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2010年12月

2010年12月28日 (火)

MSSA菌血症に対してβラクタムはみな同等か?

Are all beta-lactams similarly effective in the treatment of methicillin-sensitive Staphylococcus aureus bacteraemia?
Clinical Microbiology and Infection.


MRSAの菌血症のマネジメントは話題になることが多いですが、
MSSAについては意外と文献が少ないものです。
ヨーロッパの雑誌にでたのを教えてもらいました。

MSSAの菌血症の治療にβラクタムはお互いに同等なのか、ということにフォーカスした
後ろ向きのCohort studyです。


Clinical question
半合成ペニシリンとセファゾリンはどちらが優れているのか?
他のMSSAを一応カバーすることになっているβラクタムはどれくらい効果があるのか?

MSSAの菌血症症例からエンピリックな治療にβラクタムが使用された例を解析。
エンピリック治療を5つに分類:
・クロキサシリン/ペニシリン(感受性あれば)/セファゾリン
・セフロキシム
・CTX/CTRX
・βラクタマーゼ阻害剤配合βラクタム(βL/βLIと書きます)
・その他のセファロスポリンとカルバペネム

Definitiveの分類は3種類:
・クロキサシリン/ペニシリン
・セファゾリン
・その他のβL
541例のMSSAの菌血症が対象になった。
EmpiricにMSSAをターゲットに治療を開始した人たちと、
Empiricにもっと広域なβLが入った人とではPatient characteristicsが有意に違った。

この違いを補正しないで死亡率を比べるとClox/CEZ群22.1%(29/131)、
セフロキシム34.7&(34/98)
CTX/CTRX50.5%(98/194)
βL/βLI41%(25/61)、
その他のセファロスポリンなど28.1%(16/57)

バンコマイシンを含むEmpiric治療群39%(32/82)と比べると
バンコマイシンなしのEmpiric治療群とは死亡率の差はなし。

Characteristicsの違いを調整して多変量解析をすると30日死亡率のORは
Oxa/CEZを対照とするとセフロキシム1.98、CTX/CTRX2.24、βL/βLI2.68、
その他のβL0.81(ただしVCMが併用されているものが多い)

Defenitiveの治療で比較すると、90日死亡のORはCEZ、Oxaでは差がなかった。
他のβLとでは死亡率が高かったが統計学的には有意でなwかった。

Discussionでは
 EmpiricがCTX/CTRXやβL/βLIではCEZやOxaより死亡のORが高かった。
 Definitiveの比較は主にCEZとOxaでこれは差がなし。他のβLはデータが小さいのでなんともいえない。
これまでのスタディではβLとグリコペプチドを比較するとβLの優位をいわれているものが多かった。しかしβL同士の比較はなかった。
In vitroでは半合成ペニシリンの方がCEZよりもInoculum effectやβラクタマーゼに強いので、
効果が高いのではないかといわれていた。
外来での点滴治療の領域(OPAT)でMSSA感染に対するβLの治療は検討されているが、菌血症は少ない。
South  Med  J 2005; 98: 590–595.
MSSAの髄膜炎に対してセフロキシムによる治療が検討されたこともある。
Scand J Infect Dis 2003;35: 311–314.

ということでこの論文の結論は
・MSSAの菌血症のエンピリック治療はCEZや半合成ペニシリンの方が死亡のORが低かった。
・Definitive治療でCEZと半合成ペニシリンは死亡のORは同等であった。


ということになっています。

個人的にはABPC/SBTとCEZがDefinitive therapyとして同等なのかが興味が
あるのですがこの結果からはなんともいえないですね。

Staphyloccus aureus bacteremia (SAB) はなかなか興味深いので、
自分も何か研究のネタがないかと思っていますが、面白そうなものが思いつきません。

48例集めたら「SAB48」として発表できるでしょうか。

2010年12月14日 (火)

画像評価が必要な尿路感染の患者は誰か?

再びUTI関連の文献です。

Nieuwkoop C van, Hoppe BPC, Bonten TN, et al.
Predicting the Need for Radiologic Imaging in Adults with Febrile Urinary Tract Infection. Clinical Infectious Diseases. 2010;51(11):1266-1272.

今度は尿路感染で誰に画像検査(Radiologic imagin)を行うか、という問題です。
教科書的には「3日間解熱しなかったら考えよう」ということがいわれています。
実はこの「3日」という数字には根拠があって、遡るとちょっと古い文献にたどり着きます。

Kanel KT, Kroboth FJ, Schwentker FN, Lecky JW.
The intravenous pyelogram in acute pyelonephritis.
Archives of internal medicine. 1988;148(10):2144-8.
 ・67人のもともと健康なPyelonephritisの入院患者全員にIntravenous Urographyをやったが治療が変わったのは8%だけであった
 ・異度を失わずに感度をあげるために統計学的に有用だったのは熱型のみであった。
 ・72時間経っても解熱しなかった人に限定すると検査の陽性率が32%まで上昇した

今回のスタディは「余計な画像診断を減らそう」という目的があるようです。
舞台はオランダの8つの救急外来。
まずは5つの救急外来のデータでPrediction ruleをつくって、3つの救急外来でそのValidationをしようという計画。
前向きにデータを集めていますが、抗菌薬の選択や画像を行うタイミングなどは診療している施設に任されています。
患者数は346人で、245人(71%)が画像検査が行われています。
平均年齢70歳、患者の41%が男性なので、単純性尿路感染とは違う患者層を扱っているようです。

画像を行った患者のうち46人(19%)が臨床的に意義のある画像所見がえられています。
間をすっとばして結論にいくと、著者らはまず画像で異常のあった群と異常のなかった群で有意差のあった
・尿路結石の既往
・尿のpH≧7.0
・(MDRDで算出した)GFR≦40mL/min/1.73
をそれぞれ1点ずつスコアを与えたPrediction ruleとして作成しました。
そしてカットオフを≧1とした場合、(要はどれか一つがあること)画像で異常がみつかる事に対する
NPVが93%、PPV24%と報告しています。

といってもNPV、PPVは検査前確率でかわるので尤度比をだすと陽性尤度比1.89、陰性尤度比0.45程度で、撮ろうかどうしようか迷っている人のマネジメントを変えてくれる結果ではないように思えますが・・・

やっぱり結石の既往のある人はさっさと評価をした方がいいんだな、ということは言えますね。
著者らはこのルールを適応すれば40%の画像検査が減らせるのではないかと結論づけています。
個人的にはこの結果を用いて画像を減らす努力をするよりは、
早めに画像にいく人が誰かを考えるヒントにしたほうがよいように思いました。

2010年12月13日 (月)

前立腺炎に血液培養は必要か?

UTIについて文章を書くので最近のUTIに関する論文を探していて見つけました。


このような問の立て方が適切か?という問題はさておき、
論文のタイトルのつけ方は重要ですね。

忘れてはならないのは、「適切にとられた血液培養は陰性であった」
という事実も診療上の意思決定には大変重要だということですね。
血液培養は陽性でなければ役に立たないというわけではありません。


それはさておき結果ですが、
18歳以上の男性(当たり前)で最終的に急性前立腺炎と診断がついた入院患者の尿培養と血液培養を分析しています。

大きなMulti centerのスタディのようで、
患者のDemographicは別の論文になっています。

平均年齢61歳、82%が発熱あり、68%が直腸診で圧痛あり。73%が市中感染。

前立腺炎患者は347人。
そのうち血液培養が提出されたのが261人(75%)。
血培陽性は55人(21%)。

尿培養がきれいで血液培養がでたらMicrobiological diagnosisに貢献したと判定。
血液培養の陽性群、陰性群、とらなかった群で予後を比較。

血培の結果で微生物の診断がついたのは14人(5%)
 10人は尿培養が生えなかったが血液培養が生えた。
 4人は血培と尿培の結果が一致しなかった

Logistic regression解析では38.4度以上の発熱が血液培養陽性にPredictiveであった。
抗菌薬投与後の血液培養は全員陰性であった。
血液培養陽性例では熱が高く、熱の期間が長く、悪寒戦慄の回数が多く、尿の菌量が多かったが、
高齢や合併症の数とは関連がなかった。
血液培養陽性例のほうが抗菌薬の投与期間が長かった(42日 vs. 33日)

フランスでは急性腎盂腎炎の時に血液培養の採取を推奨していないようです。
しかし前立腺炎は腎盂腎炎より診断と治療が難しいので、理論上は血液培養が有用である。
コストパフォーマンスはよくないかもしれないが、個人のレベルでは微生物の診断がつくベネフィットはあるだろう。
少なくとも抗菌薬投与のされていない高熱の前立腺炎の患者では血液培養をとるのは有用だろうと結論づけています。

○○な時に血液培養は必要ですか?という質問を受けることは多いですので、
血液培養のメリットが明らかな状況を把握しておくことは大事だと思います。

2010年12月11日 (土)

シンガポールに行ってきました

気がつくと更新しないまま2ヶ月ほど経過してしまいました。
身近な人から宴会でブログを更新するように迫られてしまったので、
がんばって更新するようにします。

先週の話ですが、シンガポールで行われた学会に参加してきました。
1泊3日の強行日程でした。
今回はボストンと違いポスター発表してきました。
ブログの更新ができなかったのは学会準備で忙しかったから・・・ということにしておきましょう。

Cimg1169s

自分のポスターの前で外国の人がディスカッションしているかのように
見える写真にしましたが、単に隣のポスターの人が雑談しているだけです。

Cimg1170s

アジアを中心とした世界中の感染症の専門家がディスカッションしている
光景のように見える写真にしましたが、ティータイムでみんながコーヒーと
お菓子に群がっているところです。
(もちろんディスカッションしている人もたくさんいるでしょう)

次のセッションの開始時間が迫ってくるとロビーにチャイムの音が流れる
のですが、鉄琴をもったおじさんが人力で鳴らしながらロビーを練り歩いていました。

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空いた時間にお約束のマーライオンを見てきました。
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マーライオンよりもその向こうに見える船が載っかったビルの方が
インパクトがありました。
マーライオンを見ると急性胃腸炎が流行っていることに注意しなくてはと思います。

ポスターではSENTRYという国際的なサーベイランスプログラムから
CLSIのカルバペネムに対するブレイクポイント改訂で腸内細菌科の感受性が
どう替わるか、という報告がありました。
これまでと比較すると0.5~6.0%の低下があり、EUCASTのブレイクポイントと
だいぶ一致するようになってきたそうです。

国際学会は楽しいですね。
毎回英語力をなんとかしなければと思いながら帰ってきます。
次はどこの国際学会を狙おうかな?

おっと、その前に演題を論文にしていかなくてはいけませんね。

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