クラリスロマイシンと心血管イベント
クラリスロマイシンが短期的な心血管イベントのリスク上昇に関連しているという香港からの報告です。
アジスロマイシンについても心血管死亡リスクの上昇が2012年に報告されています。
その後も似たような報告をいくつか見た記憶があるので、これが何件目なのか覚えていませんが…
日本でも外来でクラリスロマイシンは大変多く処方されています。
風邪薬がわりに気軽に抗菌薬を処方することの隠れた危険性を指し示す結果です。
Wong AYS, Root A, Douglas IJ, Chui CSL, Chan EW, Ghebremichael-Weldeselassie Y, et al. Cardiovascular outcomes associated with use of clarithromycin: population based study. BMJ. 2016 Jan 14;352:h6926.
問題点
クラリスロマイシンの使用と心血管アウトカムとの間の関連性はどのようなものか?
方法
このPopulation based studyでは香港で2005年-2009の間に経口クラリスロマイシンまたはアモキシシリンを投与された18歳以上の成人の心血管アウトカムを比較した。 研究期間の5年間のクラリスロマイシンの投与を受けた患者の年齢、 性別、暦年に応じて1人または2人のアモキシシリン投与患者にマッチさせた。コホート分析の内訳はクラリスロマイシン(N = 108 988)、アモキシシリン(N = 217 793)であった。自己対照ケースシリーズとケースクロスオーバー解析には、クラリスロマイシンを含むヘリコバクター・ピロリ除菌治療を受けた患者も含まれていた。主要アウトカムは心筋梗塞。二次的アウトカムは、すべての原因による死亡率、心疾患による死亡率、非心臓疾患の死亡率、不整脈、および脳卒中。
結果とLimitation
傾向スコアで調整した死亡率の比は、抗菌薬開始から14日以内の心筋梗塞で3.66だった。(95%CI 2.82-4.76)クラリスロマイシンでは132イベント[1000人年あたりの率44.4]、アモキシシリンでは149イベント[1000人年あたりの率19.2]だった。長期的リスクの増加は認められなかった。同様に、二次アウトカムのrate ratioは、脳卒中を除き、アモキシシリンの使用に対してクラリスロマイシンの現在の使用により有意に増加していた。自己対照ケースシリーズ では、クラリスロマイシンを含むピロリ除菌治療と心血管イベントの関連があった。治療が終了後にリスクがベースラインに戻った。クロスオーバー解析もクラリスロマイシンを含むピロリ除菌治療の使用中の心血管イベントのリスクの増加を示した。アモキシシリンに対するクラリスロマイシンの調整した絶対リスク差は、1年間に1000患者あたり1.90件の心筋梗塞イベントの過剰(95%CI1.30-2.68)であった。
この研究での新しい知見
クラリスロマイシンの使用は香港人の集団で、心筋梗塞、不整脈、心臓死亡の短期リスク上昇と関連していた。しかし長期の心血管リスク上昇とは関連していなかった。
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