに対するMIC>0.5のVGS                  
かつてはNutritionally variant streptococci(NVS)として(ごく一部では)お馴染みのAbiotrophia、Granulicatellaですね。Gemella(ガメラじゃない)もここに含まれます。普通のVGSに比べると治療失敗が多いので有名。腸球菌を治療する感じで治療します。                
1. A. defectiva, Granulicatella属、ペニシリンのMIC≧0.5µg/mL のVGSによるIEを治療する場合は感染症専門医にコンサルトしつつ、アンピシリンかペニシリンをゲンタマイシンと組み合わせて治療するのが理にかなっている。(Class IIa; Level of Evidence C).               
2. アンピシリンもペニシリンも使えなくてバンコマイシンを用いる場合はゲンタマイシンの追加は不要である。(Class III; Level of Evidence C).               
3. ペニシリンのMIC≧0.5µg/mLでセフトリアキソンに感受性にあるVGSの場合は、セフトリアキソンとゲンタマイシンの併用も理にかなっている。(Class  IIb;  Level  of Evidence C).
       

◆人工弁                  
1. 水性ペニシリンGかセフトリアキソンの6週間投与が理にかなっている。初期の2週間にはゲンタマイシンを加えても加えなくてもよい。(Class IIa; Level of Evidence B).                  
2. 原因微生物のペニシリンGのMIC>0.12µg/mLの場合はゲンタマイシンの投与期間を6週間に延長する。(Class IIa; Level of Evidence C).                  
3. ペニシリン、セフトリアキソン、ゲンタマイシンがいずれも使えない場合はバンコマイシンが使用可能である。(Class  IIa; Level of Evidence B).

               

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◇Streptococcus pneumoniae, Streptococcus pyogenes, Groups B, C, F, G β-Hemolytic Streptococci                  
                   

1. S. pneumoniaeによるIEではペニシリン、セファゾリン、セフトリアキソンの4週間投与が理にかなっている。βラクタムが使えない場合はバンコマイシンが代替薬である。(Class IIa;Level of Evidence C).                      
恥ずかしながらここにセファゾリンが入っていることに初めて気が付きました。レンサ球菌のIEの治療には使ったことないなぁ。                        
2. S. pneumoniaeによる人工弁の心内膜炎では治療期間を6週間まで延長するのが理にかなっている。(Class IIa; Level of Evidence C).                        
3. 髄膜炎を伴わないPRSPによるIEの場合は高容量ペニシリンか、第3世代セファロスポリンが理にかなっている。髄膜炎を伴う場合はセフォタキシム(またはセフトリアキソン)が理にかなっている。(Class IIa; Level of Evidence C).                        
4. セフトリアキソン耐性(MIC>2  µg/mL)のS. pneumoniaeによるIEの場合はセフォタキシム(またはセフトリアキソン)にバンコマイシンとリファンピシンを追加するのが理にかなっている。(Class  IIb;  Level  of Evidence C).5. S. pneumoniaeによるIEは複雑なので、感染症専門医にコンサルトするのが望ましい。(Class I; Level of Evidence C).                        
6. S. pyogenesによるIEでは水溶性ペニシリンGかかセフトリアキソンの4-6週間の投与が理にかなっている。バンコマイシンはβラクタムが使えない時のみ、代替薬として用いる。(Class IIa;Level of Evidence C).                        
7. B群、C群、G群レンサ球菌によるIEの場合はペニシリンGかセフトリアキソンを4-6週間と初期の2週間にゲンタマイシンを追加したレジメンでの治療を考慮する。(Class IIb; Level of Evidence C).                        
8. β溶連菌によるIEでは感染症専門医へのコンサルテーションを推奨。(Class I; Level of Evidence C).

今回はここまで。

                            

         

    

   

2015年8月10日 (月)

椎体炎のIDSAガイドライン

久々に更新です。ブログの存在を忘れたわけではありません。
IDSAから椎体炎(Native vertebral osteomyelitis:NVO)のガイドラインがでました。

Berbari EF, Kanj SS, Kowalski TJ, Darouiche RO, Widmer AF, Schmitt SK, et al. 2015 Infectious Diseases Society of America (IDSA) Clinical Practice Guidelines for the Diagnosis and Treatment of Native Vertebral Osteomyelitis in Adults. Clin Infect Dis. 2015 Jul 29;civ482. 

自分の診療を見直すためにサマリ部分を訳しました。GRADE方式にそったガイドラインなので推奨度の記載がAⅠとかBⅡではなく、推奨度(強い、弱い)とそれぞれの推奨に対するエビデンスの質が記載されています。2013年の人工関節感染のGLはまだ前の方式だったのにかわりましたね。残念ながらほとんどがエビデンスの質が低い。この領域はRCTなどは難しい分野なので仕方ないところではあります。

このブログは個人的なメモなので、訳に間違いがある可能性大なので詳細は原典をご確認ください。
ところどころ管理人のコメントが青字で入ります。

I. When Should the Diagnosis of NVO Be Considered?
いつNVOを疑うべきだろうか?

1. 新たに発症、あるいは悪化した背部痛、頚部痛と発熱を認める時はNVOを疑う。
(強い推奨 エビデンスの質:低)

2. 新たに発症、あるいは悪化した背部痛、頚部痛に加えてCRPと血沈の上昇を認める時はNVOを疑う。
(強い推奨 エビデンスの質:低)

3. 血流感染か心内膜炎の患者に新たに発症、あるいは悪化した背部痛、頚部痛を認める時はNVOを疑う。
(強い推奨 エビデンスの質:低)

4. 発熱と新たな神経学的兆候と腰痛のある患者では(なくても)NVOを考慮する。
(弱い推奨 エビデンスの質:低)

5. 最近のS. aureusの血流感染に引き続いて、頸部か背部に局在する痛みを訴える患者ではNVOを考慮する。
(弱い推奨 エビデンスの質:低)
これは血液培養ラウンドをするときにいつも気をつけています。「ずっと寝てるから腰が痛いんです」と本人が言っても要注意ですよ。

II. What Is the Appropriate Diagnostic Evaluation of Patients With Suspected NVO?
NVOの診断のための適切な評価は?

6. NVOを疑うときは内科的診察と運動/感覚神経の診察を推奨する
(強い推奨 エビデンスの質:低)

7. 血液培養2セットとベースラインでの血沈、CRPを全患者で採取するよう推奨する。
(強い推奨 エビデンスの質:低)
骨の感染症では他の領域と違い炎症マーカーの出番が多い

8. NVOを疑う場合は脊椎のMRIを推奨。
(強い推奨 エビデンスの質:低)

9. MRIが撮れない時(心臓デバイス、蝸牛のインプラント、閉所恐怖症)脊椎のガリウム/テクネシウム99の骨スキャンまたはCTまたはPETを推奨
(弱い推奨 エビデンスの質:低)
ガリウムシンチは見逃したフォーカスの発見に役立つ時もあります。

10. 亜急性の経過のNVOでは、血液培養とブルセラの血清検査を推奨(流行地域では)
(強い推奨 エビデンスの質:低)

11. 真菌感染症のリスクがある場合は真菌の血液培養も推奨。
(弱い推奨 エビデンスの質:低)

12. 亜急性の経過のNVOではツ反かIGRAを推奨(患者にリスクがある場合)
(弱い推奨 エビデンスの質:低)
日本では、特に高齢者ではやっても混乱するだけなのでやんない方がいいんじゃないでしょうか。

13. NVOを疑う場合は感染症専門医と脊椎外科医による評価を検討する。
(弱い推奨 エビデンスの質:低)
そこは強い推奨でもいいんじゃないか…感染症の学会なんだから…

 

III. When Should an Image-Guided Aspiration Biopsy or Additional Workup Be Performed in Patients With NVO?
生検などの追加のワークアップをいつ行うべきか?

14. 血液培養でよく知られた微生物(S. aureus, S. lugdunensis, Brucella)が判明しなかった場合は、イメージガイド下での吸引生検を推奨。
(強い推奨 エビデンスの質:低) 
S. lugdunensisをちゃんとわけて書いているのは珍しいですね。施設によっては血培から生えても「コアグラーゼ陰性ブドウ球菌」しか返ってこないこともあるから気をつけないと…

15. S. aureus, S. lugdunensis, Brucellaによる菌血症が判明していて、NVOが疑われる患者でのイメージガイド下生検はしないよう推奨。
(強い推奨 エビデンスの質:低)

16. 亜急性の経過のNVOでブルセラの抗体価が強陽性の場合はイメージガイド下の生検をしないよう推奨。
(強い推奨 エビデンスの質:低)

IV. How Long Should Antimicrobial Therapy Be Withheld Prior to an Image-Guided Diagnostic Aspiration Biopsy in Patients With Suspected NVO?
NVOを疑う患者でイメージガイド下の生検を行う前にどれくらい抗菌薬の投与を控えればよいか?

17. 神経学的の兆候、敗血症、血行動態が不安定な場合は、早急に外科的介入を行い、経験的な抗菌薬の投与を開始する。
(強い推奨 エビデンスの質:低) 
CQに対する答えになってませんが…本文を読むと1-2週間でよいのでは?と控えめな書き方が。正直誰にも答えはない。

V. When Is It Appropriate to Send Fungal, Mycobacterial, or Brucellar Cultures or Other Specialized Testing Following an Image-Guided Aspiration Biopsy in Patients With Suspected NVO?
生検検体で真菌、抗酸菌、ブルセラ、その他特殊な検査を考慮すべきはどのような時か?

18. 疫学的な患者のリスクがある場合、特徴的な画像所見がある場合は真菌、抗酸菌、ブルセラの検査を追加するよう推奨する。
(弱い推奨 エビデンスの質:低)

19. 培養が陰性の場合は保存検体で核酸増幅検査を行うよう推奨。
(弱い推奨 エビデンスの質:低)

VI. When Is It Appropriate to Send the Specimens for Pathologic Examination Following an Image Guided Aspiration Biopsy in Patients With Suspected NVO?
生検で得られた検体を病理診断に送るのはどのようなときか?

20. 十分な検体が得られたら、全例病理検査を行ったほうがよい。特に培養が陰性の場合は重要。
(強い推奨 エビデンスの質:低)

VII. What Is the Preferred Next Step in Patients With Nondiagnostic Image-Guided Aspiration Biopsy and Suspected NVO?
イメージガイド下の生検で診断がつかなかった場合の次のステップは?

21. 最初の生検で皮膚の常在菌(S. lugdunensis以外のCNS、Propionibacterium, その他グラム陽性桿菌)が検出され、血流感染症の合併がない場合は2回目の生検を推奨する。
(強い推奨 エビデンスの質:低)

22. 最初の生検で診断がつかなかった場合、発育の難しい微生物(嫌気性菌、真菌、Brucella、抗酸菌)の追加検査を推奨。
(強い推奨 エビデンスの質:低)

23. イメージガイド下での生検とその他の検査で診断がつかなかった場合、生検をもう一度行うか、経皮的な内視鏡下での椎間板切除とドレナージか、開放生検を推奨。
(弱い推奨 エビデンスの質:低)

VIII. When Should Empiric Antimicrobial Therapy Be Started in Patients With NVO?
NVOが疑われる患者でいつ経験的抗菌薬治療を開始すべきか?

24. 神経学的な異常がなく、血行動態も安定している場合は微生物学的な診断がつくまでは経験的抗菌薬治療を控えるよう推奨。
(弱い推奨 エビデンスの質:低)

25. 血行動態が不安定、敗血症、敗血症性ショック、重篤か進行性な神経学的兆候がある場合は経験的抗菌薬治療の開始を推奨。並行して微生物学的診断も進める。
(強い推奨 エビデンスの質:低)

IX. What Is the Optimal Duration of Antimicrobial Therapy in Patients With NVO?
適切な抗菌薬の投与期間は?

26. 合計6週間の治療を推奨。静注抗菌薬か、吸収のよい内服抗菌薬を用いる。
(強い推奨 エビデンスの質:低) 
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薬の名前は?→表で微生物ごとにまとめてありました。
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吸収のよい内服薬って?→表になってました。メトロニダゾール、モキシフロキサシン、リネゾリド、レボフロキサシン、シプロフロキサシン、ST合剤、クリンダマイシン、ドキシサイクリンです。個人的にはMINOも入ってていい気がしますが。

27. Brucellaに対しては3ヶ月の抗菌薬を推奨
(強い推奨 エビデンスの質:中)

X. What Are the Indications for a Surgical Intervention in Patients With NVO?
外科的治療が必要なのはどのような患者か?

28. 適切な抗菌薬治療にも関わらず以下の場合(痛みの有無に関わらず)外科的治療を推奨
・進行する神経学的な脱落兆候がある
・変形が進行している
・脊椎の変形が進行する
・脊椎が不安定になっている
(強い推奨 エビデンスの質:低)

29. 他にフォーカスがないのに血液培養陽性が持続する場合、適切な抗菌薬治療にも関わらず痛みが悪化する場合は外科的ドレナージ(固定も含む)を推奨。
(強い推奨 エビデンスの質:低)

30. 症状、身体所見、炎症反応が改善している状況で、4-6週間後に画像的に悪化していても、手術は推奨しない。
(弱い推奨 エビデンスの質:低) 
画像はすぐにはよくなりません。画像がよくなんないから抗生剤を変えろとかいうのやめてください。

XI. How Should Failure of Therapy Be De fi ned in Treated Patients With NVO?
治療失敗はどのように定義するか?

31. 持続する痛み、残存する神経学的な脱落所見、全身の炎症マーカーの上昇だけでは治療失敗とはみなさない。
(弱い推奨 エビデンスの質:低)

XII. What Is the Role of Systemic In fl ammatory Markers and MRI in the Follow-up of Treated Patients With NVO?
NVO治療後のフォローアップに炎症マーカーはどのような役割があるか?

32. 4週間の治療後に臨床所見とあわせて、炎症マーカー(血沈、CRP)をモニタリングするよう推奨。
(弱い推奨 エビデンスの質:低)

33. 抗菌薬治療に反応して臨床的兆候、検査結果が改善している患者でルーチンにMRIのフォローアップをする必要はない。
(強い推奨 エビデンスの質:低) 
つい撮りたくなっちゃうんですけどね…治ったのを確認したい人情でしょうか。

34. 臨床的に治療に反応が悪いと判断した場合は、硬膜下、傍脊柱の軟部組織の変化をみるためにフォローアップのMRIを推奨
(強い推奨 エビデンスの質:低)

XIII. How Do You Approach a Patient With NVO and Suspected Treatment Failure?
治療失敗が疑われる場合にどうアプローチするか?

35. 治療失敗が疑われた場合、炎症反応のマーカーの測定を推奨。
4週間の治療後にも不変、あるいは増加していた場合は治療失敗の可能性が高まる。
(弱い推奨 エビデンスの質:低)

36. 治療失敗が疑わる場合は硬膜下、傍脊柱の軟部組織の変化をみるためにフォローアップのMRIを推奨
(強い推奨 エビデンスの質:低)

37. 臨床的、画像的に治療失敗が明らかな場合は、イメージガイド下か外科的に再度微生物学的、病理学的な検体を採取するよう推奨。
(弱い推奨 エビデンスの質:非常に低い)

38. 臨床的、画像的に治療失敗が明らかな場合は脊椎外科医と感染症専門医にコンサルテーションを検討。
(弱い推奨 エビデンスの質:非常に低い)

2013年11月19日 (火)

ICAAC 2013 Top 10 papers on tropical & travel medicine

1. シャーガス病   
先日日本でも輸血者で抗体が見つかったシャーガス病 (Trypanosoma cruzi) の心筋症について。無症状の抗体陽性者を追跡して心筋症の発症を追いかけた研究です。    
Sabino EC, Ribeiro AL, Salemi VMC, Di Lorenzo Oliveira C, Antunes AP, Menezes MM, et al. Ten-year incidence of Chagas cardiomyopathy among asymptomatic Trypanosoma cruzi-seropositive former blood donors. Circulation. 2013 Mar;127(10):1105–15.    
抗体陽性者は2.5倍の危険。治療で予後は改善するのだろうか?→治験が走っているそうです。    
   
2.旅行者下痢の予防    
Kollaritsch H, Paulke-Korinek M, Wiedermann U. Traveler’s Diarrhea. Infect Dis Clin North Am. 2012 Sep;26(3):691–706.    
Rifaximinというリファンピシンと同じ難吸収性のリファマイシン系抗菌薬で腸管から吸収されない薬を旅行者下痢の予防に用いたスタディ、のメタアナリシスです。NNTは5、そんなに悪く無い。日本にない薬ですが。    
   
3.子供の旅行医学的問題    
Caillet-Gossot S, Laporte R, Noël G, Gautret P, Soula G, Delmont J, et al. Family compliance with counseling for children traveling to the tropics. J Travel Med. 2013 Jun;20(3):171–6.    
子供は大人よりも旅行後に医学的問題を起こしやすいけど、親が医療従事者からのアドバイスをあまり守ってないかも…という話。    
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出身地、子供の年齢などがコンプライアンス不良と関連していたよう。ワクチンも黄熱のように打たなければ入国できないものは100%になるけれどそれ以外はワクチンの種類による、ということでした。

 

4.栄養失調の原因の一つに腸管の細菌叢が関与。   
Smith MI, Yatsunenko T, Manary MJ, Trehan I, Mkakosya R, Cheng J, et al. Gut microbiomes of Malawian twin pairs discordant for kwashiorkor. Science. 2013 Feb;339(6119):548–54.    
Kwashiokorといえば学生時代に覚えたアフリカでみられる栄養障害の名前でした。Scienceに載ったこのスタディではMalawiで双子のうち片方だけがKwashiokorを呈した児の腸管細菌叢をgnotobiotic miceにそれぞれ移植して、Kwashiokorを呈した児から移植されたマウスにMalawiでの食事をあたえるとKwashiokorが発症することを確かめています。

 

基礎よりの話なので研究方法などについてはさっぱりわからないのですが、ここで細菌叢と訳した”microbiome”という言葉は今回のICAACであちこちで聞きました。ゲノム解析の進歩で細菌叢全体をひとまとめにして解析する研究がいろいろな分野で進歩しつつあるようです。

 

5.抗菌薬を栄養失調の治療の一部に   
Trehan I, Goldbach HS, LaGrone LN, Meuli GJ, Wang RJ, Maleta KM, et al. Antibiotics as part of the management of severe acute malnutrition. N Engl J Med. 2013 Jan;368(5):425–35.    
こちらもmicrobiomeと関連する話ですが、急性の栄養失調を呈した子供に栄養補助に加えて抗菌薬も投与したところ抗菌薬の投与群の方が予後がよかったというお話です。    
二次感染が減ったからか?microbiomeがリセットされるからか?

 

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6.狂犬病の予防についての世界的調査   
Jentes ES, Blanton JD, Johnson KJ, Petersen BW, Lamias MJ, Robertson K, et al. The global availability of rabies immune globulin and rabies vaccine in clinics providing direct care to travelers. J Travel Med. 2013 Jun;20(3):148–58. PMID: 23577860

 

グロブリンやワクチンがどれくらい手に入るかっていうことを世界中のトラベルクリニックにemailを送って調査したとのこと。

 

7.カンボジアにおける熱帯熱マラリアのアーテスネート耐性   
Miotto O, Almagro-Garcia J, Manske M, Macinnis B, Campino S, Rockett KA, et al. Multiple populations of artemisinin-resistant Plasmodium falciparum in Cambodia. Nat Genet. 2013 Jun;45(6):648–55. PMID: 23624527    
アジアとアフリカではだいぶ違うよう。

 

8.高山病の話 イブプロフェンで予防できるか?   
高山病はAcute mountain sickness:AMSと略すと知った。   
Lipman GS, Kanaan NC, Holck PS, Constance BB, Gertsch JH. Ibuprofen Prevents Altitude Illness: A Randomized Controlled Trial for Prevention of Altitude Illness With Nonsteroidal Anti-inflammatories. Annals of Emergency Medicine. 2012 Jun;59(6):484–90.    
イブプロフェン600mg1日3回(日本の用量と比較するとずいぶん多い)で予防できるかどうかのRCT。プラセボと比較して有意に減少。NNTは3.9。アセタゾラミドのNNTは3-8、デキサメサゾンは2.1-3.7らしい。

 

9.途上国の子供の下痢の話。   
Kotloff KL, Nataro JP, Blackwelder WC, Nasrin D, Farag TH, Panchalingam S, et al. Burden and aetiology of diarrhoeal disease in infants and young children in developing countries (the Global Enteric Multicenter Study, GEMS): a prospective, case-control study. Lancet. 2013 Jul;382(9888):209–22. PMID: 23680352   
3年間の前向きスタディで5つの病原体に対して介入の効果を見たもの。

 

10.海外旅行とESBL産生菌の定着   
Östholm-Balkhed Å, Tärnberg M, Nilsson M, Nilsson LE, Hanberger H, Hällgren A. Travel-associated faecal colonization with ESBL-producing Enterobacteriaceae: incidence and risk factors. J Antimicrob Chemother. 2013 Jan 9;68(9):2144–53. PMID: 23674762   
スウェーデンでの研究。渡航前2.4%だった便中の定着が旅行後に30%に。インド亜大陸がオッズ比4.8。

 

このフィールドの広さが感染症らしいですね。広くものを見る鳥の目を忘れないようにしたいものです。   

2013年10月10日 (木)

ICAAC 2013 Top 10 papers in Mycology

今度は真菌症に特化したLiterature reviewです。例によってところどころ端折ります。また全部自分で読んでいるわけではないので内容の詳細についてはあしからず。

・20年間で血液腫瘍の患者さんの真菌感染症の疫学はどうかわったか?
Lewis RE, Cahyame-Zuniga L, Leventakos K, Chamilos G, Ben-Ami R, Tamboli P, et al. Epidemiology and sites of involvement of invasive fungal infections in patients with haematological malignancies: a 20-year autopsy study. Mycoses. 2013;n/a–n/a.
生前に診断できる例も16% (1989 – 1993) → 51% (2004 –2008)に改善していると。それでもまだ半分は…

1. 診断
・前の記事でも紹介した骨髄移植を受ける患者さんに対して従来通りの病理と培養でアスペルギルスの診断をつける作戦と、PCRとガラクトマンナンを使って抗真菌薬の投与を決める作戦とを比較した研究です。
Galactomannan and PCR versus culture and histology for directing use of antifungal treatment for invasive aspergillosis in high-risk haematology patients: a randomised controlled trial. Morrissey CO, Chen SC, Sorrell TC, et al. Australasian Leukaemia Lymphoma Group and the Australia and New Zealand Mycology Interest Group. Lancet Infect Dis. 2013 Jun;13(6):519-28. doi: 10.1016/S1473-3099(13)70076-8. Epub 2013 Apr 30. PMID 23639612.
こちらのセッションでは「VoriやPosaの予防内服をしている人にはあまり意味がないかもね」という解説がされていました。
・血中のMucor PCRで早期発見しようという話。
Millon L, Larosa F, Lepiller Q, Legrand F, Rocchi S, Daguindau E, et al. Quantitative Polymerase Chain Reaction Detection of Circulating DNA in Serum for Early Diagnosis of Mucormycosis in Immunocompromised Patients. Clin Infect Dis. 2013 May 15;56(10):e95–e101. PMID: 23420816

2.疫学とリスクファクター
・竜巻後の皮膚真菌症。
Neblett Fanfair R, Benedict K, Bos J, Bennett SD, Lo Y-C, Adebanjo T, et al. Necrotizing Cutaneous Mucormycosis after a Tornado in Joplin, Missouri, in 2011. New England Journal of Medicine. 2012;367(23):2214–25. PMID: 23215557
自然災害に伴う外傷に合併した真菌感染症ですね。13例が同定され、5例が死亡。全例がApophysomyces trapeziformisという真菌だったようです。戦闘による外傷に合併した糸状菌感染症もちらっと紹介されていました。

3.侵襲性真菌感染症に対する治療
・Cryptococcus髄膜炎の5-FC併用の話
Combination antifungal therapy for cryptococcal meningitis. Day JN, Chau TT, Wolbers M, et al. N Engl J Med. 2013 Apr 4;368(14):1291-302. PMID: 23550668
既に紹介したので省略。

4.汚染されたステロイド剤での真菌性髄膜炎のアウトブレイク
Kainer MA, Reagan DR, Nguyen DB, Wiese AD, Wise ME, Ward J, et al. Fungal infections associated with contaminated methylprednisolone in Tennessee. N Engl J Med. 2012 Dec;367(23):2194–203.
Malani AN, Vandenberg DM, Singal B, Kasotakis M, Koch S, Moudgal V, et al. Magnetic resonance imaging screening to identify spinal and paraspinal infections associated with injections of contaminated methylprednisolone acetate. JAMA. 2013 Jun;309(23):2465–72.
Exserohilumという真菌のアウトブレイク。米国ではだいぶ話題になりました。

5.耐性
Candida glabrataにキャンディン系の耐性が増えているという話。重複。
Increasing echinocandin resistance in Candida glabrata: clinical failure correlates with presence of FKS mutations and elevated minimum inhibitory concentrations. Alexander BD, Johnson MD, Pfeiffer CD, et al. Clin Infect Dis. 2013; 56(12):1724-32. PMID: 23487382.
オランダからVoriconazole耐性のA. fumigatusの報告。
Van der Linden JWM, Camps SMT, Kampinga GA, Arends JPA, Debets-Ossenkopp YJ, Haas PJA, et al. Aspergillosis due to voriconazole highly resistant Aspergillus fumigatus and recovery of genetically related resistant isolates from domiciles. Clin Infect Dis. 2013 Aug;57(4):513–20.

6.薬剤と毒性
Voriconazole投与を受けた患者の可逆性の骨病変、血中フッ化物の増加
Gerber B, Guggenberger R, Fasler D, Nair G, Manz MG, Stussi G, et al. Reversible skeletal disease and high fluoride serum levels in hematologic patients receiving voriconazole. Blood. 2012 Sep;120(12):2390–4. PMID: 22859610

7.慢性、アレルギー性のアスペルギルス症に対する治療
慢性空洞性アスペルギルス症に対するItraconazole投与。RCTがされています。
Agarwal R, Vishwanath G, Aggarwal AN, Garg M, Gupta D, Chakrabarti A. Itraconazole in chronic cavitary pulmonary aspergillosis: a randomised controlled trial and systematic review of literature. Mycoses. 2013;56(5):559–70.
慢性の肺アスペルギルス症は非常に難治な病態ですが、ここではITCZがSupportive careのみよりもアウトカムがよかったようです。CNPAにも応用できるのか、などなど興味がありますね。

真菌のLiterature reviewはこれでおしまい。

2013年10月 2日 (水)

ICAAC 2013 Literature Review Session その3

さらにLiterature reviewが続きます。

小児のC. difficile感染症の話。米国では市中発症が増えているようです。
The epidemiology of Clostridium difficile infection in children:  a population-based study. Khanna S, Baddour LM, Huskins WC, et al.  Clin Infect Dis  2013 May 15;56(10):1401-6.PMID:  23408679.

小児の下痢つながりで。
Norovirus and medically attended gastroenteritis in U.S. children.  Payne DC, Vinjé J, Szilagyi PG, et al.  N Engl J Med 2013 March 21;368(12):1121-30.  PMID:  23514289.
ロタウイルス導入後ノロウイルスが小児の胃腸炎の主要な原因(この報告では21%)になっているという話です。

ペットでのSalmonellaアウトブレイクの話。
US outbreak of human Salmonella infections associated with aquatic frogs, 2008-2011.  Mettee Zarecki SL, Bennet SD, Hall J, et al.  Pediatrics  2013 April;131(4):724-31. PMID:  23478862.
日本ではカメが有名ですが、こちらはなんとカエルです。African dwarf frogといって5-18年生きるそうです。検索すると画像がでてきます。あまりかわいくない…近所で見かけるヤモリの方がかわいいです。

妊婦さんがインフルエンザワクチンをうつと胎児を守る効果があるようだという話
Risk of fetal death after pandemic influenza virus infection or vaccination.  Håberg SE, Trogstad L, Gunnes N, et al.  N Engl J Med2013 Jan 24;368(4):333-40.  PMID:  23323868.

小児科の外来で監視とフィードバックを伴う教育を行って広域抗菌薬の処方がどうかわったかというスタディ。
Effect of an outpatient antimicrobial stewardship intervention on broad-spectrum antibiotic prescribing by primary care pediatricians.  Gerber JS, Prasad PA, Fiks AG, et al.  JAMA  2013 Jun 12;309(22):2345-52.  PMID:  23757082.
外来レベルでの抗菌薬適正使用は日本でも喫緊の課題です。

骨髄移植を受ける患者さんに対して従来通りの病理と培養でアスペルギルスの診断をつける作戦と、PCRとガラクトマンナンを使って抗真菌薬の投与を決める作戦とを比較した研究です。
Galactomannan and PCR versus culture and histology for directing use of antifungal treatment for invasive aspergillosis in high-risk haematology patients: a randomised controlled trial. Morrissey CO, Chen SC, Sorrell TC, et al. Australasian Leukaemia Lymphoma Group and the Australia and New Zealand Mycology Interest Group. Lancet Infect Dis. 2013 Jun;13(6):519-28. doi: 10.1016/S1473-3099(13)70076-8. Epub 2013 Apr 30. PMID 23639612.
PCRとガラクトマンナンで決めた方が、Empiricの投与が少なくて済んだという結果でした。バイオマーカーを使う時には最初から作戦を決めるのがよいですね。真菌症の診断によほどのBreakthroughがこない限りは今あるものを組み合わせて意思決定をして、その意思決定が妥当だったかどうかを評価していくしかないのでしょう。

ESCIDからはカンジダ症のガイドラインがでました。
ESCMID* guideline for the diagnosis and management of Candida diseases 2012: adults with haematological malignancies and after haematopoietic stem cell transplantation (HCT). Ullmann AJ, Akova M, Herbrecht R, et al. ESCMID Fungal Infection Study Group.  Clin Microbiol Infect. 2012 Dec;18 Suppl 7:53-67. PMID 23137137.
これは骨髄移植の時のガイドラインですが、それ以外にシチュエーション別にいろいろあります

CD腸炎に”Donor feces”を移植する話。
Duodenal infusion of donor feces for recurrent Clostridium difficile. van Nood E, Vrieze A, Nieuwdorp M, et al. N Engl J Med 2013; 368:407-415. PMID: 23323867.
これは大変話題になりました。以前から単発的に報告されていたものをついにRCTにしたものです。比較対象となったバンコマイシン投与群、バンコマイシン投与に腸管洗浄を併用した群に対して、劇的に治療効果が得られています。比較群で再燃した人もも最終的にはSalvageとして便移植がおこなわれてかなりの治療効果が得られました。
「CD腸炎なんて◯◯喰らえ!」というネタを抄読会でドヤ顔で披露した人もいたのではないでしょうか(私もその一人です)

CD腸炎の芽胞からの発芽を防ぐ物質での予防について。
A new strategy for the prevention of Clostridium difficile infection. Howerton A, Patra M, Abel-Santos E. J Infect Dis. 2013; 207(10):1498-504. PMID: 23420906.
CamSAという胆汁塩のアナログでC.difficileの発芽を抑制できたという動物実験です。もちろんすぐに人間で使われるわけではないでしょうが、期待がもてるかもしれません。

Candida glabrataにキャンディン系の耐性が増えているという話。
Increasing echinocandin resistance in Candida glabrata: clinical failure correlates with presence of FKS mutations and elevated minimum inhibitory concentrations. Alexander BD, Johnson MD, Pfeiffer CD, et al. Clin Infect Dis. 2013; 56(12):1724-32. PMID: 23487382.
C. glabrataはもともとフルコナゾールに耐性が強いですが、FKS1、FKS2という遺伝子に変異があるキャンディン系にも耐性のあるものが増えてきているようです。まさに”You use it, you lose it”です。

MALDI-TOFの話も紹介されていました。同定を早めて抗菌薬の選択も早く最適化しようという試みがされています。
Impact of matrix-assisted laser desorption ionization time-of-flight mass spectrometry on the clinical management of patients with Gram-negative bacteremia: a prospective observational study. Clerc O, Prod'hom G, Vogne C, et al. Clin Infect Dis. 2013; 56(8):1101-7. PMID: 23264363.

適正使用プログラムとの組み合わせも。
Integrating Rapid Pathogen Identification and Antimicrobial Stewardship Significantly Decreases Hospital Costs. Perez KK, Olsen RJ, Musick WL, et al. Arch Pathol Lab Med. 2012 Dec 6. [Epub ahead of print]. PMID: 23216247.

かなり端折った部分もありますが、Literature reviewのご紹介はこれで終わります。

2013年9月26日 (木)

ICAAC 2013 Literature Review Session その2

というわけでLiterature reviewの続きです。

 

ICUでAcinetobacterが宙を舞う!という悪夢のようなお話。   
Aerosolization of Acinetobacter baumannii in a Trauma ICU* Munoz-Price LS, Fajardo-Aquino Y, Arheart KL, et al. Crit Care Med. 2013 Aug;41(8):1915-1918. PMID: 23782965    
MDRのAcinetobacterがエアロゾルになっていて空気のサンプルから検出されるという報告です。MRSAでも似たような話はいわれていますね。ちなみにLast authorはPittsburghの土井洋平先生。ICAACでも大変ご活躍でした。

 

多剤耐性Acinetobacterの重症感染症に対するコリスチン vs. コリスチン+RFP のRCTも紹介されていました。   
Colistin and Rifampicin Compared With Colistin Alone for the Treatment of Serious Infections Due to Extensively Drug-Resistant Acinetobacter baumannii: A Multicenter, Randomized Clinical Trial. Durante-Mangoni E, Signoriello G, Andini R, et al. Clin Infect dis. 2013 Aug;57(3):349-58. PMID: 23616495    
ルーチンでの使用が推奨されるほどの死亡率に対するメリットはなかったようですが、Eradicationは併用群の方がよかったようです。

 

 

 

Sequence type 131(ST131)というE. coliが広まっているという報告。このST131はあちらこちらのセッションで言及されていました。

 

Colpan A, Johnston B, Porter S, Clabots C, Anway R, Thao L, et al. Escherichia coli Sequence Type 131 (ST131) Sub-clone H30 as an Emergent Multidrug-Resistant Pathogen Among US Veterans. Clin Infect Dis. 2013 Aug PMID: 23926176    
ESBL産生 and/or キノロン耐性のことが多いというこのE. coli。そういえば近頃そんなのよく見かけるわーと思っていたら京都-滋賀からの報告も発見。ESBL広まりすぎてやばいです。

 

さてそんなESBLはどこで広まってんだ?という疑問に対して「市中じゃねえの?」という話。   
Transmission dynamics of extended-spectrum β-lactamase-producing Enterobacteriaceae in the tertiary care hospital and the household setting. Hilty M, Betsch BY, Bögli-Stuber K, et al. Clin Infect Dis. 2012 Oct;55(7):967-75. PMID: 22718774    
KlebsiellaはE. coliよりも院内での伝播の要素が大きいようです。    
さらに院内では接触感染対策をしなくてもあんまり広がらないんじゃないか?という話も紹介されていました。    
Rate of transmission of extended-spectrum beta-lactamase-producing enterobacteriaceae without contact isolation. Tschudin-Sutter S, Frei R, Dangel M, Stranden A, Widmer AF. Clin Infect Dis. 2012 Dec;55(11):1505-11. PMID: 22057701    
こちらの論文は発表された時にも気になった記憶がありました。    
ESBLはどんどん広まっているけど、市中で広まっているので院内の感染対策ではできることに限界があるんじゃないかなあ…というのが感染対策をしている方々の実感ではないでしょうか。(自分だけだったらゴメンナサイ)

 

E. coliによる重症感染症の治療の選択肢が狭まっていくのは恐ろしいことです。抗菌薬の開発が順調だった頃の感染症科医たちはまさか21世紀になっても人々が大腸菌の治療について頭を悩ませているとは思っていなかったのでしょうか。後代のためにも我々は耐性菌の伝播を止めなくてはなりません。

 

 

 

緑膿菌の血流感染に対して単剤か併用か、という話。この話題は随分前から議論されていてメリットは明らかではないと言われている気がしてますが…   
Effect of adequate single-drug vs combination antimicrobial therapy on mortality in Pseudomonas aeruginosa bloodstream infections: a post Hoc analysis of a prospective cohort. Peña C, Suarez C, Ocampo-Sosa A, et al. Clin Infect Dis. 2013 Jul;57(2):208-16.    
   
βラクタムを持続静注してPK/PDパラメータだけではなく臨床的なアウトカムにも影響があるかというお話。   
Continuous infusion of beta-lactam antibiotics in severe sepsis: a multicenter double-blind, randomized controlled trial. Dulhunty JM, Roberts JA, Davis JS, et al. Clin Infect Dis. 2013 Jan;56(2):236-44.    
持続静注の方が血中濃度の目標は満たしていた。臨床的治癒は持続静注群の方が多かったが、ICU-free daysは有意差なし、生存退院にも有意差はなかったようです。このへんはこの先さらに大規模なスタディが組まれて日常診療も変化してくるかもしれません。ちょっと前からSanfordにもβラクタムの持続静注についてまとめた章ができています。

 

 

 

肺炎球菌ワクチンの開始後で米国の肺炎での入院はかわったか?という話。PCV7は米国では2000年に導入されたので長期データがでてきているようです。何かを導入したら効果を測定するの大事です。   
U.S. hospitalizations for pneumonia after a decade of pneumococcal vaccination.  Griffin MR, Zhu Y, Moore MR, et al.  N Engl J Med 2013 July 11;369(2)155-63. PMID: 23841730. これは図がわかりやすいので貼っちゃいましょう。   
image   
小児と一緒に高齢者の肺炎での入院も減っているようだ、という結果。”Herd protection”ということですね。

 

 

 

続いて百日咳ワクチンの論文が2つ。米国でも患者数が増えてきてワクチンの効果が検証されているようです。   
全菌体ワクチンを受けたことのある人の方が無細胞ワクチンのみの人よりもリスクが低かったという話。   
Reduced risk of pertussis among persons ever vaccinated with whole cell pertussis vaccine compared to recipients of acellular pertussis vaccines in a large US cohort.  Witt MA, Arias L, Katz PH, et al.  Clin Infect Dis  2013 May;56(9):1248-54. PMID: 23487373.    
5回DTaPをうっても時間が経つと抗体価が下がっていくという話。   
Waning immunity to pertussis following 5 doses of DTaP.  Tartof SY, Lewis M, Kenyon C, et al.  Pediatrics  2013 April;131(4):e1047-52.  PMID:  23478868.

 

成人におけるTdapの効果を検証したCase-control studyも最近ありました。百日咳ワクチンの話はアウトブレイク時かどうかや、世代によって病原体に曝露したかどうかが違うのでデータの解釈が難しいですね…

 

 

 

長くなってきたのでこのへんで。まだまだ続きます。

2013年9月24日 (火)

ICAAC 2013 Literature Review Session その1

久しぶりに機会をいただいてデンバーで行われたICAAC (Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy) に参加してきました。

恒例のLiterature reviewのセッションを抜粋して紹介です。 抜粋というか自分が興味をもったものを紹介しているだけですね。ハンドアウトはこちら(リンク先PDF)で入手できるようです。いつまでできるかわかりませんが。

なお自分ですべての論文を読んで紹介しているわけではありませんのであしからず。

・Isolation of a novel coronavirus from a man with pneumonia in Saudi Arabia. Zaki AM, van Boheemen S, Bestebroer TM, et al. N Engl J Med. 2012 Nov 8;367(19):1814-20. PMID:23075143
トップバッターは世界を震撼させた中東呼吸器症候群ウイルスの話題でした。どうでもいいことかもしれませんが演者たちはこのウイルスの略称であるMERS-CoVのことを『マースコヴィー』とか『メルスコヴィー』みたいな感じで呼んでいました。

・Human infection with a novel avian-origin influenza A (H7N9) virus. Gao R, Cao B, Hu Y, et al. N Engl J Med. 2013 May 16;368(20):1888-97. PMID: 23577628.
・Clinical findings in 111 cases of influenza A (H7N9) virus infection. Gao HN, Lu HZ, Cao B, et al. N Engl J Med. 2013 Jun 13;368(24):2277-85. PMID: 23697469

続いては中国で出現した新型インフルエンザH7N9についてでした。

・Influenza A (H7N9) and the importance of digital epidemiology. Salathé M, Freifeld CC, Mekaru SR, Tomasulo AF, Brownstein JS. N Engl J Med. 2013 Aug 1;369(5):401-4. PMID: 23822655.
個人的に面白いと思いました。 Twitterのつぶやきなどを監視する”Digital epidemiology”に関する短い記事です。

 

続いてHIVに関連した論文の紹介です。

・Safety and Efficacy of Dolutegravir in Treatment-Experienced Subjects With RaltegravirResistant HIV Type 1 Infection: 24-Week Results of the VIKING Study. Eron JJ, Clotet B, Durant J et al. J Infect Dis 2013:207: 740-8. PMID: 23225901
・Dolutegravir versus raltegravir in antiretroviral-experienced, integrase inhibitor-naïve adults with HIV: week 48 results from the randomized, double-blind, non-inferiority SAILING study. Cahn P, Pozniak A, Mingrone H et al. Lancet 2013 (in press). PMID: 23830355
・Once-daily dolutegravir versus raltegravir in antiretroviral-naive adults with HIV-1 infection: 48 week results from the randomised, double-blind, non-inferiority SPRING-2 study. Raffi F, Rachlis A, Stellbrink HJ et al. Lancet 2013; 381: 735–43. PMID: 23306000

新しいインテグラーゼ阻害薬のドルテグラビルの論文が3つ紹介されていました。インテグラーゼ阻害薬も本格的にQDの時代に突入ですね。米国ではTivicayという商品名で既に発売されているようです。Tivicayはなんと発音するのかよくわかりません。(P. Sax先生もよくわかんないみたいです。そんなP. Sax先生を会場でちらりお見かけしました)

・Enhanced CD4+ T-Cell Recovery with Earlier HIV-1 Antiretroviral Therapy. Le T, Wright EJ, Smith DM et al. New England Journal of Medicine 2013; 368:218-30. PMID: 23323898
ARTの投与は早いほどCD4の回復にもよい影響があるのだという話。

・Long-term antiretroviral therapy initiated during primary HIV-1 infection is key to achieving both low HIV reservoirs and normal T cell counts. Hocqueloux L., Avettand-Fenoe V, Jacquot S et al. J Antimicrob Chemother 2013; 68: 1169–1178. PMID: 23335199
Primary infectionの時点でARTを始めると長期的にもHIVのリザーバーがヘリ、T細胞の機能が保たれる。

・High Coverage of ART Associated with Decline in Risk of HIV Acquisition in Rural KwaZulu-Natal, South Africa. Tanser F, Bärnighausen T, Grapsa E et al. Science  2013; 339: 966-71.PMID: 23430656

ARTでコミュニティーのHIV伝播が減らせるようだ、という話。

・Antiretroviral prophylaxis for HIV infection in injecting drug users in Bangkok, Thailand (the Bangkok Tenofovir Study): a randomised, double-blind, placebo-controlled phase 3 trial. Choopanya K, Martin M, Suntharasamai P et al.  Lancet 2013; 381: 2083–90.PMID: 23769234
PrEPのデータも紹介されていました。
HIVの世界でもどんどん薬剤を使う方向に話が進んでいますね。

 

続いてCryptococcusの話。
Combination antifungal therapy for cryptococcal meningitis. Day JN, Chau TT, Wolbers M, et al. N Engl J Med. 2013 Apr 4;368(14):1291-302. PMID: 23550668
以前からCryptococcus髄膜炎の時にアムホテリシンBにフルシトシン(5-FC)を併用するのがスタンダードされていましたが、アムホテリシンB単剤と比較して死亡率の低下効果があるのか不明でした。そこでAMPH-B vs. AMPH-B + 5-FC vs. AMPH-B + FLCZというRCTが行われてAMPH-B+5-FC群が6ヶ月の時点での生存に有意によかったという結果でした。ちなみにこの研究はベトナムで行われて、患者は全員HIVでかなりCD4の低い人達ではあります。

Cryptococcus gattiというまだ日本では出てきてはいないタイプのCryptococcusに対する治療のまとめ。
Antifungal Therapy and Management of Complications of Cryptococcosis due to Cryptococcus gattii. Chen SC, Korman TM, Slavin MA, et al. Australia and New Zealand Mycoses Interest Group (ANZMIG) Cryptococcus Study. Clin Infect Dis. 2013 Aug;57(4):543-51.

院内発症のレジオネラの話。
Impact of Routine Systematic PCR testing on Case Finding for Legionnaires' Disease: A Pre-Post Comparison Study. Murdoch DR, Podmore RG, Anderson TP, et al. Lancet Infect Dis.2013 Jun;13(6):519-28.PMID: 23899682

PCRでルーチンに検査するようにしたら院内発症のレジオネラ肺炎が結構いるようですよ、というNZからの報告。
First outbreak of nosocomial Legionella infection in term neonates caused by a cold mist ultrasonic humidifier. Yiallouros PK, Papadouri T, Karaoli C, et al. Clin Infect Dis. 2013 Jul;57(1):48-56 PMID: 23511302
加湿器による新生児でのLegionellaアウトブレイクの報告。

ちょっと長くなってきたので、今回はここまで。その1とタイトルをつけたからにはその2以降も書かねば…

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