Clinical practice guideline for the management of candidasis:2016
カンジダ症のガイドラインの2016年Updateを読んでいます。
17のClinical questionに答える形で推奨事項が140ほどあって、全部読むのは大変なので興味のあるところをピックアップして訳します。
最初はカンジダ血症についてです。好中球減少状態とそうでない状態で推奨がわかれています。こちらのGLもGRADE systemでつくられています。
青字は管理人のコメントです。投与量などは気をつけて訳しているつもりですが、訳が間違っている可能性もあります。必要に応じて原典、添付文書にあたるようにしてください。
Ⅰ 非好中球減少状態の患者のカンジダ血症の治療は?
推奨
1. エキノキャンディンを初期治療として推奨する。
[カスポファンギン:ローディング70 mgその後、1日50mg、ミカファンギン:1日100mg、アニデュラファンギン:ローディング200 mgその後1日100 mg]
(強い推奨、質の高いエビデンス)
安全性の高さと効果からキャンディン系が第一選択として推奨されています。
移行性の問題からキャンディン系が使わない方がよいといわれるのはどこか?
答は「眼、中枢神経、尿路」です。回診で後輩をいじるネタにどうぞ。
2. 重篤な状態ではなく、フルコナゾール耐性カンジダが検出される可能性が低い患者では 静脈内または経口フルコナゾール[800 mg(12mg/kg)ローディング後 400mg(6mg/kg)1日1回] もエキノキャンディンの代替薬として許容される。
3. アゾール系の感受性試験はすべての血流感染症と、他の臨床的に重要なカンジダの分離株で推奨される。
エキノキャンディン感受性試験は、エキノキャンディンでの治療歴がある患者、C. glabrataまたはC. parapsilosisによる感染症の患者では考慮すべきである。
(強い推薦、質の低いエビデンス)
C. parapsilosisはキャンディン系に対するMICが高めだから、フルコナゾールの方がよいのでは、という話がありましたが、臨床的には治療失敗は確認されていないという報告がありました。
4. エキノキャンディンからフルコナゾールへの変更は以下の場合に推奨。(通常は5-7日以内)
患者が安定していて、フルコナゾール感受性カンジダ(例:C. albicans)による感染症で、抗真菌薬開始後の繰り返した血液培養が陰性化している場合
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)。
真菌症であまりDe-escalationというのは意識されませんが、”Step down therapy”として「点滴エキノキャンディン→5-7日で安定してたら内服アゾール」という流れが推奨されています。エキノキャンディンで治療完遂するのと安定したらアゾール内服に変更するのとでアウトカムに差はなし、とする報告があったからのようです。この報告ではアニデュラファンギンのようですが、キャンディン系はだいたいデータを読み替えることが多いので、ミカファンギンでもよいということかな。
5. C. glabrataによる感染症の場合は、フルコナゾールとボリコナゾールに感受性の株であれば、高用量フルコナゾール800mg1日1回(12mg/kg)か、ボリコナゾール200-300(3-4mg/kg)1日2回への変更のみ検討してもよい。
(強い推奨、質の低いエビデンス)
C. glabrataとC. kruseiはアゾールに比較的耐性。
6. 脂質製剤アムホテリシンB(AmB)(1日1回3-5mg/kg)は他の薬剤が副作用で使えない場合、他の薬剤が手に入らない場合、他の薬剤に耐性がある場合は代替薬として妥当である。
(強い推奨、質の高いエビデンス)
AmBは副作用を考えるとカンジダ血症では第一選択ではありませんが、出番はあります。
ちなみにカンジダ血症の治療にはイトラコナゾールの出番はありません。
7. AmBからフルコナゾールへの変更は以下の場合に推奨。(通常5-7日以内)
患者が安定していて、フルコナゾール感受性カンジダによる感染症で、抗真菌薬開始後の繰り返した血液培養が陰性化している場合。
(強い推奨、質の高いエビデンス)
こちらもStep down therapyの話。
8. アゾール系とエキノキャンディンに耐性のカンジダによる感染症が疑われる場合は、脂質製剤のAmB(1日3-5mg/kg)を推奨する。
(強い推薦、質の低いエビデンス)
9. ボリコナゾール[400mg(6mg/kg)1日2回を2回投与後 200mg(3mg / kg)を1日2回]はカンジダ血症に有効であるが、初期治療としてはフルコナゾールを超える有利な点はごくわずかである。
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)
投与回数は多いし、体内動態のバラ付きが大きいし、相互作用が多くて、認容性が劣る、と本文にはあります。
C. kruseiによる真菌血症の患者では状態が許せば経口にステップダウンする場合にボリコナゾールが推奨される。
(強い推薦、質の低いエビデンス)
C. krusei、C. guilliermondiiはフルコナゾール耐性、ボリコナゾール感受性。
10.好中球減少状態でないカンジダ血症の患者は診断から1週間以内に散瞳を伴う眼科診察を受けるべきである。できれば眼科医によるものが望ましい。
(強い推薦、質の低いエビデンス)
患者さんのリスクを層別化すれば全員じゃなくてもいいんじゃない?という意見もありますが、早期発見による失明の予防の重要さを考えるとやはり全例での診察を推奨する、だそうです。
11.フォローの血液培養はカンジダが陰性化された時点を確立するために、毎日または隔日に行うべきである。
(強い推薦、質の低いエビデンス)
S. aureusとカンジダは必ず血培をフォローして陰性化を確認です。
12.明らかな転移性合併症のないカンジダ血症の治療の推奨期間は、カンジダ血症による症状が消失して、カンジダが血液培養から陰性化してから2週間である。
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)
今のところ短縮して大丈夫というデータはなく、これがスタンダードの治療です。
状態がゆるせば点滴から内服への変更はありだろう、というのは上述の通り。
Ⅱ 非好中球減少状態の患者のカンジダ血症では中心静脈ラインを抜去すべきか?
13.カンジダ血症で中心静脈カテーテル(CVCs)が感染源と考えられ、安全に抜去できる場合は、できるだけ早期に抜去すべきである。
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)
カンジダ血症の原因のほとんどはCVCs なので、バイオフィルムを除去する意味で抜去が重要です。とはいえカンジダ血症は腹腔内を原因で起きることもあります。残念ながらCVCs由来と腹腔内由来を区別することはできないので、全例抜去を推奨ということになっています。
なおC. parapsilosisだけは非常に高率にCVCsと関連していて、早期の抜去のメリットがはっきりしています。
C. parapsilosisはバイオフィルム産生能力が高くて環境表面や皮膚に付着しやすいようです。
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