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2011年2月14日 (月)

IDSA Febrile neutropenia のガイドライン その2

IDSAのFNのガイドラインの抄訳、続きです。

V. エンピリックな抗菌薬の投与はいつまで行うべきか?


22.臨床的にか、細菌学的に感染症が同定されたら、治療期間は臓器と微生物に準じる。少なくとも好中球減少症の間は抗菌薬は投与するし、必要なら好中球が回復してからも続ける。 (B-III).

23.原因のわからない熱が続く場合は最初のレジメンを好中球が明らかに回復するまでは続ける。伝統的にはANC>500以上。  (B-II).

24. 判明した感染症の治療期間が完遂して、症状、所見ともにすっかりよくなっていてもまだ好中球減少の状態が続いている場合は内服キノロンの予防レジメンに変更して好中球が回復するまで継続するという手もある。(C-III).


VI. いつ抗菌薬を予防投与して、どの薬剤で行うか?
25.  好中球減少が強く、長期間続くことが予測される場合はキノロン内服による予防投与も検討する。(B-I). レボフロキサシンとシプロフロキサシンがもっともよくスタディされていて、どちらも大雑把には同等と考えられている。しかし口腔粘膜炎に伴うViridans streptococcusによる侵襲性の感染症のリスクが高い状況ではレボフロキサシンの方が好まれる。GNRのキノロン耐性がどれくらいでてくるかを定期的にモニタリングするシステムを構築しておくことが推奨される。(A-II).

好中球減少時のViridans streptococcusによる侵襲性の感染症についてはこちらを参照。

26. グラム陽性菌に対する活性をもつ薬剤をキノロンの予防投与に追加するのは推奨されていない。(A-I).

27. 7日以内に好中球減少が回復することが予想される低リスクの症例で、ルーチンに抗菌薬を予防投与するのは推奨しない。(A-III).

VII. 抗真菌薬のエンピリックまたはPre-emptiveな投与の役割は?どの薬剤を用いるか?
 ハイリスクの場合
28. 好中球減少の期間が7日を超えることが予想される患者で、発熱が抗菌薬開始後も4-7日目で熱が続いている場合は、エンピリックな抗真菌薬の投与と侵襲性真菌感染症の評価をする。(A-I) すでに糸状菌に対する予防投与が入っている患者の場合にどの抗真菌薬がいいのかを推奨できるほどのデータがないが、系統の違う別の抗糸状菌作用のある薬剤の点滴静注への変更を考慮する。(B-III).

29. エンピリックな抗真菌薬の投与だけでなく、Preemptiveな抗真菌薬の投与という方針もありえる。全身状態が安定していて、胸部・副鼻腔のCTで糸状菌感染の所見がなく、血清マーカーも陰性で、体のどこからも真菌が検出されていない患者では抗真菌薬の投与を待ってもいいかもしれない。(B-II) 抗真菌薬はこれらの指標のいずれかが陽性化した場合に投与開始する。

このへんが今回の改訂の新しくでたところですね。
抗真菌薬の投与をEmpiricにいくのではなくて、画像や血清マーカーの組み合わせで疑わしいと判断した症例だけに行うのがPre-emptiveと呼ばれる治療です。(違う呼び方をする人もいるかもしれません) このへんのスタディが嚆矢となって提唱されてきつつある戦略です。
遷延する発熱の際に対するマネジメントは単に抗真菌薬の比較だけではなく、Empiric therapyとPre-emptive therapyのどちらの戦略を採用するかという比較になってきています。今のところガイドラインの本文を読む限りはPre-emptive therapyの方は実験的な治療であって、スタンダードではない、という位置づけのようです。
おそらく施設によって真菌症の発症率は結構異なるので、それを踏まえてどちらの戦略をとるのが合理的かを個々に検討する必要があるのだと思っています。

低リスクの場合

30. 低リスクの患者では通常真菌感染症のリスクは低いので、ルーチンでエンピリックな抗真菌薬の投与するのは推奨しない。(A-III).

VIII. 抗真菌薬の予防投与はいつ行うか?どの薬剤で行うか?
 ハイリスクの場合
31. カンジダ感染症に対する予防投与は、リスクがかなり高い患者群では推奨される。HSCT、白血病の寛解導入、サルベージのインダクション。 (A-I) 薬はフルコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、Posaconazole、ミカファンギン、Caspofunginが選択肢。

32.Aspergillus感染に対するPosaconazoleでの予防投与はAMLかMDSに対して強い化学療法を行う13歳以上の患者で、予防がなければアスペルギルス感染症を起こすリスクが高いと考えられる場合には考慮する。(B-I).

33. 移植患者で生着前にAspergillusの予防投与に効果があるかどうかはわかっていない。しかし侵襲性のアスペルギルス感染症の既往がある(A-III)、または好中球減少の期間が2週間を超えるようなら(C-III)、糸状菌に活性のある抗真菌薬を投与を推奨する。(C-III)

 低リスクの場合
34. 好中球減少の期間が7日を超えない症例ではルーチンでアスペルギルスの予防投与は推奨されない。(A-III).

今回はここまで。

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