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2010年1月

2010年1月27日 (水)

泥沼の撤退戦か新たなフロンティアか

引き続き人工関節の感染について。

2009年にJACにこれまでの中では最大のケースシリーズがでていました。

112例です。
Clin. Microbiol. Infect. 2004 Sep;10(9):831-837. 34例ですから、大きいですね。
別に大きければよいというものでもないですが。
ある種の説得力を感じます。

デブリと抗菌薬投与で、人工物を残すストラテジのことを
DAIR (debridement, antibiotics and implant retention)と彼らは呼んでいます。
なんて読むんだろうか?

この結果から著者らは
・かなりの割合の人がDAIRでいける(80%弱)
・内服抗菌薬を終了してから3ヶ月以内が再燃が多くて、どうもそれまでの投与期間は
関係なさそう
という結論をだしています。

CPFX+RFPを併用すると保存的治療の成績がよくなるという報告
から10年以上たちそれなりに症例が集積しつつあるというところでしょうか。

これまでは保存的に・・というと泥沼の撤退戦に付き合わされるようなイメージを
持っていましたが、実は新たなフロンティアなのかもしれません。
誰が保存的にいけて、誰がダメなのかという症例の選択は相変わらず難しいですが。

以下は抄訳です。かなりはしょってますがご了承ください。
Byren I, Bejon P, Atkins BL, Angus B, Masters S, McLardy-Smith P, et al.
One hundred and twelve infected arthroplasties treated with
'DAIR' (debridement, antibiotics and implant retention): antibiotic
duration and outcome.
J. Antimicrob. Chemother. 2009 Jun;63(6):1264-1271.
PMID: 19336454


DAIRで治療した人たちの治療失敗に抗菌薬投与期間がどれくらい関与しているかを見た
ケースシリーズ。
OxfordのBone infection unit ofthe Nuffield Orthopaedic Centre
というところのDAIRのプロトコルに従った。

DAIRの前にはEmpirical antibioticsは使っていない!
手術で検体をとったらEmpirical treatmentはMEPM500mg q8hr、VCM 1g q12hr
点滴治療はβラクタムかGlycopeptideで6週間行う。
RFP+FQが耐性をとりやすい、治療開始時に菌量が多いと耐性のリスクが高いのだ、
と書いてある。出典は書いてないが)

内服は可能ならCPFX500mgq12hr+RFP300mgq12hr
耐性がある場合は、ドキシサイクリン、Fusidic acid、リファンピシン、
クリンダマイシン、アモキシシリンから組み合わせて使う。
内服の治療期間は主治医に任せたが、最低12ヶ月。
といってもケースバイケースなので、実際の投与期間はばらばらになった。

結果は
52例の股関節、51例の膝関節、9例の他の関節。
半分が70歳以上の高齢者
69%が術後90日以内の感染。63%が受診から3日以内に手術が行われている。
S.aureusが42%いたが、MRSAは8%のみ
治療失敗は20例 (18%)。
フォローアップは平均で2.3年。

内服抗菌薬の投与期間は1.5年。84%はリファンピシンを内服。キノロンは59%。
CPFX+RFPは59%。テトラサイクリンは20%。

単変量解析ではS.aureus感染がCI1.0-8.4でTreatment failureと関連
ほかにはPrevious revise、Arthoroscopic washoutが関連

多変量で優位だったのは
90日以上挿入されているインプラント、関節鏡、S.aureusによる感染、再手術、併存疾患。
静注抗菌薬を28日以上用いるとHazard ratio0.49 (ただしP=0.18)

内服抗菌薬終了後は再発のリスクが4倍になっていた。
特に3ヶ月以内だとHR7.0、次の3ヶ月では1.4で有意ではなかった。
これは単に時間が経っていることとは交絡していないよう。

結果からわかるのはデブリ+長期間の抗菌薬投与はかなりの割合の患者さんを治癒に持ち込めること。抗菌薬を終了すると再発の危険が高 まること。長期間の投与では投与終了後の再発リスクが低くならなかったこと

結局治る人は短期間で治るけど、治らない人は再発を延期しているだけかもしれない。
だからといって短期間(6ヶ月未満)で終了していいという結論にはならない。
Life longの治療は残りの時間がある程度限りがある患者にはよいのでは?

2010年1月25日 (月)

人工関節感染症のレビュー

人工関節感染症のレビューを読みました。
2009年のNEJMです。

2004年にもNEJMに人工関節感染のレビューはでていましたから、
もう次か、という印象。どちらかというと診断に力点をおいているようです。

最近の文献を元に書かれている目新しい話題は
・人工物を除去したら、超音波処理をして、得られたものを培養すると感度が改善する

・CRPが診断に有用な場合がある
というところでしょうか。

Del Pozo JL, Patel R.
Clinical practice. Infection associated with prosthetic joints.
N. Engl. J. Med. 2009 Aug 20;361(8):787-794.
PMID: 19691430

感染はわりとまれ
膝 0.8~1.9%
股関節 0.3~1.7%
リスクはいろいろ。悪性腫瘍、肥満、RA,免疫抑制、長時間の手術、両側同時の手術などなど・・・

半分以上はブドウ球菌。RAではS.aureusが多い。
肩ではAcne菌が多い。

20%程度でPolymicrobialになり、MRSAや嫌気性菌が絡むことが多い。

感染が成立するにはごく少量の菌でよい。Biofilmを作って抗菌薬からも免疫機構からも逃れてしまう
ふつうは皮膚の常在菌によるものだが、血流からつくこともある。

一般に毒性の強いS.aureus、GNRは3ヶ月以内に。
毒性の弱いCNS、P.acnesなどはもっと時間が経ってから発症する。

はっきりした診断基準はないが、複数のスタディで検証されているものは
以下のどれいか一つを認めること。
○人工物周囲の組織に病理学的に急性炎症の所見を認める
○人工物と連絡している瘻孔がある
○関節腔に明らかに膿がある
○以下のいずれかまたは両方
 ・同じ微生物を関節液の穿刺液から2回以上、あるいは術中に採取した組織の培養で検出する。
 ・400mlの超音波処理した検体からの10mlあたり20CFU以上

急性感染とか瘻孔があって排膿している慢性感染は別に診断に困らないが、
難しいのは関節の痛みだけのケース。

他にあがる原因がなければCRPの測定は有用である。
カットオフ13.5で感度73~91%、特異度81~86%と報告あり。(膝関節)
カットオフ5 で感度95%、特異度62%といという報告もあり(股関節)

CRPとESRは手術だけで上昇する。
しかしCRPは通常2ヶ月で戻ってくるESRは数カ月も上昇がつづいている事がある。
ただし弱毒菌が原因だと抗菌薬の投与で偽陰性にもなりうる。
WBC上昇とプロカルシトニンは感度が低い。

【画像】
レントゲンでは感度、特異度ともに低い。
CT,MRIは人工物のアーチファクトがある。ただしチタンかタンタルであればMRIはとれる。
PETは感度82%、特異度87%という報告もある。

【関節液】
診断がはっきりしない場合は関節液をとるのが一番。
蜂窩織炎の部分を通じてだすのは避けよ、と書いてある
理由は書いていない。菌を押し込むから??)

膝関節なら細胞数1.7×10の3乗以上、好中球65%以上、
股関節なら4.2×10の3乗以上、好中球80%以上で感染と診断。
(なんで関節によって違うのか)

人工関節以外の関節炎とはカットオフがぜんぜん違うので注意。

術前にちゃんと微生物がつめられなかった場合は手術中にちゃんと微生物用の検体をとる。
1箇所だけでは感度が低いので数カ所とること。人工関節周囲の組織をとる。
スワブは感度が低い!

もし人工物が除去できたら、表面を超音波処理して、その溶液を培養すると感度がよい。
術前に抗菌薬が投与されていた場合に有効。ひいてあるのはいずれも2006年以降のスタディ。
NEJMにもでてた、知らなかった!
Sonication of removed hip and knee prostheses for diagnosis of infection.
N. Engl. J. Med. 2007 Aug 16;357(7):654-663.
PMID: 18202443

【治療】
抗菌薬単独では最終的には治癒は難しい。デブリが不可欠。
アルゴリズムが載っているが、2005年にNEJMにでていたレビューにでていたものほどは詳細ではない。
施設によってアプローチがやや違う。

大きく分けると1期的にやるか2期的にやるか。

条件を満たせばRetentionもあり。
JAMA. 1998 May 20;279(19):1537-41からとられている。

治療期間についてもいろいろ見解がでている。
2期的にやる場合、抗菌薬のSpacerを使えばあまり長期間抗菌薬を投与しなくてもよいのでは、という話がある。

どうにも手術ができない場合の治療期間は・・はっきりしない。

抗菌薬については詳しくは記載していない。
Bioavailabilityがよい薬なら内服で治療しても良い。FQ、ST、テトラサイクリン。

【Areas uncertainty】
・術前には感染と考えられず、術後に術中検体の培養で診断がついた例のマネジメントはどうすればよいか。
(確かにこれは悩ましい状況だ)

2010年1月15日 (金)

腫瘍による閉塞性黄疸はドレナージすると胆管炎が起きやすくなる

今週のNEJMの論文の一つ。
一見我々の仕事と関係ないかのような文献でしたがちょっと関係あります。


van der Gaag NA, Rauws EA, van Eijck CH, Bruno MJ, van der Harst E,
Kubben FJ, et al.
Preoperative Biliary Drainage for Cancer of the Head of the Pancreas.
N Engl J Med. 2010 Jan 14;362(2):129-137.
http://content.nejm.org/cgi/content/short/362/2/129

切除可能な腫瘍のために閉塞性黄疸が生じている場合に、術前に胆道ドレナージをして減黄した方が
術後の予後がよくなるのか、というのは以前から議論になっているようです。

このスタディでは切除可能な膵頭部腫瘍の患者さんで閉塞性黄疸を呈している人を
早期の手術群と、4~6週間の胆道ドレナージを行ってからの手術群にわけています。
ドレナージ方法はPTCDではなくて、ERCPによるステント留置を主にしています。

96名が早期の手術群、106名がドレナージ群に割付。
合併症が起きたのは手術群では39%、ドレナージ群では74%。

ドレナージに関する合併症は47人(46%)。
術後の合併症死亡率と入院日数は両群で有意差なし

ここからが普段の自分の仕事に関わりがありますが、
ドレナージ群では27人(26%)が胆管炎を合併。
手術群で術前に胆管炎を起こしたのは1人。
手術群に割り付けられてなんらかの理由で胆道ドレナージが行われたのは5人。
そのうち胆管炎がおきたのは2人。

腫瘍により閉塞性黄疸がおきても胆管炎が合併することは少ないが
そこにドレナージが行われると胆管炎が起きやすくなることは知られています。
(どこかに書いてあったが出典を忘れてしまった)
まさにそのとおりのデータです。

知っている人には常識ですが、数字にするとなんとなく説得力があるような気がします。

ちなみに膵頭十二指腸切除の術前に胆汁の細菌培養が陽性だと術後の感染は多くなるという報告もある。
Cortes A, Sauvanet A, Bert F, Janny S, Sockeel P, Kianmanesh R, et al.
Effect of bile contamination on immediate outcomes after pancreaticoduodenectomy for tumor.
J Am Coll Surg. 2006 Jan;202(1):93-9.   
PMID: 16377502

ではここで出てくる微生物をターゲットに予防抗菌薬を投与すればよいのか?
それは今のところ結論がないようです。

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