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2013年10月

2013年10月26日 (土)

感染症の週末

このブログのアクセス解析を見るとある特徴に気が付きます。
weekend

明らかにアクセスが平日に偏っています。(検定まではしてませんが)
おそらく仕事中に困った先生方が参考になるものはないかと検索しているのではないでしょうか。そのような先生方の役に少しでも立てばうれしいですね。でもここに書いてある情報の利用は自己責任でお願いします。

曜日の診療に及ぼす影響というのは医療安全の観点からも注目されていて、週末に入院すると死亡率が高い、という論文があるくらいです。感染症診療と曜日の関係はどうだろうと思って検索したらちゃんと調べている人たちがいました。

●土曜日は抗菌薬の処方が多くなるのか?
Behar PRP, Wagner MB, Petersen LC, Boas MRV. Is antibiotic prescribing on Saturdays higher than any other day of the week? Journal of Hospital Infection. 2010 Sep;76(1):84–5.
ブラジルからのLetterです。年間を通じて抗菌薬の処方が曜日によってどう変動するかをまとめたとのこと。

image

キャプションでは□と●が反対になっていますが、木曜から土曜日にかけて入院は減っているのに抗菌薬の処方は増えています。

●曜日によって抗菌薬処方の適正さはかわるか?
Bishara J, Hershkovitz D, Paul M, Rotenberg Z, Pitlik S. Appropriateness of antibiotic therapy on weekends versus weekdays. J Antimicrob Chemother. 2007 Jan 9;60(3):625–8.
イスラエルからの報告です。感染症専門医が2人、曜日をわからなくした状態の救急外来の受診記録を確認して、抗菌薬の処方の適正さを評価しています。評価の基準が表になっています。

image

その病院でどんな処方が適切かは地域の細菌の感受性などにもよるので一般化はできませんが、これはこれで面白いdス。女性の単純な膀胱炎にキノロンは不適切、とか肺炎にもキノロンは不適切になっています。胃腸炎には何も出さないのが適切、とか原則に忠実に評価です。もちろん後出しジャンケンで評価しているので割り引いて考える必要もあるとは思います。
さて曜日ごとの違いはどうだったかというと、
image

著者らは多変量解析も行って曜日が不適切処方と有意に相関したとしています。金曜、土曜が特に悪いようです。なぜ日曜日はよいのでしょう?文化の違いかもしれません。


診療も人間の行うことなので人間のコンディションに影響を受けるのは仕方がないところではありますが、できるだけばらつきがでないように人的な配置ができるのが望ましいのでしょう。平日にやっていないことが週末にできるわけはないですので、地道な抗菌薬の適正使用の推進が大事です。

2013年10月10日 (木)

ICAAC 2013 Top 10 papers in Mycology

今度は真菌症に特化したLiterature reviewです。例によってところどころ端折ります。また全部自分で読んでいるわけではないので内容の詳細についてはあしからず。

・20年間で血液腫瘍の患者さんの真菌感染症の疫学はどうかわったか?
Lewis RE, Cahyame-Zuniga L, Leventakos K, Chamilos G, Ben-Ami R, Tamboli P, et al. Epidemiology and sites of involvement of invasive fungal infections in patients with haematological malignancies: a 20-year autopsy study. Mycoses. 2013;n/a–n/a.
生前に診断できる例も16% (1989 – 1993) → 51% (2004 –2008)に改善していると。それでもまだ半分は…

1. 診断
・前の記事でも紹介した骨髄移植を受ける患者さんに対して従来通りの病理と培養でアスペルギルスの診断をつける作戦と、PCRとガラクトマンナンを使って抗真菌薬の投与を決める作戦とを比較した研究です。
Galactomannan and PCR versus culture and histology for directing use of antifungal treatment for invasive aspergillosis in high-risk haematology patients: a randomised controlled trial. Morrissey CO, Chen SC, Sorrell TC, et al. Australasian Leukaemia Lymphoma Group and the Australia and New Zealand Mycology Interest Group. Lancet Infect Dis. 2013 Jun;13(6):519-28. doi: 10.1016/S1473-3099(13)70076-8. Epub 2013 Apr 30. PMID 23639612.
こちらのセッションでは「VoriやPosaの予防内服をしている人にはあまり意味がないかもね」という解説がされていました。
・血中のMucor PCRで早期発見しようという話。
Millon L, Larosa F, Lepiller Q, Legrand F, Rocchi S, Daguindau E, et al. Quantitative Polymerase Chain Reaction Detection of Circulating DNA in Serum for Early Diagnosis of Mucormycosis in Immunocompromised Patients. Clin Infect Dis. 2013 May 15;56(10):e95–e101. PMID: 23420816

2.疫学とリスクファクター
・竜巻後の皮膚真菌症。
Neblett Fanfair R, Benedict K, Bos J, Bennett SD, Lo Y-C, Adebanjo T, et al. Necrotizing Cutaneous Mucormycosis after a Tornado in Joplin, Missouri, in 2011. New England Journal of Medicine. 2012;367(23):2214–25. PMID: 23215557
自然災害に伴う外傷に合併した真菌感染症ですね。13例が同定され、5例が死亡。全例がApophysomyces trapeziformisという真菌だったようです。戦闘による外傷に合併した糸状菌感染症もちらっと紹介されていました。

3.侵襲性真菌感染症に対する治療
・Cryptococcus髄膜炎の5-FC併用の話
Combination antifungal therapy for cryptococcal meningitis. Day JN, Chau TT, Wolbers M, et al. N Engl J Med. 2013 Apr 4;368(14):1291-302. PMID: 23550668
既に紹介したので省略。

4.汚染されたステロイド剤での真菌性髄膜炎のアウトブレイク
Kainer MA, Reagan DR, Nguyen DB, Wiese AD, Wise ME, Ward J, et al. Fungal infections associated with contaminated methylprednisolone in Tennessee. N Engl J Med. 2012 Dec;367(23):2194–203.
Malani AN, Vandenberg DM, Singal B, Kasotakis M, Koch S, Moudgal V, et al. Magnetic resonance imaging screening to identify spinal and paraspinal infections associated with injections of contaminated methylprednisolone acetate. JAMA. 2013 Jun;309(23):2465–72.
Exserohilumという真菌のアウトブレイク。米国ではだいぶ話題になりました。

5.耐性
Candida glabrataにキャンディン系の耐性が増えているという話。重複。
Increasing echinocandin resistance in Candida glabrata: clinical failure correlates with presence of FKS mutations and elevated minimum inhibitory concentrations. Alexander BD, Johnson MD, Pfeiffer CD, et al. Clin Infect Dis. 2013; 56(12):1724-32. PMID: 23487382.
オランダからVoriconazole耐性のA. fumigatusの報告。
Van der Linden JWM, Camps SMT, Kampinga GA, Arends JPA, Debets-Ossenkopp YJ, Haas PJA, et al. Aspergillosis due to voriconazole highly resistant Aspergillus fumigatus and recovery of genetically related resistant isolates from domiciles. Clin Infect Dis. 2013 Aug;57(4):513–20.

6.薬剤と毒性
Voriconazole投与を受けた患者の可逆性の骨病変、血中フッ化物の増加
Gerber B, Guggenberger R, Fasler D, Nair G, Manz MG, Stussi G, et al. Reversible skeletal disease and high fluoride serum levels in hematologic patients receiving voriconazole. Blood. 2012 Sep;120(12):2390–4. PMID: 22859610

7.慢性、アレルギー性のアスペルギルス症に対する治療
慢性空洞性アスペルギルス症に対するItraconazole投与。RCTがされています。
Agarwal R, Vishwanath G, Aggarwal AN, Garg M, Gupta D, Chakrabarti A. Itraconazole in chronic cavitary pulmonary aspergillosis: a randomised controlled trial and systematic review of literature. Mycoses. 2013;56(5):559–70.
慢性の肺アスペルギルス症は非常に難治な病態ですが、ここではITCZがSupportive careのみよりもアウトカムがよかったようです。CNPAにも応用できるのか、などなど興味がありますね。

真菌のLiterature reviewはこれでおしまい。

2013年10月 9日 (水)

ICAAC lecture 2013 E. coli, so common, so complex

ICAACのまとめの続き。大腸菌に関するセッションがありました。何をいまさらと思われるかもしれませんが、耐性の広がりもあって大腸菌にまつわる問題は複雑化しています。そういうところがタイトルにも現れていますね。
英語の聞き取りの問題もあって内容はスカスカになってしまっていますが、キーとなる論文だけは追っかけるようにしました。
SpeakerはUniv. of MinnesotaのJames R. Johnson先生。耐性大腸菌の大家らしく、引用されている論文はほとんどがご自身のものです。

・大腸菌には病原性のあるものとそうでないものがいる。
J Infect Dis. 2006 Oct 15;194(8):1141–50. PMID: 16991090

・再発性尿路感染症を起こす女性の尿を毎日集めてもらって、尿中の白血球や菌量を調べた報告。これは興味深い。受診する3日ほど前から急激に菌量が増えます。尿道周囲の定着菌も関与しているのでは、という話。
J Infect Dis. 2009 Jan 8;200(4):528–36. PMID: 19586416
Photo

・耐性の大腸菌は広がっている。この話はLiterature reviewの方でもでていました。ST131ですね。

・ST131の家族内感染  J Clin Microbiol. 2009 Nov;47(11):3780–2.
・ST131による激烈なUrosepsisで不幸な転機をたどったケース。
J Clin Microbiol. 2011 Jan 9;49(9):3406–8. こういうことが日常的に起きるようになったらたまらないですね。

・小売されている食品にもくっついている
J Infect Dis. 2005 Jan 4;191(7):1040–9.

・ST131は毒性が強いのだろうか? どうもそのようだ。
Clin Infect Dis. 2013 Aug 6;cit503. PMID: 23926176

手元に残っているメモから再現できるのはここまで。もっと色んな話があった気がしますが…これで勘弁してください。

2013年10月 2日 (水)

ICAAC 2013 Literature Review Session その3

さらにLiterature reviewが続きます。

小児のC. difficile感染症の話。米国では市中発症が増えているようです。
The epidemiology of Clostridium difficile infection in children:  a population-based study. Khanna S, Baddour LM, Huskins WC, et al.  Clin Infect Dis  2013 May 15;56(10):1401-6.PMID:  23408679.

小児の下痢つながりで。
Norovirus and medically attended gastroenteritis in U.S. children.  Payne DC, Vinjé J, Szilagyi PG, et al.  N Engl J Med 2013 March 21;368(12):1121-30.  PMID:  23514289.
ロタウイルス導入後ノロウイルスが小児の胃腸炎の主要な原因(この報告では21%)になっているという話です。

ペットでのSalmonellaアウトブレイクの話。
US outbreak of human Salmonella infections associated with aquatic frogs, 2008-2011.  Mettee Zarecki SL, Bennet SD, Hall J, et al.  Pediatrics  2013 April;131(4):724-31. PMID:  23478862.
日本ではカメが有名ですが、こちらはなんとカエルです。African dwarf frogといって5-18年生きるそうです。検索すると画像がでてきます。あまりかわいくない…近所で見かけるヤモリの方がかわいいです。

妊婦さんがインフルエンザワクチンをうつと胎児を守る効果があるようだという話
Risk of fetal death after pandemic influenza virus infection or vaccination.  Håberg SE, Trogstad L, Gunnes N, et al.  N Engl J Med2013 Jan 24;368(4):333-40.  PMID:  23323868.

小児科の外来で監視とフィードバックを伴う教育を行って広域抗菌薬の処方がどうかわったかというスタディ。
Effect of an outpatient antimicrobial stewardship intervention on broad-spectrum antibiotic prescribing by primary care pediatricians.  Gerber JS, Prasad PA, Fiks AG, et al.  JAMA  2013 Jun 12;309(22):2345-52.  PMID:  23757082.
外来レベルでの抗菌薬適正使用は日本でも喫緊の課題です。

骨髄移植を受ける患者さんに対して従来通りの病理と培養でアスペルギルスの診断をつける作戦と、PCRとガラクトマンナンを使って抗真菌薬の投与を決める作戦とを比較した研究です。
Galactomannan and PCR versus culture and histology for directing use of antifungal treatment for invasive aspergillosis in high-risk haematology patients: a randomised controlled trial. Morrissey CO, Chen SC, Sorrell TC, et al. Australasian Leukaemia Lymphoma Group and the Australia and New Zealand Mycology Interest Group. Lancet Infect Dis. 2013 Jun;13(6):519-28. doi: 10.1016/S1473-3099(13)70076-8. Epub 2013 Apr 30. PMID 23639612.
PCRとガラクトマンナンで決めた方が、Empiricの投与が少なくて済んだという結果でした。バイオマーカーを使う時には最初から作戦を決めるのがよいですね。真菌症の診断によほどのBreakthroughがこない限りは今あるものを組み合わせて意思決定をして、その意思決定が妥当だったかどうかを評価していくしかないのでしょう。

ESCIDからはカンジダ症のガイドラインがでました。
ESCMID* guideline for the diagnosis and management of Candida diseases 2012: adults with haematological malignancies and after haematopoietic stem cell transplantation (HCT). Ullmann AJ, Akova M, Herbrecht R, et al. ESCMID Fungal Infection Study Group.  Clin Microbiol Infect. 2012 Dec;18 Suppl 7:53-67. PMID 23137137.
これは骨髄移植の時のガイドラインですが、それ以外にシチュエーション別にいろいろあります

CD腸炎に”Donor feces”を移植する話。
Duodenal infusion of donor feces for recurrent Clostridium difficile. van Nood E, Vrieze A, Nieuwdorp M, et al. N Engl J Med 2013; 368:407-415. PMID: 23323867.
これは大変話題になりました。以前から単発的に報告されていたものをついにRCTにしたものです。比較対象となったバンコマイシン投与群、バンコマイシン投与に腸管洗浄を併用した群に対して、劇的に治療効果が得られています。比較群で再燃した人もも最終的にはSalvageとして便移植がおこなわれてかなりの治療効果が得られました。
「CD腸炎なんて◯◯喰らえ!」というネタを抄読会でドヤ顔で披露した人もいたのではないでしょうか(私もその一人です)

CD腸炎の芽胞からの発芽を防ぐ物質での予防について。
A new strategy for the prevention of Clostridium difficile infection. Howerton A, Patra M, Abel-Santos E. J Infect Dis. 2013; 207(10):1498-504. PMID: 23420906.
CamSAという胆汁塩のアナログでC.difficileの発芽を抑制できたという動物実験です。もちろんすぐに人間で使われるわけではないでしょうが、期待がもてるかもしれません。

Candida glabrataにキャンディン系の耐性が増えているという話。
Increasing echinocandin resistance in Candida glabrata: clinical failure correlates with presence of FKS mutations and elevated minimum inhibitory concentrations. Alexander BD, Johnson MD, Pfeiffer CD, et al. Clin Infect Dis. 2013; 56(12):1724-32. PMID: 23487382.
C. glabrataはもともとフルコナゾールに耐性が強いですが、FKS1、FKS2という遺伝子に変異があるキャンディン系にも耐性のあるものが増えてきているようです。まさに”You use it, you lose it”です。

MALDI-TOFの話も紹介されていました。同定を早めて抗菌薬の選択も早く最適化しようという試みがされています。
Impact of matrix-assisted laser desorption ionization time-of-flight mass spectrometry on the clinical management of patients with Gram-negative bacteremia: a prospective observational study. Clerc O, Prod'hom G, Vogne C, et al. Clin Infect Dis. 2013; 56(8):1101-7. PMID: 23264363.

適正使用プログラムとの組み合わせも。
Integrating Rapid Pathogen Identification and Antimicrobial Stewardship Significantly Decreases Hospital Costs. Perez KK, Olsen RJ, Musick WL, et al. Arch Pathol Lab Med. 2012 Dec 6. [Epub ahead of print]. PMID: 23216247.

かなり端折った部分もありますが、Literature reviewのご紹介はこれで終わります。

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