多発性骨髄腫患者の感染症
CIDに2009年にでていてレビューの抜粋です。
図表がたくさんあって実際的です。
といっても特異的な免疫不全の話というのはあまりなくて、
複合的に免疫不全があるからちゃんと評価と治療をしようという内容ですが。
治療が進歩してきて、寛解と再発を繰り返してリスクが積み重なる病気になってきている、
というのが繰り返し述べられています。
あとbortezomibでHSVとVZVのリスクがあがる、というのが繰り返しでてきました。
以下抄訳
MMは薬が増えたので再治療と寛解を繰り返す病気になった。
おかげで免疫不全は強くなってきている。
○Myelomaによる免疫不全+薬による免疫不全
Bortezomib:HSV、VZV
Stem cell transplant→CDAD、CMV、Mold
○RISK FACTOR
MM→B cell機能障害→低ガンマグロブリン
→樹状細胞の障害
→T cellの障害
→腎障害
→換気不全:椎体の破壊と麻薬による
→消化管の粘膜障害:化学療法による
→高血糖:デキサメタゾンによる
→アミロイドーシス
→高齢者に多い
→鉄過剰もお忘れなく
(あまり知られていないけれど感染症の時に組織の鉄が減るのは
微生物に対する人間の防御メカニズム)
実際にはどのメカニズムの障害が最も問題になるのかははっきりしないが、
古典的にはPolyclonalな低ガンマグロブリンがS.pneumoniae, H.fluの感染症と
関連づけられている。
治療が進歩してこれまではMMと関連付けられていなかった微生物の感染症が問題になってきた。具体的にはCMV、Aspergillus、Fusarium、HSV、VZV。
HSVとVZVがBortezomibで。
【OVERVIEW】
○寛解導入
MP療法の最初の数カ月は感染症のリスクが高い。
Dexaを併用するとHSVやVZVのリスクが高まる。
サリドマイドは骨髄毒性はない。免疫調整作用と免疫抑制作用をT cellに及ぼす。
ただし臨床的に感染症がましたという話もそうでなかったという話も。
○HSCT:これは通常のHSCTと同じ注意点
○サルベージ
治療が繰り返されて免疫不全が積み重なってくるのでサルベージ治療の人のほうが感染症は増えてくる。ただしデータ的には頻度は無治療の人とかわりないという話も。
Bortezomibはよく使われるがVZVとHSVが増える。(此の話は繰り返しでてくる)
LenalidomideとDexaの併用では好中球減少が増えるがそれで感染症が増えるというわけではなかったよう。
【PREVENTION】
○予防抗菌薬
ステロイドを投与している人はST合剤を。
HSVとVZVは既往がある人はCD4がすごく低い人は(<50とか)では考慮する。
なおベルケイドの人では全員、抗ウイルス薬で予防を。
CMVのPre-emptiveなどはHSCTに準じる。
○ワクチン
インフルエンザ、H.flu、S.pneumoniaeのワクチンに対する反応はあまりよろしくないらしい。インフルエンザの予防は家族やCare giverにワクチンをするのがよいだろう。
グロブリンをうって感染症を予防したという報告もあるが、
抗菌薬による予防投与は用いなかったよう。
コストもかかるし、IgGが500mg/dLをきっていて、
抗菌薬を投与してもしつこく感染症を繰り返している人に限定した方がよいだろう。
【MANAGEMENT 】
鑑別診断のリストは長いので大変だが・・・アルゴリズムが載っており
これは面白い。(よく読むと一般的な内容ではあるが)
血栓症の検索を同時にするようになっている。
免疫不全の状態に応じてアプローチする。(そりゃそうだ)
免疫不全の程度は原疾患の進行度これまでの治療による。(そりゃそうだ)
気を付けるべきはステロイドとBortezomib。
発熱はそうでないとわかるまで感染症として扱おう。ただしMMで熱がでることもある。
(余談だが「MMでは熱がでない」というExpert opinionがあるけれど、
MMで熱がでるという文献はある。これとかこれとか)
MMの治療薬はP450と関連がある(ステロイド、サリドマイド、Bortezomib)P-450と関連のある抗菌薬を使うときは気をつけよう。具体的にはマクロライド、抗真菌薬、RFP、DOXY、INHなどなど)
心アミロイドーシスがある人はQT延長にも要注意。
骨髄抑制がくる薬剤は注意して使うこと(LZD、STなど)
« 感染症コンサルテーションを聞いてもらうには | トップページ | Cogulase 陰性ブドウ球菌が自然弁にも感染性心内膜炎を起こす »
「感染症科」カテゴリの記事
- Clinical practice guideline for the management of candidasis:2016(2016.02.16)
- クラリスロマイシンと心血管イベント(2016.02.02)
- AHA IE guideline 2015 update その2 Staphylococcus編(2015.12.01)
- AHA IE guideline 2015 update その1 総論 Streptococcus(2015.11.29)
- 椎体炎のIDSAガイドライン(2015.08.10)
この記事へのコメントは終了しました。
« 感染症コンサルテーションを聞いてもらうには | トップページ | Cogulase 陰性ブドウ球菌が自然弁にも感染性心内膜炎を起こす »
コメント