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2012年6月

2012年6月14日 (木)

骨髄炎に対する抗菌薬の全身投与

1年以上の間隔が空きましたが、久しぶりに記事らしい記事をアップします。

このブログにアクセスしてくる方の検索語を見ると、IDSAのガイドラインの邦訳を探して
たどり着く方が多いようです。
あと、MRSAも検索語ランキングにいつも入っていますね。

今回は骨髄炎のレビューを読みました。
非常にコンサルテーションを受けることの多い感染症です。
治療が大変な感染症の代表格といってもいいように思います。

下の抄訳というかメモを見ていただくとわかりますが、この分野は臨床的なデータが少ないのが特徴です。
これまでにいくつものレビューが書かれていますが、最終的には薬剤選択、投与期間、
投与方法については現存するデータでは明確な答えは出てこないという結論になっています。

直接的に論文の内容とは関係ありませんが、抗MRSA薬については、新規の薬剤がこれまでの薬剤より優れていると考えて優先的に使おうという意見もあるようです。
現存するデータをどう解釈するかは、読み手に権利のあるところですが、判断の根拠となった情報の出処が利害関係の少ないものであることを願います。

英語論文に常に正しいことが書いてあるわけではありませんが、世界的に広く読まれているレビューでは特に優れた薬剤は指摘されていないことは記憶に留める価値があると思います。
そんなこと理解しても明日から薬が選べるわけではないというのが残念ですが…

以下論文の抄訳です。最後にConclusionとして論文筆者の意見がまとめてあるのが参考になりました。

個人の勉強用なので内容には誤訳などあるかもしれませんのでご注意ください。データについては原著の図表を確認してください。

Spellberg B, Lipsky BA.
Systemic Antibiotic Therapy for Chronic Osteomyelitis in Adults.
Clinical Infectious Diseases. 2012 Feb;54(3):393 –407.


骨髄炎の治療期間が長期間行われるのは骨のRevasculalizationに3~4週かかるという小児の急性骨髄炎での観察結果による。

伝統的には1970年代にケースシリーズをもとに抗菌薬は4~6週間点滴で投与すべしという結論がでた。
しかしこれらのCase seriesは後ろ向きでコントロールもされていない。

これまでのレビュー(Lancet Infect Dis, Int J Infect dis, Int Orthop
では結局他より優れた抗菌薬があるのか、投与期間、ルートがあるのかという問に、
現存するデータでは答えが出せないという結論になっている

◇骨髄炎の薬理学
・βL
骨中の濃度は血中の5~20%程度。点滴で投与すると血中濃度が高くなってよく移行するが、内服だと血中濃度は落ちる。(10%)
内服のβLでは十分な骨の濃度を保てない。
感染している骨の方が移行はよくなる。

120120614_095847spellberg_lipsky_20
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・VCM
VCMも骨への移行性はよくない。血中の10%程度。

・DAP
DAPもよくない(血中の7%程度)が、骨の濃度は十分MICを超えるという話もある。
20120614_101807spellberg_lipsky_201

◇Oral agents
最近のデータでは内服の薬剤も骨濃度がターゲットとする微生物のMICを超えるといわれている。
特に骨の濃度が上がるのが、fluoroquinolones, linezolid, trimethoprim
骨の濃度が血中の50%程度になる。
320120614_100001spellberg_lipsky__2

ST合剤のSの方はTほど骨に移行しないが、血中濃度がTの20倍になるので骨でも十分にMICを超えるらしい。
局所でST合剤の1:5という配合比が保たれていなくてもシナジー効果が得られる。
ST合剤は濃度が上がるほど殺菌作用が強くなるので慢性骨髄炎では高容量での投与が推奨されている。7–10 mg/kg trimethoprim, twice per day

DOXYは骨の部位によって濃度がだいぶかわる。
420120614_100018spellberg_lipsky_20

CLDMは安定した骨移行性。
620120614_100028spellberg_lipsky_20

嫌気性菌ならメトロニダゾール。
720120614_100036spellberg_lipsky_20

RFPはなんと血中濃度を超えた骨の濃度を達成
投与量が450mg/日を超えると一気に骨の濃度が上がるらしい。
820120614_100105spellberg_lipsky_20

FOMも骨移行性がかなりよい。
しかし報告されている論文の投与量がえらく多いようだ
(10g1回の後5g3日間、とか100mg/kgとか)
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・動物実験
づ物実験の結果からは、CPFXを単独でMRSA骨髄炎の治療に使うのはあまりよくない。
RFPと併用せよ、と。

◇Non ramdomized clinical trial
・点滴

βLで治癒率は60%程度。
ばらつきがあるのは診断基準がばらばらなせいもあるかもしれない。
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VCMはβLよりも治癒率が悪い。
外来治療に用いると再発のリスクが高いらしい。
11

Salvageとして用いられたDaptoが効いたという報告もある。
Daptoでも全体として治癒率は65-75%。

・内服:キノロン
キノロンによる慢性骨髄炎の内服治療は他の経口薬剤よりも研究が多い。
研究どうしを比較するのは難しい。診断基準やデブリの有無、レジメンや治療期間、治癒判定の基準も違う。
いくつかの知見を抽出してみると
1. 治癒率は60-80%
2. 治癒率はデブリ率と近い、デブリそのものがよかったのではないか?と推測できる
3. ほとんどの治療失敗は緑膿菌による感染。ついでS. aureus
4. 治療期間は12-16週、通常量より多く使われているCPFX≧1500mg/日!とか
  長期投与と大量投与が治療に必要なのかは不明。

・内服:他の薬
RFPは単剤では使えないが、併用では治療効果を改善するという報告がある。
併用で再発率を減らしたという報告もある
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人工関節感染ではRFP併用で治癒率改善というデータもある。

LZDはCompassionate useのデータをかき集めると治癒率は60%程度のようだ。

STはCPFXの次に報告されている論文が多い。(意外だ!)
治癒率はまちまちのよう。
45%しか治癒せずという報告もあるが、この報告では外科処置をしたのは55%のみのようだ。反対にデブリしたケースにST+RFPで治療して治癒率100%という報告もある。

人工物の感染ではやはりデブリの有無によって治療効果が異なるよう。

STはLZDと比較して同等という報告もある。

総合するとSTは用量を多目(T換算で7-8mg/kg/日程度)にした方がよさそう、デブリの併用が大事、RFP併用がよさそう、慢性骨髄炎、特にデバイスありの場合は治療期間長目がよさそう、ということのよう。

FOMやフシジン酸も試されている。
(フシジン酸は残念ながら日本には外用薬しかないようだ。)

◇Randomized Clinical trials
2009年のコクランレビューでは8本しかない!
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RCTで最も有名なのはCPFXとRFP併用の有用性を示したこちら
Zimmerli W, Widmer AF, Blatter M, Frei R, Ochsner PE.
Role of rifampin for treatment of orthopedic implant-related staphylococcal infections: a randomized controlled trial. Foreign-Body Infection (FBI) Study Group.
JAMA. 1998 May;279(19):1537–41.

ST+RFP  vs. IV Cloxacilinというスタディもある。ただし相手はMSSA。
全例にデブリをやってST+RFPかIV Cloxacillinを8週間投与。治癒率は89%と91%。
デブリさえやっていればSTでも治癒率に遜色はなし。

◇Conclusions
1. 吸収の良い経口抗菌薬での治療は静注治療に対してよいAlternativeである
・静注が好まれるのはEvidenceというより多分に経験からである。
・静注治療のスタディは経口よりも少ないが、成功率は大体同じくらい
・PKPDからは好まれる内服抗菌薬はFQかSTである。
・投与期間は8-16週、特にデブリが一緒に行われた場合。今後は4-6週間くらいでも同様の治療効果かを検討する必要。
・使うなら高容量の方がよいかもしれない。STなら7-10mg/kg/日、CPFXなら750mg1日2回
・FQ耐性をとって再燃した報告もあるので注意。
・STとCLDMがGPCによる骨髄炎の治療薬としては好ましい。
・LZDは長期投与による毒性の問題。DOXYは臨床データがない。
・嫌気性菌ならメトロニダゾール
・殺菌性と静菌性のどちらがいいかは議論があるところだが、殺菌性の抗菌薬の方が優れるというデータはない

2. RFPの追加が治癒率を改善させる効果は以下の状況で確認されている
 1)動物実験
 2)人における後向きの観察
 3)慢性骨髄炎と整形外科インプラント感染での前向き無作為化比較試験
 ゆえに相互作用の問題がなければRFPの追加を検討するよいだろう。

3. 治療期間は個別化する必要がある。
・現在の4-6週という推奨に強いエビデンスがあるわけではない
・さらに長期間投与するともっとよくなるというエビデンスがあるわけでもない
・治療効果を判定するよいマーカーがあるわけではなく、長期間投与をしても再発はまだまだ多い。

4. デブリをすると治癒率は改善するが、しなくても治るケースもある。どのケースに必要なのかはまだわからない。

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