人工関節感染症のレビュー
人工関節感染症のレビューを読みました。
2009年のNEJMです。
2004年にもNEJMに人工関節感染のレビューはでていましたから、
もう次か、という印象。どちらかというと診断に力点をおいているようです。
最近の文献を元に書かれている目新しい話題は
・人工物を除去したら、超音波処理をして、得られたものを培養すると感度が改善する
・CRPが診断に有用な場合がある
というところでしょうか。
Del Pozo JL, Patel R.
Clinical practice. Infection associated with prosthetic joints.
N. Engl. J. Med. 2009 Aug 20;361(8):787-794.
PMID: 19691430
感染はわりとまれ
膝 0.8~1.9%
股関節 0.3~1.7%
リスクはいろいろ。悪性腫瘍、肥満、RA,免疫抑制、 長時間の手術、両側同時の手術などなど・・・
半分以上はブドウ球菌。RAではS.aureusが多い。
肩ではAcne菌が多い。
20%程度でPolymicrobialになり、 MRSAや嫌気性菌が絡むことが多い。
感染が成立するにはごく少量の菌でよい。 Biofilmを作って抗菌薬からも免疫機構からも逃れてしまう 。
ふつうは皮膚の常在菌によるものだが、血流からつくこともある。
一般に毒性の強いS.aureus、 GNRは3ヶ月以内に。
毒性の弱いCNS、P. acnesなどはもっと時間が経ってから発症する。
はっきりした診断基準はないが、 複数のスタディで検証されているものは
以下のどれいか一つを認め ること。
○人工物周囲の組織に病理学的に急性炎症の所見を認める
○人工物と連絡している瘻孔がある
○関節腔に明らかに膿がある
○以下のいずれかまたは両方
・同じ微生物を関節液の穿刺液から2回以上、 あるいは術中に採取した組織の培養で検出する。
・ 400mlの超音波処理した検体からの10mlあたり20CFU 以上
急性感染とか瘻孔があって排膿している慢性感染は別に診断に困ら ないが、
難しいのは関節の痛みだけのケース。
他にあがる原因がなければCRPの測定は有用である。
カットオフ13.5で感度73~91%、特異度81~86% と報告あり。(膝関節)
カットオフ5 で感度95%、特異度62%といという報告もあり(股関節)
CRPとESRは手術だけで上昇する。
しかしCRPは通常2ヶ月で戻ってくるESRは数カ月も上昇がつ づいている事がある。
ただし弱毒菌が原因だと抗菌薬の投与で偽陰性にもなりうる。
WBC上昇とプロカルシトニンは感度が低い。
【画像】
レントゲンでは感度、特異度ともに低い。
CT,MRIは人工物のアーチファクトがある。ただしチタンかタンタルであればMRIはとれる。
PETは感度82%、特異度87%という報告もある。
【関節液】
診断がはっきりしない場合は関節液をとるのが一番。
蜂窩織炎の部分を通じてだすのは避けよ、と書いてある
( 理由は書いていない。菌を押し込むから??)
膝関節なら細胞数1.7×10の3乗以上、好中球65%以上、
股関節なら4.2×10の3乗以上、好中球80% 以上で感染と診断。
(なんで関節によって違うのか)
人工関節以外の関節炎とはカットオフがぜんぜん違うので注意。
術前にちゃんと微生物がつめられなかった場合は手術中にちゃんと 微生物用の検体をとる。
1箇所だけでは感度が低いので数カ所とること。 人工関節周囲の組織をとる。
スワブは感度が低い!
もし人工物が除去できたら、表面を超音波処理して、 その溶液を培養すると感度がよい。
術前に抗菌薬が投与されていた場合に有効。 ひいてあるのはいずれも2006年以降のスタディ。
NEJMにもでてた、知らなかった!
Sonication of removed hip and knee prostheses for diagnosis of infection.
N. Engl. J. Med. 2007 Aug 16;357(7):654-663.
PMID: 18202443
【治療】
抗菌薬単独では最終的には治癒は難しい。デブリが不可欠。
アルゴリズムが載っているが、 2005年にNEJMにでていたレビューにでていたものほどは詳 細ではない。
施設によってアプローチがやや違う。
大きく分けると1期的にやるか2期的にやるか。
条件を満たせばRetentionもあり。
JAMA. 1998 May 20;279(19):1537-41からとられている。
治療期間についてもいろいろ見解がでている。
2期的にやる場合、 抗菌薬のSpacerを使えばあまり長期間抗菌薬を投与しなくて もよいのでは、という話がある。
どうにも手術ができない場合の治療期間は・・はっきりしない。
抗菌薬については詳しくは記載していない。
Bioavailabilityがよい薬なら内服で治療しても良 い。FQ、ST、テトラサイクリン。
【Areas uncertainty】
・術前には感染と考えられず、 術後に術中検体の培養で診断がついた例のマネジメントはどうすれ ばよいか。
(確かにこれは悩ましい状況だ)
というところでしょうか。
Del Pozo JL, Patel R.
Clinical practice. Infection associated with prosthetic joints.
N. Engl. J. Med. 2009 Aug 20;361(8):787-794.
PMID: 19691430
感染はわりとまれ
膝 0.8~1.9%
股関節 0.3~1.7%
リスクはいろいろ。悪性腫瘍、肥満、RA,免疫抑制、
半分以上はブドウ球菌。RAではS.aureusが多い。
肩ではAcne菌が多い。
20%程度でPolymicrobialになり、
感染が成立するにはごく少量の菌でよい。
ふつうは皮膚の常在菌によるものだが、血流からつくこともある。
一般に毒性の強いS.aureus、
毒性の弱いCNS、P.
はっきりした診断基準はないが、
以下のどれいか一つを認め
○人工物周囲の組織に病理学的に急性炎症の所見を認める
○人工物と連絡している瘻孔がある
○関節腔に明らかに膿がある
○以下のいずれかまたは両方
・同じ微生物を関節液の穿刺液から2回以上、
・
急性感染とか瘻孔があって排膿している慢性感染は別に診断に困ら
難しいのは関節の痛みだけのケース。
他にあがる原因がなければCRPの測定は有用である。
カットオフ13.5で感度73~91%、特異度81~86%
カットオフ5 で感度95%、特異度62%といという報告もあり(股関節)
CRPとESRは手術だけで上昇する。
しかしCRPは通常2ヶ月で戻ってくるESRは数カ月も上昇がつ
ただし弱毒菌が原因だと抗菌薬の投与で偽陰性にもなりうる。
WBC上昇とプロカルシトニンは感度が低い。
【画像】
レントゲンでは感度、特異度ともに低い。
CT,MRIは人工物のアーチファクトがある。ただしチタンかタンタルであればMRIはとれる。
PETは感度82%、特異度87%という報告もある。
【関節液】
診断がはっきりしない場合は関節液をとるのが一番。
蜂窩織炎の部分を通じてだすのは避けよ、と書いてある
(
膝関節なら細胞数1.7×10の3乗以上、好中球65%以上、
股関節なら4.2×10の3乗以上、好中球80%
(なんで関節によって違うのか)
人工関節以外の関節炎とはカットオフがぜんぜん違うので注意。
術前にちゃんと微生物がつめられなかった場合は手術中にちゃんと
1箇所だけでは感度が低いので数カ所とること。
スワブは感度が低い!
もし人工物が除去できたら、表面を超音波処理して、
術前に抗菌薬が投与されていた場合に有効。
NEJMにもでてた、知らなかった!
Sonication of removed hip and knee prostheses for diagnosis of infection.
N. Engl. J. Med. 2007 Aug 16;357(7):654-663.
PMID: 18202443
【治療】
抗菌薬単独では最終的には治癒は難しい。デブリが不可欠。
アルゴリズムが載っているが、
施設によってアプローチがやや違う。
大きく分けると1期的にやるか2期的にやるか。
条件を満たせばRetentionもあり。
JAMA. 1998 May 20;279(19):1537-41からとられている。
治療期間についてもいろいろ見解がでている。
2期的にやる場合、
どうにも手術ができない場合の治療期間は・・はっきりしない。
抗菌薬については詳しくは記載していない。
Bioavailabilityがよい薬なら内服で治療しても良
【Areas uncertainty】
・術前には感染と考えられず、
(確かにこれは悩ましい状況だ)
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