自然災害後の感染症 Epidemics after natural diseasters
何かできることはないか考えましたが、例によってこのブログでいつもしている文献の抄訳くらいしか
思いつきませんでしたので、ここに掲載します。
Epidemics after natural disasters. Emerg Infect Dis. 2007 Jan;13(1):1-5.
以下抄訳 太字が論文の内容。そうでない字が筆者の感想・見解です。
□遺体と病気について
遺体は災害そのものによるものであれば感染症のアウトブレイクの原因になることはほとんどない。
□避難に伴う問題
自然災害に伴う避難民の間では、紛争に伴う避難民の間ほどには感染症のアウトブレイクは起きないといわれている。
□自然災害にともなう伝染病
○水に関連した伝染病
・安全な水へのアクセスが制限される。
これまでの災害でアウトブレイクが報告されているのは
・病原性E coli (バングラデッシュの洪水)
・コレラ (バングラデッシュ、西ベンガルの洪水)
・それ以外の下痢 (モザンビーク)
・パラチフス(インドネシアの洪水)
・Cryptosporidium
・先進国よりも途上国の方がリスクが高い。
・米国ではハリケーンの後の下痢が報告されている。
原因はサルモネラ、コレラ、ノロウイルス
米国の方が参考になりそうです。日本でもこの時期ノロは無視できないかもしれません。
コレラは日本では心配にならないかもしれませんが、病原性大腸菌は無視できません。
・A型、E型肝炎も糞口感染で伝播しうる。
・Endemicな地域で問題になる。
・インドネシアで津波の後にA、E型ともに流行があった。
日本ではあまり問題にならないかもしれませんが、黄疸が発生したら注意が必要でしょうか。
○人の密集に伴う疾病
事前のワクチン接種がいきわたっていない地域では麻疹の流行が起きうる。
フィリピンの火山噴火後、インドネシアの津波後にも流行が報告されている。
小児、青年の発熱+発疹には要注意ですね。
髄膜炎菌による髄膜炎の流行も報告されている
急性の呼吸器感染症が最も流行する。特に5歳未満では重要。
リスクになるのは過密、直火を使った室内での調理、低栄養である。
なぜ直火が?なのかよくわかりませんが、これまでの報告からリスクとされたようです。
○昆虫媒介感染症
洪水が起きると蚊の産卵場所が増える。数週間で蚊の発生が増加する。
洪水に伴うマラリアの増加はよく知られている
日本では蚊の媒介するマラリアやデングはほとんど問題にならないので大幅に省略
○その他の疾患
破傷風はヒト-ヒト感染はしないが重要な感染症
インドネシアの津波でも発症者が多数でた。
2週間半で発症のピークがきた。
(潜伏期間は3 ~21 日)
負傷者の処置の際には破傷風トキソイド(必要ならばグロブリンも)を
○災害後に感染症を減らす5ステップ
こちらにまとまっています。(CDCのサイト、英語です)
http://cdc.gov/ncidod/EID/13/1/1-appT.htm
知識が少しでも誰かの役に立てばと思い記載しておきます。
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