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2016年2月

2016年2月23日 (火)

Clinical practice guideline for the management of candidasis 2016 その3

カンジダのガイドライン。続いて慢性播種性カンジダ症、腹膜炎、血管内感染症です。
(ICU、新生児関連はスキップしてます、あしからず]
青字は管理人のコメントです。

Ⅳ. 播種性カンジダ症(Hepatosplenic candidiasis)の治療は?

24. 脂質製剤アムホテリシンB(1日1回3-5mg/kg) か、エキノキャンディン[カスポファンギン:ローディング70 mgその後、1日50mg、ミカファンギン:1日100mg、アニデュラファンギン:ローディング200 mgその後1日100 mg] による数週間の治療を推奨。その後経口フルコナゾール400mg(6mg/kg) に変更する。(フルコナゾール耐性株の可能性が低い場合)
(強い推薦、質の低いエビデンス)

25. 画像評価を繰り返して改善がみられるまで治療を継続するべきである。通常は数ヶ月を要する。治療の早期中止は再発の可能性がある。
(強い推薦、質の低いエビデンス)

26. 化学療法や造血幹細胞移植が必要な場合に、慢性播種性カンジダ症があることを理由に遅らせるべきではない。再発予防のためハイリスクの期間を通じて治療は継続する。
(強い推薦、質の低いエビデンス)

27. 発熱が持続して衰弱している患者に対して、短期間(1-2週間)のNSAIDsかステロイドの投与も考慮される。
(弱い推薦、質の低いエビデンス)
慢性播種性カンジダ症の症状は免疫再構築の要素もありそうだ、とわかってきているそうです。ステロイドの投与量は経口プレドニゾロンで0.5-1mg/kgと記載がありました

Ⅷ. 腹腔内カンジダ症の治療は?
大抵の腹腔内感染症ではカンジダのカバーは不要ですが、二次性を超えて三次性腹膜炎になってくると関与することが多くなってきます。といってもカンジダの関与を証明するのは難しい。

54. 最近の手術、吻合部のリーク、壊死性膵炎といったカンジダ症のリスクを有する患者での腹腔内感染症ではカンジダに対する経験的な治療も考慮すべきである。
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)

55. カンジダ腹膜炎の治療はドレナージとデブリによるソースコントロールである。
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)

56. 治療薬の選択はカンジダ血症か非好中球減少状態のICU患者に対する経験的治療と同じである。
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)

57. 治療期間はソースコントロールがどれくらいできたかと、治療に対する臨床的な反応があったかで検討する。
(強い推奨、質の低いエビデンス)

Ⅸ.気道検体からのカンジダの検出に対して治療は必要か?

58. 気道分泌物の検体からカンジダが検出されても抗真菌薬による治療が必要なことはほとんどない。
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)
わりと相談されることが多い。肺炎の治りが悪いなーといって喀痰培養を繰り返すとよくカンジダばっかりが生えてくるようになります。基本、喀痰培養からのカンジダは無視で。これは強調したい。

Ⅹ.カンジダによる血管内感染の治療は?
自然弁の心内膜炎に対する治療は?

59. 自然弁の心内膜炎に対しては、脂質製剤のアムホテリシンB(1日1回3-5mg/kg) (±フルシトシン 25mg/kg 1日4回)、または高容量のエキノキャンディン[カスポファンギン:1日150mg、ミカファンギン:1日150mg、アニデュラファンギン:1日200 mg] を初期治療として推奨。
(強い推奨、質の低いエビデンス)
キャンディン系は量を増やして投与した方がいいだろう、というのは主にエキスパートオピニオンのよう。

60. 感受性のある種が検出され、臨床的に安定し、血培が陰性化した場合はフルコナゾール[400–800 mg (6–12 mg/kg)]へのステップダウン治療も推奨。
(強い推奨、質の低いエビデンス)

61. ボリコナゾール[ 200–300 mg (3–4 mg/kg) 1日2回]、またはポサコナゾール錠(1日300mg)もフルコナゾール耐性でこれらの薬剤に感受性の場合はステップダウン治療として使用可能である。
(弱い推薦、非常に質の低いエビデンス)

62. 弁置換術を推奨。術後も最低6週間は治療を継続するべきである。
(強い推奨、質の低いエビデンス)
AHAのIEのガイドラインの方でも手術が推奨されています。

63. 弁置換術ができない患者では、感受性の株であればフルコナゾール[1日400-800mg(6–12 mg/kg)]による長期抑制も推奨される。
(強い推奨、質の低いエビデンス)

64. 人工弁の心内膜炎に対しては、治療レジメンは自然弁と同様。
(強い推奨、質の低いエビデンス)
再発予防にフルコナゾール[1日400-800mg(6–12 mg/kg)]による長期抑制も推奨される。
(強い推奨、質の低いエビデンス)

埋込み型心臓デバイス感染に対する治療は?
65. ペースメーカーおよび植込み型除細動器の感染ではデバイス全体の除去が必要である。
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)
カンジダに限った話じゃないですが。

66. 抗真菌薬の選択は自然弁の心内膜炎と同様である。
(強い推奨、質の低いエビデンス)

67. ジェネレーターのポケットに限局した感染症では、デバイス除去から4週間の抗真菌薬投与を推奨。
(強い推奨、質の低いエビデンス)

68. ワイヤも巻き込んだ感染症の場合はワイヤの除去か最低6週間の抗真菌薬投与を推奨。
(強い推奨、質の低いエビデンス)

69. 除去できない補助人工心臓に対しては、抗真菌薬の選択は自然弁の心内膜炎と同様である。
(強い推奨、質の低いエビデンス)
感受性のある株であればフルコナゾールによる長期抑制治療もデバイスが留置されている間推奨する。
(強い推奨、質の低いエビデンス)


カンジダによる血栓性静脈炎に対する治療は?
70. カテーテルの抜去と切開排膿、または可能であれば静脈の切除を推奨。
(強い推奨、質の低いエビデンス)

71. 脂質製剤のアムホテリシンB(1日3-5mg/kg)、フルコナゾール[400–800 mg (6–12 mg/kg)] 、またはエキノキャンディン[カスポファンギン:1日150mg、ミカファンギン:1日150mg、アニデュラファンギン:1日200 mg ]の血培陰性化後2週間の投与を推奨。
(強い推奨、質の低いエビデンス)

72. 脂質製剤のアムホテリシンBかエキノキャンディンでの初期治療で効果が得られ、フルコナゾール感受性株が検出されたらフルコナゾールへのステップダウン治療も考慮すべきである。
(強い推奨、質の低いエビデンス)

73. 臨床データと培養結果と一致するなら、血栓の消失を治療修了の目安としてもよい。
(強い推奨、質の低いエビデンス)

2016年2月17日 (水)

Clinical practice guideline for the management of candidasis:2016 その2

カンジダのガイドラインの続き。次は好中球減少状態でのカンジダ血症です。

Ⅲ. 好中球減少状態でのカンジダ血症の治療は?

14. エキノキャンディンを初期治療として推奨する。
[カスポファンギン:ローディング70 mgその後、1日50mg、ミカファンギン:1日100mg、アニデュラファンギン:ローディング100 mgその後1日200 mg]
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)

15. 脂質製剤アムホテリシンB(AmB)(1日1回3-5mg/kg)は効果は得られる代替薬ではあるが、毒性があるためやや劣る選択肢である。
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)
歴史的には好中球減少状態でのカンジダ血症はアムホテリシンBで治療されていましたが、キャンディン系の台頭で役割をゆずった、という感じですね。

16. 重篤な状態でなく、アゾールの曝露のない患者ではフルコナゾール[800 mg(12mg/kg)ローディングの後400mg(6mg/kg)1日1回] も代替薬である。
(弱い推奨、質の低いエビデンス)

17. 好中球減少が続いている患者でフルコナゾール感受性の株が検出され、血培が陰性化したら、step-down therapy としてフルコナゾール[400 mg (6 mg/kg)1日1回] に変更してもよい。
(弱い推奨、質の低いエビデンス)
予防投与をのぞけばフルコナゾールの役割はステップダウン治療に縮小してきています

18. 糸状菌のカバーも追加で必要な場合はボリコナゾール[400mg(6mg/kg)1日2回を2回投与後200mg(3mg / kg)を1日2回] も使用可能である。
(弱い推奨、質の低いエビデンス)
ボリコナゾールは血培が陰性化して安定している患者のボリコナゾール感受性株に対するStep down therapyとしても使用可能である。
(弱い推奨、質の低いエビデンス)

19. C. kruseiによる感染症の場合は、エキノキャンディン、脂質製剤アムホテリシンB、ボリコナゾールのいずれかを推奨。
(強い推奨、質の低いエビデンス)
C. kruseiはフルコナゾールに耐性だけどボリコナゾールには感受性のことが多い。
そういえば2009年版のガイドラインにはカンジダの種ごとの感受性パターンが表になっていて便利だったんですが、2016年版ではなくなっています。かわりにブレイクポイントが表になっています。カンジダも感受性を個別に測定する時代だということでしょうか。元々はカンジダは種がわかれば感受性は予測できるのですが、少しずつ耐性が問題になりつつあるようです。日本医真菌学会のガイドラインでも同じような指摘がされています。

20. 明らかな転移性合併症のないカンジダ血症の治療の推奨期間は、カンジダ血症による症状が消失して好中球減少が改善していれば、カンジダが血液培養から陰性化してから2週間である。
(強い推奨、質の低いエビデンス)
好中球が回復していない場合は?生着までは続けましょう、と本文にはありました。

21. 脈絡膜と硝子体の感染の所見は好中球減少状態ではほとんどみられない。故に散瞳を伴う眼底診察は好中球回復から1週間以内に行うべきである。
(強い推奨、質の低いエビデンス)

22. 好中球減少患者ではカンジダ血症の原因としてCVCs以外が優位である(腸管など)。カテーテル抜去の適応は個別に判断するべきである。
(強い推奨、質の低いエビデンス)
薬剤の選択は好中球減少状態と非好中球減少状態でさしてかわらないのですが、カテーテルの扱いが好中球減少状態と非好中球減少状態で少し違います。そもそもカンジダ血症の侵入門戸は皮膚なのか?腸管なのか?というのはよくわかっていません。早期に抜去しても予後の改善がなかったという報告もあり、抜くかどうかは個別に判断せよ、ということになっています。

23. カンジダ血症が持続して、好中球減少状態の長期化が予測される場合は、G-CSFで動員した顆粒球輸血も考慮される。
(弱い推奨、質の低いエビデンス)

2016年2月16日 (火)

Clinical practice guideline for the management of candidasis:2016

カンジダ症のガイドラインの2016年Updateを読んでいます。      
17のClinical questionに答える形で推奨事項が140ほどあって、全部読むのは大変なので興味のあるところをピックアップして訳します。      
最初はカンジダ血症についてです。好中球減少状態とそうでない状態で推奨がわかれています。こちらのGLもGRADE systemでつくられています。

 

青字は管理人のコメントです。投与量などは気をつけて訳しているつもりですが、訳が間違っている可能性もあります。必要に応じて原典、添付文書にあたるようにしてください。

 

Pappas PG, Kauffman CA, Andes DR, Clancy CJ, Marr KA, Ostrosky-Zeichner L, et al. Clinical Practice Guideline for the Management of Candidiasis: 2016 Update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2015 Dec 16;civ933.

 

Ⅰ 非好中球減少状態の患者のカンジダ血症の治療は?      
推奨
      
1. エキノキャンディンを初期治療として推奨する。       
[カスポファンギン:ローディング70 mgその後、1日50mg、ミカファンギン:1日100mg、アニデュラファンギン:ローディング200 mgその後1日100 mg]
      
(強い推奨、質の高いエビデンス)      
安全性の高さと効果からキャンディン系が第一選択として推奨されています。      
移行性の問題からキャンディン系が使わない方がよいといわれるのはどこか?         
答は「
眼、中枢神経、尿路です。回診で後輩をいじるネタにどうぞ。

   

2. 重篤な状態ではなく、フルコナゾール耐性カンジダが検出される可能性が低い患者では 静脈内または経口フルコナゾール[800 mg(12mg/kg)ローディング後 400mg(6mg/kg)1日1回] もエキノキャンディンの代替薬として許容される

 

3. アゾール系の感受性試験はすべての血流感染症と、他の臨床的に重要なカンジダの分離株で推奨される。       
エキノキャンディン感受性試験は、エキノキャンディンでの治療歴がある患者、C. glabrataまたはC. parapsilosisによる感染症の患者では考慮すべきである。         
(強い推薦、質の低いエビデンス)       
C. parapsilosisはキャンディン系に対するMICが高めだから、フルコナゾールの方がよいのでは、という話がありましたが、臨床的には治療失敗は確認されていないという報告がありました。

 

4. エキノキャンディンからフルコナゾールへの変更は以下の場合に推奨。(通常は5-7日以内)       
患者が安定していて、フルコナゾール感受性カンジダ(例:C. albicans)による感染症で、抗真菌薬開始後の繰り返した血液培養が陰性化している場合         
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)。       
真菌症であまりDe-escalationというのは意識されませんが、”Step down therapy”として「点滴エキノキャンディン→5-7日で安定してたら内服アゾール」という流れが推奨されています。エキノキャンディンで治療完遂するのと安定したらアゾール内服に変更するのとでアウトカムに差はなし、とする報告があったからのようです。この報告ではアニデュラファンギンのようですが、キャンディン系はだいたいデータを読み替えることが多いので、ミカファンギンでもよいということかな。

 

5. C. glabrataによる感染症の場合は、フルコナゾールとボリコナゾールに感受性の株であれば、高用量フルコナゾール800mg1日1回(12mg/kg)か、ボリコナゾール200-300(3-4mg/kg)1日2回への変更のみ検討してもよい。      
(強い推奨、質の低いエビデンス)
      
C. glabrataとC. kruseiはアゾールに比較的耐性。 

 

6. 脂質製剤アムホテリシンB(AmB)(1日1回3-5mg/kg)は他の薬剤が副作用で使えない場合、他の薬剤が手に入らない場合、他の薬剤に耐性がある場合は代替薬として妥当である。       
(強い推奨、質の高いエビデンス)       
AmBは副作用を考えるとカンジダ血症では第一選択ではありませんが、出番はあります。      
ちなみにカンジダ血症の治療にはイトラコナゾールの出番はありません。

 

7. AmBからフルコナゾールへの変更は以下の場合に推奨。(通常5-7日以内)       
患者が安定していて、フルコナゾール感受性カンジダによる感染症で、抗真菌薬開始後の繰り返した血液培養が陰性化している場合。       
(強い推奨、質の高いエビデンス)         
こちらもStep down therapyの話。

 

8. アゾール系とエキノキャンディンに耐性のカンジダによる感染症が疑われる場合は、脂質製剤のAmB(1日3-5mg/kg)を推奨する。       
(強い推薦、質の低いエビデンス)

 

9. ボリコナゾール[400mg(6mg/kg)1日2回を2回投与後 200mg(3mg / kg)を1日2回]はカンジダ血症に有効であるが、初期治療としてはフルコナゾールを超える有利な点はごくわずかである。       
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)         
投与回数は多いし、体内動態のバラ付きが大きいし、相互作用が多くて、認容性が劣る、と本文にはあります。      
C. kruseiによる真菌血症の患者では状態が許せば経口にステップダウンする場合にボリコナゾールが推奨される。       
(強い推薦、質の低いエビデンス)       
C. krusei、C. guilliermondiiはフルコナゾール耐性、ボリコナゾール感受性。

 

10.好中球減少状態でないカンジダ血症の患者は診断から1週間以内に散瞳を伴う眼科診察を受けるべきである。できれば眼科医によるものが望ましい。       
(強い推薦、質の低いエビデンス)       
患者さんのリスクを層別化すれば全員じゃなくてもいいんじゃない?という意見もありますが、早期発見による失明の予防の重要さを考えるとやはり全例での診察を推奨する、だそうです。

 

11.フォローの血液培養はカンジダが陰性化された時点を確立するために、毎日または隔日に行うべきである。       
(強い推薦、質の低いエビデンス)       
S. aureusとカンジダは必ず血培をフォローして陰性化を確認です。

 

12.明らかな転移性合併症のないカンジダ血症の治療の推奨期間は、カンジダ血症による症状が消失して、カンジダが血液培養から陰性化してから2週間である。       
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)       
今のところ短縮して大丈夫というデータはなく、これがスタンダードの治療です。      
状態がゆるせば点滴から内服への変更はありだろう、というのは上述の通り。

 

 

Ⅱ 非好中球減少状態の患者のカンジダ血症では中心静脈ラインを抜去すべきか? 

 

13.カンジダ血症で中心静脈カテーテル(CVCs)が感染源と考えられ、安全に抜去できる場合は、できるだけ早期に抜去すべきである。      
(強い推奨、中等度の質のエビデンス)      
カンジダ血症の原因のほとんどはCVCs なので、バイオフィルムを除去する意味で抜去が重要です。とはいえカンジダ血症は腹腔内を原因で起きることもあります。残念ながらCVCs由来と腹腔内由来を区別することはできないので、全例抜去を推奨ということになっています。      
なおC. parapsilosisだけは非常に高率にCVCsと関連していて、早期の抜去のメリットがはっきりしています。       
C. parapsilosisはバイオフィルム産生能力が高くて環境表面や皮膚に付着しやすいようです。

2016年2月 2日 (火)

クラリスロマイシンと心血管イベント

クラリスロマイシンが短期的な心血管イベントのリスク上昇に関連しているという香港からの報告です。
アジスロマイシンについても心血管死亡リスクの上昇が2012年に報告されています

その後も似たような報告をいくつか見た記憶があるので、これが何件目なのか覚えていませんが…
日本でも外来でクラリスロマイシンは大変多く処方されています
風邪薬がわりに気軽に抗菌薬を処方することの隠れた危険性を指し示す結果です。

 

Wong AYS, Root A, Douglas IJ, Chui CSL, Chan EW, Ghebremichael-Weldeselassie Y, et al. Cardiovascular outcomes associated with use of clarithromycin: population based study. BMJ. 2016 Jan 14;352:h6926.

問題点
クラリスロマイシンの使用と心血管アウトカムとの間の関連性はどのようなものか?

方法
このPopulation based studyでは香港で2005年-2009の間に経口クラリスロマイシンまたはアモキシシリンを投与された18歳以上の成人の心血管アウトカムを比較した。 研究期間の5年間のクラリスロマイシンの投与を受けた患者の年齢、 性別、暦年に応じて1人または2人のアモキシシリン投与患者にマッチさせた。コホート分析の内訳はクラリスロマイシン(N = 108 988)、アモキシシリン(N = 217 793)であった。自己対照ケースシリーズとケースクロスオーバー解析には、クラリスロマイシンを含むヘリコバクター・ピロリ除菌治療を受けた患者も含まれていた。主要アウトカムは心筋梗塞。二次的アウトカムは、すべての原因による死亡率、心疾患による死亡率、非心臓疾患の死亡率、不整脈、および脳卒中。

結果とLimitation
傾向スコアで調整した死亡率の比は、抗菌薬開始から14日以内の心筋梗塞で3.66だった。(95%CI 2.82-4.76)クラリスロマイシンでは132イベント[1000人年あたりの率44.4]、アモキシシリンでは149イベント[1000人年あたりの率19.2]だった。長期的リスクの増加は認められなかった。同様に、二次アウトカムのrate ratioは、脳卒中を除き、アモキシシリンの使用に対してクラリスロマイシンの現在の使用により有意に増加していた。自己対照ケースシリーズ では、クラリスロマイシンを含むピロリ除菌治療と心血管イベントの関連があった。治療が終了後にリスクがベースラインに戻った。クロスオーバー解析もクラリスロマイシンを含むピロリ除菌治療の使用中の心血管イベントのリスクの増加を示した。アモキシシリンに対するクラリスロマイシンの調整した絶対リスク差は、1年間に1000患者あたり1.90件の心筋梗塞イベントの過剰(95%CI1.30-2.68)であった。

この研究での新しい知見
クラリスロマイシンの使用は香港人の集団で、心筋梗塞、不整脈、心臓死亡の短期リスク上昇と関連していた。しかし長期の心血管リスク上昇とは関連していなかった。

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