ICAAC 2013 Literature Review Session その2
というわけでLiterature reviewの続きです。
ICUでAcinetobacterが宙を舞う!という悪夢のようなお話。
Aerosolization of Acinetobacter baumannii in a Trauma ICU* Munoz-Price LS, Fajardo-Aquino Y, Arheart KL, et al. Crit Care Med. 2013 Aug;41(8):1915-1918. PMID: 23782965
MDRのAcinetobacterがエアロゾルになっていて空気のサンプルから検出されるという報告です。MRSAでも似たような話はいわれていますね。ちなみにLast authorはPittsburghの土井洋平先生。ICAACでも大変ご活躍でした。
多剤耐性Acinetobacterの重症感染症に対するコリスチン vs. コリスチン+RFP のRCTも紹介されていました。
Colistin and Rifampicin Compared With Colistin Alone for the Treatment of Serious Infections Due to Extensively Drug-Resistant Acinetobacter baumannii: A Multicenter, Randomized Clinical Trial. Durante-Mangoni E, Signoriello G, Andini R, et al. Clin Infect dis. 2013 Aug;57(3):349-58. PMID: 23616495
ルーチンでの使用が推奨されるほどの死亡率に対するメリットはなかったようですが、Eradicationは併用群の方がよかったようです。
Sequence type 131(ST131)というE. coliが広まっているという報告。このST131はあちらこちらのセッションで言及されていました。
Colpan A, Johnston B, Porter S, Clabots C, Anway R, Thao L, et al. Escherichia coli Sequence Type 131 (ST131) Sub-clone H30 as an Emergent Multidrug-Resistant Pathogen Among US Veterans. Clin Infect Dis. 2013 Aug PMID: 23926176
ESBL産生 and/or キノロン耐性のことが多いというこのE. coli。そういえば近頃そんなのよく見かけるわーと思っていたら京都-滋賀からの報告も発見。ESBL広まりすぎてやばいです。
さてそんなESBLはどこで広まってんだ?という疑問に対して「市中じゃねえの?」という話。
Transmission dynamics of extended-spectrum β-lactamase-producing Enterobacteriaceae in the tertiary care hospital and the household setting. Hilty M, Betsch BY, Bögli-Stuber K, et al. Clin Infect Dis. 2012 Oct;55(7):967-75. PMID: 22718774
KlebsiellaはE. coliよりも院内での伝播の要素が大きいようです。
さらに院内では接触感染対策をしなくてもあんまり広がらないんじゃないか?という話も紹介されていました。
Rate of transmission of extended-spectrum beta-lactamase-producing enterobacteriaceae without contact isolation. Tschudin-Sutter S, Frei R, Dangel M, Stranden A, Widmer AF. Clin Infect Dis. 2012 Dec;55(11):1505-11. PMID: 22057701
こちらの論文は発表された時にも気になった記憶がありました。
ESBLはどんどん広まっているけど、市中で広まっているので院内の感染対策ではできることに限界があるんじゃないかなあ…というのが感染対策をしている方々の実感ではないでしょうか。(自分だけだったらゴメンナサイ)
E. coliによる重症感染症の治療の選択肢が狭まっていくのは恐ろしいことです。抗菌薬の開発が順調だった頃の感染症科医たちはまさか21世紀になっても人々が大腸菌の治療について頭を悩ませているとは思っていなかったのでしょうか。後代のためにも我々は耐性菌の伝播を止めなくてはなりません。
緑膿菌の血流感染に対して単剤か併用か、という話。この話題は随分前から議論されていてメリットは明らかではないと言われている気がしてますが…
Effect of adequate single-drug vs combination antimicrobial therapy on mortality in Pseudomonas aeruginosa bloodstream infections: a post Hoc analysis of a prospective cohort. Peña C, Suarez C, Ocampo-Sosa A, et al. Clin Infect Dis. 2013 Jul;57(2):208-16.
βラクタムを持続静注してPK/PDパラメータだけではなく臨床的なアウトカムにも影響があるかというお話。
Continuous infusion of beta-lactam antibiotics in severe sepsis: a multicenter double-blind, randomized controlled trial. Dulhunty JM, Roberts JA, Davis JS, et al. Clin Infect Dis. 2013 Jan;56(2):236-44.
持続静注の方が血中濃度の目標は満たしていた。臨床的治癒は持続静注群の方が多かったが、ICU-free daysは有意差なし、生存退院にも有意差はなかったようです。このへんはこの先さらに大規模なスタディが組まれて日常診療も変化してくるかもしれません。ちょっと前からSanfordにもβラクタムの持続静注についてまとめた章ができています。
肺炎球菌ワクチンの開始後で米国の肺炎での入院はかわったか?という話。PCV7は米国では2000年に導入されたので長期データがでてきているようです。何かを導入したら効果を測定するの大事です。
U.S. hospitalizations for pneumonia after a decade of pneumococcal vaccination. Griffin MR, Zhu Y, Moore MR, et al. N Engl J Med 2013 July 11;369(2)155-63. PMID: 23841730. これは図がわかりやすいので貼っちゃいましょう。
小児と一緒に高齢者の肺炎での入院も減っているようだ、という結果。”Herd protection”ということですね。
続いて百日咳ワクチンの論文が2つ。米国でも患者数が増えてきてワクチンの効果が検証されているようです。
全菌体ワクチンを受けたことのある人の方が無細胞ワクチンのみの人よりもリスクが低かったという話。
Reduced risk of pertussis among persons ever vaccinated with whole cell pertussis vaccine compared to recipients of acellular pertussis vaccines in a large US cohort. Witt MA, Arias L, Katz PH, et al. Clin Infect Dis 2013 May;56(9):1248-54. PMID: 23487373.
5回DTaPをうっても時間が経つと抗体価が下がっていくという話。
Waning immunity to pertussis following 5 doses of DTaP. Tartof SY, Lewis M, Kenyon C, et al. Pediatrics 2013 April;131(4):e1047-52. PMID: 23478868.
成人におけるTdapの効果を検証したCase-control studyも最近ありました。百日咳ワクチンの話はアウトブレイク時かどうかや、世代によって病原体に曝露したかどうかが違うのでデータの解釈が難しいですね…
長くなってきたのでこのへんで。まだまだ続きます。
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