2016年2月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29          

最近のトラックバック

無料ブログはココログ

« 内服で吸収のよい抗菌薬 | トップページ | Severe sepsis and septic shock »

2013年8月 8日 (木)

人工関節感染症のIDSAガイドライン

いささか旧聞に属しますが、IDSAから出た人工関節感染症 (PJI) のガイドラインの推奨部分だけ抄訳したのでアップします。ちょうど1年前(といっても記事としては2つ前ですが)には骨髄炎に対する抗菌薬のレビューを読んだので、期せずして骨関節関連の話題ばかりが続いてしまっていますが、別にそれにばっかり興味があるわけではありません。

 

Osmon DR, Berbari EF, Berendt AR, Lew D, Zimmerli W, Steckelberg JM, et al. Executive Summary: Diagnosis and Management of Prosthetic Joint Infection: Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2013 Jan 1;56(1):1–10.

 

このガイドラインの本文を読んで興味深いところは「満場一致では決まっていない」といったことがはっきりと書いてあることです。「データがないのでエキスパートオピニオンで書いてるところもたくさんあるし、一つの状況に対して複数の有効な方法があることもあるよ」とも書いてあります。

 

以下は抄訳です。このブログは個人的なメモなので、訳に間違いがある可能性大なので詳細は原典をご確認ください。同じような内容の繰り返しになってるところはちょっと端折ってます。

 

1. What preoperative evaluation and intraoperative testing should be performed to diagnose PJI and what is the definition of PJI?

 

1.PJIの定義は?

 

PJIの診断をするために必要な術前評価、術中に必要な検査は何か?   
・関節の人工物からの瘻孔や持続する排液   
・人工物の部分の急激な痛み   
・埋め込みから最初の数年で慢性的な人工物の部分の疼痛(特に疼痛なしの期間がない場合)   
・創傷治癒遷延の既往   
・表層または深部感染の既往

 

2.身体所見と問診が重要。   
問診で確認すべきは   
・人工物の種類   
・いつ埋め込んだか   
・関節の手術の既往   
・埋め込み術後の創傷治癒遷延の既往   
・関節以外の場所の感染症   
・現在の症状   
・薬剤アレルギー   
・合併症   
・穿刺液または手術で得られた検体の微生物検査結果   
・PJIに用いられた抗菌薬(局所抗菌薬も含む)

 

3.PJIを疑うが、診断がはっきりしない場合は血沈、CRPを調べる(!?)   
血沈とCRPの組み合わせが感度特異度が最善と思われる。

 

4.PJIを疑う時は関節の単純レントゲンを撮る

 

5.全例診断目的の関節穿刺を行う   
・例外は臨床的に感染が明らかですでに手術が予定されていて、手術まで抗菌薬を投与しなくても大丈夫な場合   
・原因のはっきりしないCRPや血沈の上昇があり、慢性的な人工物の痛みがある場合も関節穿刺が推奨される。   
・すでに手術が予定されていて、関節穿刺の結果でマネジメントが変わらないならいらないかもしれない。   
・関節液は細胞数、白血球分画、培養を行う。   
・臨床的に必要があれば結晶の評価を行う。

 

6.臨床的に安定していれば、関節液の穿刺前に最低2週間ほど抗菌薬を控えると微生物の検出率が上がる

 

7.発熱がある場合、急性の症状がある場合、血流感染の可能性が高い他の感染症や微生物(特にS. aureus)が疑われる場合は血液培養を採取する

 

8.PJIでルーチンに骨シンチ、白血球スキャン、MRI、CT、PETを行う必要はない

 

◇術中のPJI診断

 

9.術中に人工物周囲から得られた検体の病理学的検索は病理医が解釈に慣れていれば最も信頼のおける検査法である。臨床的にPJIが疑われ、検査結果でマネジメントが変わる場合には行った方がよい。例えば2段階での関節の交換をするか、revision arthroplastyをするかの判断が必要な場合。

 

10.最低2箇所、理想的に5,6箇所の人工物周囲の組織または抜去された人工物そのものを培養検査に回すべきである。微生物学的な診断のチャンスを最大限にするためである。

 

11.可能なら術前に最低2週間抗菌薬を中止すると術中に採取された検体での培養検出率が上がる。

 

 

 

◇PJIの定義

 

12.人工物とつながる瘻孔はPJIにの存在の証拠である

 

13.人工物を抜去またはデブリする時に採取した人工物周囲の組織で病理学的に急性炎症の存在が認められれば、強くPJIの存在を示唆する

 

14.他に明らかな原因のない人工物周囲の排膿はPJIがある証拠である

 

15.術中の検体または術前の穿刺液との組み合わせで2検体以上の培養で同じ微生物が検出されたら、PJIはほぼ確実である。毒性の強い微生物(S. aureus)が一検体で検出された場合もPJIを示唆する可能性が高い。複数検体から一つだけ常在菌(Propionibacterium acnes、CNS)が検出された場合はPJIとは決め付けず、他の所見もふまえて判断する

 

16.上記を満たしていなくてもPJIは存在することがあり、臨床医は自らの臨床的判断で得られた所見を判断する。

 

II. What different surgical strategies should be considered for treatment of a patient with PJI?

 

PJIの治療にどのような外科治療の戦略があるか?

 

17.最終的にどのような外科治療を行うかの判断は整形外科医が行う。必要に応じて感染症科、形成外科などにコンサルテーションをする

 

18.人工物を残して、デブリのみの戦略を考慮するのは以下の条件を満たす人   
・人工物がよく固定されている   
・瘻孔がない   
・挿入してから30日以内か症状出現から3週間以内

 

Image(66)

 

・条件は満たさないものの、他の手術が不可能または高リスクすぎる場合は人工物を残してデブリのみの治療を考慮するが再燃の危険性は高い

 

19. 2段階での入れ替えは米国ではよく行われる。対象となるのは外科医が再植え込みが可能と考える、内科的に2回の手術に耐えられて、1段階での入れ替えができない人。再植え込みが可能かどうかは残存する軟部組織と骨組織の欠損にもとづいて評価する。

 

Image(67)

 

Image(68)

 

・入れ替え前に血沈とCRPをとって、植え込み後の治療成功をアセスメントする。状況によっては2段階での入れ替えを複数回行なってもうまくいく状況もある。

 

20. 一期的な抜去と入れ替えは米国ではあまり行われていない。   
・THA後の感染症で軟部組織の状態がよくて、菌も捕まっていて、内服の薬に感受性がある場合は考慮してもいいかも   
・骨のグラフトが必要だったり、セメントに有効な抗菌薬が混ぜられなかったりすると失敗のリスクは高まる。

 

Image(69)

 

Image(70)

 

21. 歩いていない人であれば切除して関節形成してしまうのも考慮。

 

・例えば骨のストックがない、軟部組織で覆えない、耐性の強い微生物での感染、合併症で手術に耐えられない、以前の2期的な交換で失敗し、これ以上の失敗のリスクをとるのが難しいケース

 

Image(71)

 

III. What is the medical treatment for a patient with PJI following debridement and retention of the prosthesis?

 

デブリとデバイス留置のみで治療した場合の内科的治療は?

 

-Staphylococcal PJI-

 

23. 2-6週間の病原菌に特異的な点滴+RFP300-450mg1日2回の治療が行われたあと、RFP+感受性のある薬剤の内服で THAなら3ヶ月、TKAなら6ヶ月治療する。肘、肩、足関節はTHAと同じように治療する。RFPと組むのはCPFXかLVFX。キノロンが使えない場合はST、MINO、DOXY、第1世代セファロスポリン(セファレキシン)抗ブドウ球菌ペニシリン (これらに限るわけではない)。もしRFPが併用できないのなら点滴での治療期間を4-6週間に伸ばすようにガイドラインパネルは推奨。

 

25. 上記のレジメンの後にさらに追加で長期投与を行う場合もある。その場合に使うのはセファレキシン、ジクロキサシリン、ST、MINOなど。感受性にあわせる。長期抑制にリファンピン単独では使わないこと。RFPを併用で長期抑制に使う人もいる。満場一致で決まったわけではない。

 

Image(72)

 

-PJI Due to Other Organisms-

 

26. 4-6週間の点滴投与

 

28. 長期抑制をすることもある。レジメンは患者にあわせる。キノロンで治療した後に長期抑制をするかどうかは満場一致にならず。ほかはブドウ球菌の場合と同様

 

IV. What is the medical treatment for a patient with PJI following resection arthroplasty with or without planned staged reimplantation?

 

切除して関節形成して、入れ替えをする場合(しない場合も含む)の内科的治療は?

 

29. 4-6週間の点滴投与

 

V. What is the medical treatment for a patient with PJI

 

following 1-stage exchange?

 

1期的な入れ替えをやった人の内科的治療は?

 

-Staphylococcal PJI-

 

31. 2-6週間の点滴治療をRFP300-450mg×2と併用

 

その後RFPをと内服での治療を3ヶ月。RFPと組むのはCPFXかLVFX   
キノロンが使えない場合はST、MINO、DOXY、第1世代セファロスポリン(セファレキシン)抗ブドウ球菌ペニシリン (これらに限るわけではない)   
もしRFPが併用できないのなら点滴での治療期間を4-6週間に伸ばすようにガイドラインパネルは推奨。(23.とほぼ同じ内容)

 

33. 上記のレジメンの後にさらに追加で長期投与を行う場合もある。

 

その場合に使うのはセファレキシン、ジクロキサシリン、ST、MINOなど。感受性にあわせる。長期抑制にリファンピン単独では使わないこと。RFPを併用で長期抑制に使う人もいる。満場一致で決まったわけではない。(25.と同じ内容)

 

-PJI Due to Other Organisms-

 

34. 4-6週間の点滴投与

 

36. 33.と同じ内容

 

VI. What is the medical treatment for a patient with PJI

 

following amputation?

 

アンプタした場合は?

 

37. 菌血症や敗血症の持続がなければ、すべての組織をとったあと24-48時間で抗菌薬を終了。敗血症とかがあればその状態に応じる。

 

38. もしアンプタした後にも感染した組織が残存した場合は4-6週間の点滴治療を推奨。

« 内服で吸収のよい抗菌薬 | トップページ | Severe sepsis and septic shock »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/157615/57950697

この記事へのトラックバック一覧です: 人工関節感染症のIDSAガイドライン:

« 内服で吸収のよい抗菌薬 | トップページ | Severe sepsis and septic shock »