IDSA Febrile neutropenia のガイドライン その3
IDSAのFNガイドラインの抄訳。最終回です。
IX. 抗ウイルス薬の予防投与は?どのウイルス疾患が抗ウイルス薬による予防の適応か?
35. HSCTか白血病の寛解導入する人でHSVがSero-positiveの人はアシクロビルで予防する。(A-I).
36. HSVとVZVの抗ウイルス薬による治療はウイルスによる疾患が明らかなときにのみ行う。(C-Ⅲ)
37. 上気道症状や咳がある患者では呼吸器感染ウイルス(RS、インフルエンザ、パラインフルエンザ、アデノ、hMPV)の検査と胸部レントゲンを推奨。(B-III).
38. がん患者には毎年の不活化インフルエンザワクチンを推奨。(A-II).どのタイミングでワクチンをうつのが最適かははっきりしないが、おそらく血清の抗体価の反応が最もよいのは化学療法のサイクルの間だと考えられている。具体的には最後の治療から7日以上か、次の治療の開始の2週間以上前(B-III)。
がん患者のインフルエンザワクチンにはレビューが他にもあります。
この日数の推奨の根拠は結構古そう。
39. インフルエンザ感染はノイラミニダーゼ阻害剤で治療する。(A-II)インフルエンザの暴露があるか、アウトブレイクしている状況ではインフルエンザ様の症状を呈している好中球減少症の患者にはノイラミニダーゼの経験的投与を行う。(C-III).
40.RSVに対する治療は上気道症状を呈している好中球減少患者にルーチンではない。(B-III).
X. G-CSF、GM-CSFのFNマネジメントにおける位置づけは?
41.発熱性好中球減少症のリスクが20%以上の患者ではCSFの予防的な投与を考慮する。(A-II).
42. すでに起きてしまったFNの治療にCSFは推奨しない。(B-II).
XI. FN患者のカテーテル関連血流感染症をどうマネジメントするか?
43. 同時にとられたカテ血と末梢血培養の陽性化までの時間差(Differential time to positivity :DTP)>120分の場合はカテーテル関連血流感染症を示唆する。(A-II).
末梢血とカテ血培養の陽性化までの時間差(DTP)がずいぶん前面にでてきた印象を受けます。2009年のカテ感染のIDSAのガイドラインでも言及されていますが。今回のFNのガイドラインでも血液培養を採取する時、CVが入っていればそこからも1セット、という推奨になっているのはこのDTPを意識したものと思われます。(2つ前のエントリで訳しています)
複数のルーメンがある場合はどのルーメンからとるか?そりゃ全部のルーメンですよ。
44. S. aureus, P. aeruginosa、真菌、MycobacteriaによるCLABSIでは最低14日間の全身的な抗菌薬の投与に加えて、カテーテルの抜去を行う。(A-II) カテーテルの除去はトンネル感染、ポケット感染、血栓性静脈炎、心内膜炎、血行動態が不安定な敗血症、72時間以上治療しても改善しない場合にも推奨される(A-II).
45. CNSによるCLABSIはカテーテルを残しておいてもよいかもしれない。抗菌薬ロック療法の併用も考慮。(B-III).
CNSだったらカテーテルを残しておいても治療のアウトカムはかわらなかった、という報告がありました。といっても再発はかなり多くなるようですが・・・論文のFirst authorであるI. Raad先生はこのガイドラインの筆者の一人でもあります。
46. 合併症のあるCLABSIは4~6週間の治療を行う。合併症とは深部への播種性感染、心内膜炎、感染性血栓症である。(A-II)
なお血液培養が72時間以上陰性化しない場合も合併症のあるものとして扱う。(A-II for S. aureus, C-III for other pathogens).
47. CV挿入時は手指衛生、マキシマルバリアプレコーション、クロルヘキシジンによる皮膚の消毒を行う(A-I).
日本には2%のクロルヘキシジンがないのでしばらくはイソジンでしょう。
XII. FN患者を診療するのにどのような環境の整備が必要か?
48.病院内では手指衛生が最も効果的な感染予防である。(A-II).
49.すべての患者にはスタンダードプリコーションを適応し、患者の症状や所見に応じて感染経路別の予防策を導入する。 (A-III).
50. HSCTの患者は個室に収容する。(B-III). 同種のHSCTの患者の部屋はHEPAフィルターつきで12回/分以上の換気ができるようにする。(A-III).
51. 植物、生花、ドライフラワーは入院している好中球減少の患者の部屋にはおかない。(B-III).
52. 病院の職員が具合が悪いときには職場を離脱できるように状況を整えておく(A-II).
具合の悪いときに根性で働いても誰にもいいことありません。
ということでFNガイドラインの抄訳はこれでおしまいです。
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