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2012年5月 1日 (火)

骨髄炎に対する抗菌薬の全身投与

1年以上の間隔が空きましたが、久しぶりに記事らしい記事をアップします。

このブログにアクセスしてくる方の検索語を見ると、IDSAのガイドラインの邦訳を探して
たどり着く方が多いようです。
あと、MRSAも検索語ランキングにいつも入っていますね。

今回は骨髄炎のレビューを読みました。
非常にコンサルテーションを受けることの多い感染症です。
治療が大変な感染症の代表格といってもいいように思います。

下の抄訳というかメモを見ていただくとわかりますが、この分野は臨床的なデータが少ないのが特徴です。
これまでにいくつものレビューが書かれていますが、最終的には薬剤選択、投与期間、
投与方法については現存するデータでは明確な答えは出てこないという結論になっています。

直接的に論文の内容とは関係ありませんが、抗MRSA薬については、新規の薬剤がこれまでの薬剤より優れていると考えて優先的に使おうという意見もあるようです。
現存するデータをどう解釈するかは、読み手に権利のあるところですが、判断の根拠となった情報の出処が利害関係の少ないものであることを願います。

英語論文に常に正しいことが書いてあるわけではありませんが、世界的に広く読まれているレビューでは特に優れた薬剤は指摘されていないことは記憶に留める価値があると思います。
そんなこと理解しても明日から薬が選べるわけではないというのが残念ですが…

以下論文の抄訳です。最後にConclusionとして論文筆者の意見がまとめてあるのが参考になりました。

個人の勉強用なので内容には誤訳などあるかもしれませんのでご注意ください。データについては原著の図表を確認してください。

Spellberg B, Lipsky BA.
Systemic Antibiotic Therapy for Chronic Osteomyelitis in Adults.
Clinical Infectious Diseases. 2012 Feb;54(3):393 –407.


骨髄炎の治療期間が長期間行われるのは骨のRevasculalizationに3~4週かかるという小児の急性骨髄炎での観察結果による。

伝統的には1970年代にケースシリーズをもとに抗菌薬は4~6週間点滴で投与すべしという結論がでた。
しかしこれらのCase seriesは後ろ向きでコントロールもされていない。

これまでのレビュー(Lancet Infect Dis, Int J Infect dis, Int Orthop
では結局他より優れた抗菌薬があるのか、投与期間、ルートがあるのかという問に、
現存するデータでは答えが出せないという結論になっている

◇骨髄炎の薬理学
・βL
骨中の濃度は血中の5~20%程度。点滴で投与すると血中濃度が高くなってよく移行するが、内服だと血中濃度は落ちる。(10%)
内服のβLでは十分な骨の濃度を保てない。
感染している骨の方が移行はよくなる。

・VCM
VCMも骨への移行性はよくない。血中の10%程度。

・DAP
DAPもよくない(血中の7%程度)が、骨の濃度は十分MICを超えるという話もある。

◇Oral agents
最近のデータでは内服の薬剤も骨濃度がターゲットとする微生物のMICを超えるといわれている。
特に骨の濃度が上がるのが、fluoroquinolones, linezolid, trimethoprim
骨の濃度が血中の50%程度になる。

ST合剤のSの方はTほど骨に移行しないが、血中濃度がTの20倍になるので骨でも十分にMICを超えるらしい。
局所でST合剤の1:5という配合比が保たれていなくてもシナジー効果が得られる。
ST合剤は濃度が上がるほど殺菌作用が強くなるので慢性骨髄炎では高容量での投与が推奨されている。7–10 mg/kg trimethoprim, twice per day

DOXYは骨の部位によって濃度がだいぶかわる。

CLDMは安定した骨移行性。

嫌気性菌ならメトロニダゾール。

RFPはなんと血中濃度を超えた骨の濃度を達成
投与量が450mg/日を超えると一気に骨の濃度が上がるらしい。

FOMも骨移行性がかなりよい。
しかし報告されている論文の投与量がえらく多いようだ
(10g1回の後5g3日間、とか100mg/kgとか)

・動物実験
づ物実験の結果からは、CPFXを単独でMRSA骨髄炎の治療に使うのはあまりよくない。
RFPと併用せよ、と。

◇Non ramdomized clinical trial
・点滴

βLで治癒率は60%程度。
ばらつきがあるのは診断基準がばらばらなせいもあるかもしれない。

VCMはβLよりも治癒率が悪い。
外来治療に用いると再発のリスクが高いらしい。

Salvageとして用いられたDaptoが効いたという報告もある。
Daptoでも全体として治癒率は65-75%。

・内服:キノロン
キノロンによる慢性骨髄炎の内服治療は他の経口薬剤よりも研究が多い。
研究どうしを比較するのは難しい。診断基準やデブリの有無、レジメンや治療期間、治癒判定の基準も違う。
いくつかの知見を抽出してみると
1. 治癒率は60-80%
2. 治癒率はデブリ率と近い、デブリそのものがよかったのではないか?と推測できる
3. ほとんどの治療失敗は緑膿菌による感染。ついでS. aureus
4. 治療期間は12-16週、通常量より多く使われているCPFX≧1500mg/日!とか
  長期投与と大量投与が治療に必要なのかは不明。

・内服:他の薬
RFPは単剤では使えないが、併用では治療効果を改善するという報告がある。
併用で再発率を減らしたという報告もある

人工関節感染ではRFP併用で治癒率改善というデータもある。

LZDはCompassionate useのデータをかき集めると治癒率は60%程度のようだ。

STはCPFXの次に報告されている論文が多い。(意外だ!)
治癒率はまちまちのよう。
45%しか治癒せずという報告もあるが、この報告では外科処置をしたのは55%のみのようだ。反対にデブリしたケースにST+RFPで治療して治癒率100%という報告もある。

人工物の感染ではやはりデブリの有無によって治療効果が異なるよう。

STはLZDと比較して同等という報告もある。

総合するとSTは用量を多目(T換算で7-8mg/kg/日程度)にした方がよさそう、デブリの併用が大事、RFP併用がよさそう、慢性骨髄炎、特にデバイスありの場合は治療期間長目がよさそう、ということのよう。

FOMやフシジン酸も試されている。
(フシジン酸は残念ながら日本には外用薬しかないようだ。)

◇Randomized Clinical trials
2009年のコクランレビューでは8本しかない!

RCTで最も有名なのはCPFXとRFP併用の有用性を示したこちら
Zimmerli W, Widmer AF, Blatter M, Frei R, Ochsner PE.
Role of rifampin for treatment of orthopedic implant-related staphylococcal infections: a randomized controlled trial. Foreign-Body Infection (FBI) Study Group.
JAMA. 1998 May;279(19):1537–41.

ST+RFP  vs. IV Cloxacilinというスタディもある。ただし相手はMSSA。
全例にデブリをやってST+RFPかIV Cloxacillinを8週間投与。治癒率は89%と91%。
デブリさえやっていればSTでも治癒率に遜色はなし。

◇Conclusions
1. 吸収の良い経口抗菌薬での治療は静注治療に対してよいAlternativeである
・静注が好まれるのはEvidenceというより多分に経験からである。
・静注治療のスタディは経口よりも少ないが、成功率は大体同じくらい
・PKPDからは好まれる内服抗菌薬はFQかSTである。
・投与期間は8-16週、特にデブリが一緒に行われた場合。今後は4-6週間くらいでも同様の治療効果かを検討する必要。
・使うなら高容量の方がよいかもしれない。STなら7-10mg/kg/日、CPFXなら750mg1日2回
・FQ耐性をとって再燃した報告もあるので注意。
・STとCLDMがGPCによる骨髄炎の治療薬としては好ましい。
・LZDは長期投与による毒性の問題。DOXYは臨床データがない。
・嫌気性菌ならメトロニダゾール
・殺菌性と静菌性のどちらがいいかは議論があるところだが、殺菌性の抗菌薬の方が優れるというデータはない

2. RFPの追加が治癒率を改善させる効果は以下の状況で確認されている
 1)動物実験
 2)人における後向きの観察
 3)慢性骨髄炎と整形外科インプラント感染での前向き無作為化比較試験
 ゆえに相互作用の問題がなければRFPの追加を検討するよいだろう。

3. 治療期間は個別化する必要がある。
・現在の4-6週という推奨に強いエビデンスがあるわけではない
・さらに長期間投与するともっとよくなるというエビデンスがあるわけでもない
・治療効果を判定するよいマーカーがあるわけではなく、長期間投与をしても再発はまだまだ多い。

4. デブリをすると治癒率は改善するが、しなくても治るケースもある。どのケースに必要なのかはまだわからない。

2012年4月11日 (水)

「感度と特異度からひもとく感染症診療のDecision Making」発売

またもや久しぶりの更新となってしまいましたが、
ごく一部を分担執筆した本のご紹介です。
原稿を書いたのは結構前な気がしますが…

「感度と特異度からひもとく感染症診療のDecision Making」
http://www.bunkodo.co.jp/book/detail_1054.html

世の中には病原体の名前がついた検査法がたくさんありますが、
なかなかその診断特性を把握するのは大変です。
その解説を集めたこのような本を大変貴重だと思います。

第1章が「検査をオーダーするまえに」というタイトルで検査結果を解釈する
前段階の考え方に触れていますので、検査結果に振り回されないために常に
ここに立ち返るのが大事でしょう。

一度書店で手にとって御覧ください。

2011年11月21日 (月)

「免疫不全者の呼吸器感染症」ついに発売

ずいぶん久しぶりの更新になってしまいました。
別にブログをやめたわけではありません。タイトル通り不定期の更新ですので。

関わった本のご紹介です。
「免疫不全者の呼吸器感染症」

http://www.nanzando.com/books/24821.php

24821

初版の事情で時間がかかりましたが、いろんな方々の力を借りて完成しました。
読んで大変勉強になると思います。

特に最後の章にあるケースカンファレンスは是非読んでいただきたいですね。
実際のケースを俎上に挙げて感染症科、呼吸器科、血液内科、リウマチ科などの最前線のドクター達が
熱いディスカッションを交わしています。
驚天動地の発言もあります(内容は読んでのお楽しみ)

ご興味のある方は是非お手にとってください。

2011年3月13日 (日)

自然災害後の感染症 Epidemics after natural diseasters

何かできることはないか考えましたが、例によってこのブログでいつもしている文献の抄訳くらいしか
思いつきませんでしたので、ここに掲載します。

Epidemics after natural disasters. Emerg Infect Dis. 2007 Jan;13(1):1-5.

以下抄訳 太字が論文の内容。そうでない字が筆者の感想・見解です。

□遺体と病気について
 遺体は災害そのものによるものであれば感染症のアウトブレイクの原因になることはほとんどない。
 

□避難に伴う問題
 自然災害に伴う避難民の間では、紛争に伴う避難民の間ほどには感染症のアウトブレイクは起きないといわれている。

□自然災害にともなう伝染病
○水に関連した伝染病
 ・安全な水へのアクセスが制限される。
 これまでの災害でアウトブレイクが報告されているのは
 ・病原性E coli (バングラデッシュの洪水)
 ・コレラ (バングラデッシュ、西ベンガルの洪水)
 ・それ以外の下痢 (モザンビーク)

 ・パラチフス(インドネシアの洪水)
 ・Cryptosporidium 

・先進国よりも途上国の方がリスクが高い。
・米国ではハリケーンの後の下痢が報告されている。
 原因はサルモネラ、コレラ、ノロウイルス

 米国の方が参考になりそうです。日本でもこの時期ノロは無視できないかもしれません。
 コレラは日本では心配にならないかもしれませんが、病原性大腸菌は無視できません。

・A型、E型肝炎も糞口感染で伝播しうる。
・Endemicな地域で問題になる。
・インドネシアで津波の後にA、E型ともに流行があった。

 日本ではあまり問題にならないかもしれませんが、黄疸が発生したら注意が必要でしょうか。

○人の密集に伴う疾病
 事前のワクチン接種がいきわたっていない地域では麻疹の流行が起きうる。
 フィリピンの火山噴火後、インドネシアの津波後にも流行が報告されている。

 
小児、青年の発熱+発疹には要注意ですね。 

 髄膜炎菌による髄膜炎の流行も報告されている

 急性の呼吸器感染症が最も流行する。特に5歳未満では重要。
 リスクになるのは過密、直火を使った室内での調理、低栄養である。

 
なぜ直火が?なのかよくわかりませんが、これまでの報告からリスクとされたようです。

○昆虫媒介感染症
 洪水が起きると蚊の産卵場所が増える。数週間で蚊の発生が増加する。 
 洪水に伴うマラリアの増加はよく知られている

 
日本では蚊の媒介するマラリアやデングはほとんど問題にならないので大幅に省略

○その他の疾患
 破傷風はヒト-ヒト感染はしないが重要な感染症
 インドネシアの津波でも発症者が多数でた。
 2週間半で発症のピークがきた。

 
(潜伏期間は3 ~21 日)
 負傷者の処置の際には破傷風トキソイド(必要ならばグロブリンも)を

○災害後に感染症を減らす5ステップ
こちらにまとまっています。(CDCのサイト、英語です)
http://cdc.gov/ncidod/EID/13/1/1-appT.htm 

知識が少しでも誰かの役に立てばと思い記載しておきます。

2011年2月17日 (木)

IDSA Febrile neutropenia のガイドライン その3

IDSAのFNガイドラインの抄訳。最終回です。

IX. 抗ウイルス薬の予防投与は?どのウイルス疾患が抗ウイルス薬による予防の適応か?
35. HSCTか白血病の寛解導入する人でHSVがSero-positiveの人はアシクロビルで予防する。(A-I).

36. HSVとVZVの抗ウイルス薬による治療はウイルスによる疾患が明らかなときにのみ行う。(C-Ⅲ)

37. 上気道症状や咳がある患者では呼吸器感染ウイルス(RS、インフルエンザ、パラインフルエンザ、アデノ、hMPV)の検査と胸部レントゲンを推奨。(B-III).

38. がん患者には毎年の不活化インフルエンザワクチンを推奨。(A-II).どのタイミングでワクチンをうつのが最適かははっきりしないが、おそらく血清の抗体価の反応が最もよいのは化学療法のサイクルの間だと考えられている。具体的には最後の治療から7日以上か、次の治療の開始の2週間以上前(B-III)。

がん患者のインフルエンザワクチンにはレビューが他にもあります。
この日数の推奨の根拠は結構古そう

39. インフルエンザ感染はノイラミニダーゼ阻害剤で治療する。(A-II)インフルエンザの暴露があるか、アウトブレイクしている状況ではインフルエンザ様の症状を呈している好中球減少症の患者にはノイラミニダーゼの経験的投与を行う。(C-III).

40.RSVに対する治療は上気道症状を呈している好中球減少患者にルーチンではない。(B-III).

X. G-CSF、GM-CSFのFNマネジメントにおける位置づけは?
41.発熱性好中球減少症のリスクが20%以上の患者ではCSFの予防的な投与を考慮する。(A-II).

42. すでに起きてしまったFNの治療にCSFは推奨しない。(B-II).

XI. FN患者のカテーテル関連血流感染症をどうマネジメントするか?
43. 同時にとられたカテ血と末梢血培養の陽性化までの時間差(Differential time to positivity :DTP)>120分の場合はカテーテル関連血流感染症を示唆する。(A-II).

末梢血とカテ血培養の陽性化までの時間差(DTP)がずいぶん前面にでてきた印象を受けます。2009年のカテ感染のIDSAのガイドラインでも言及されていますが。今回のFNのガイドラインでも血液培養を採取する時、CVが入っていればそこからも1セット、という推奨になっているのはこのDTPを意識したものと思われます。(2つ前のエントリで訳しています

複数のルーメンがある場合はどのルーメンからとるか?そりゃ全部のルーメンですよ

44. S. aureus, P. aeruginosa、真菌、MycobacteriaによるCLABSIでは最低14日間の全身的な抗菌薬の投与に加えて、カテーテルの抜去を行う。(A-II) カテーテルの除去はトンネル感染、ポケット感染、血栓性静脈炎、心内膜炎、血行動態が不安定な敗血症、72時間以上治療しても改善しない場合にも推奨される(A-II).

45. CNSによるCLABSIはカテーテルを残しておいてもよいかもしれない。抗菌薬ロック療法の併用も考慮。(B-III).

CNSだったらカテーテルを残しておいても治療のアウトカムはかわらなかった、という報告がありました。といっても再発はかなり多くなるようですが・・・論文のFirst authorであるI. Raad先生はこのガイドラインの筆者の一人でもあります。

46. 合併症のあるCLABSIは4~6週間の治療を行う。合併症とは深部への播種性感染、心内膜炎、感染性血栓症である。(A-II)
なお血液培養が72時間以上陰性化しない場合も合併症のあるものとして扱う。(A-II for S. aureus, C-III for other pathogens).

47. CV挿入時は手指衛生、マキシマルバリアプレコーション、クロルヘキシジンによる皮膚の消毒を行う(A-I).

日本には2%のクロルヘキシジンがないのでしばらくはイソジンでしょう。

XII. FN患者を診療するのにどのような環境の整備が必要か?
48.病院内では手指衛生が最も効果的な感染予防である。(A-II).

49.すべての患者にはスタンダードプリコーションを適応し、患者の症状や所見に応じて感染経路別の予防策を導入する。 (A-III).

50. HSCTの患者は個室に収容する。(B-III). 同種のHSCTの患者の部屋はHEPAフィルターつきで12回/分以上の換気ができるようにする。(A-III).

51. 植物、生花、ドライフラワーは入院している好中球減少の患者の部屋にはおかない。(B-III).

52. 病院の職員が具合が悪いときには職場を離脱できるように状況を整えておく(A-II).

具合の悪いときに根性で働いても誰にもいいことありません。

ということでFNガイドラインの抄訳はこれでおしまいです。

2011年2月14日 (月)

IDSA Febrile neutropenia のガイドライン その2

IDSAのFNのガイドラインの抄訳、続きです。

V. エンピリックな抗菌薬の投与はいつまで行うべきか?


22.臨床的にか、細菌学的に感染症が同定されたら、治療期間は臓器と微生物に準じる。少なくとも好中球減少症の間は抗菌薬は投与するし、必要なら好中球が回復してからも続ける。 (B-III).

23.原因のわからない熱が続く場合は最初のレジメンを好中球が明らかに回復するまでは続ける。伝統的にはANC>500以上。  (B-II).

24. 判明した感染症の治療期間が完遂して、症状、所見ともにすっかりよくなっていてもまだ好中球減少の状態が続いている場合は内服キノロンの予防レジメンに変更して好中球が回復するまで継続するという手もある。(C-III).


VI. いつ抗菌薬を予防投与して、どの薬剤で行うか?
25.  好中球減少が強く、長期間続くことが予測される場合はキノロン内服による予防投与も検討する。(B-I). レボフロキサシンとシプロフロキサシンがもっともよくスタディされていて、どちらも大雑把には同等と考えられている。しかし口腔粘膜炎に伴うViridans streptococcusによる侵襲性の感染症のリスクが高い状況ではレボフロキサシンの方が好まれる。GNRのキノロン耐性がどれくらいでてくるかを定期的にモニタリングするシステムを構築しておくことが推奨される。(A-II).

好中球減少時のViridans streptococcusによる侵襲性の感染症についてはこちらを参照。

26. グラム陽性菌に対する活性をもつ薬剤をキノロンの予防投与に追加するのは推奨されていない。(A-I).

27. 7日以内に好中球減少が回復することが予想される低リスクの症例で、ルーチンに抗菌薬を予防投与するのは推奨しない。(A-III).

VII. 抗真菌薬のエンピリックまたはPre-emptiveな投与の役割は?どの薬剤を用いるか?
 ハイリスクの場合
28. 好中球減少の期間が7日を超えることが予想される患者で、発熱が抗菌薬開始後も4-7日目で熱が続いている場合は、エンピリックな抗真菌薬の投与と侵襲性真菌感染症の評価をする。(A-I) すでに糸状菌に対する予防投与が入っている患者の場合にどの抗真菌薬がいいのかを推奨できるほどのデータがないが、系統の違う別の抗糸状菌作用のある薬剤の点滴静注への変更を考慮する。(B-III).

29. エンピリックな抗真菌薬の投与だけでなく、Preemptiveな抗真菌薬の投与という方針もありえる。全身状態が安定していて、胸部・副鼻腔のCTで糸状菌感染の所見がなく、血清マーカーも陰性で、体のどこからも真菌が検出されていない患者では抗真菌薬の投与を待ってもいいかもしれない。(B-II) 抗真菌薬はこれらの指標のいずれかが陽性化した場合に投与開始する。

このへんが今回の改訂の新しくでたところですね。
抗真菌薬の投与をEmpiricにいくのではなくて、画像や血清マーカーの組み合わせで疑わしいと判断した症例だけに行うのがPre-emptiveと呼ばれる治療です。(違う呼び方をする人もいるかもしれません) このへんのスタディが嚆矢となって提唱されてきつつある戦略です。
遷延する発熱の際に対するマネジメントは単に抗真菌薬の比較だけではなく、Empiric therapyとPre-emptive therapyのどちらの戦略を採用するかという比較になってきています。今のところガイドラインの本文を読む限りはPre-emptive therapyの方は実験的な治療であって、スタンダードではない、という位置づけのようです。
おそらく施設によって真菌症の発症率は結構異なるので、それを踏まえてどちらの戦略をとるのが合理的かを個々に検討する必要があるのだと思っています。

低リスクの場合

30. 低リスクの患者では通常真菌感染症のリスクは低いので、ルーチンでエンピリックな抗真菌薬の投与するのは推奨しない。(A-III).

VIII. 抗真菌薬の予防投与はいつ行うか?どの薬剤で行うか?
 ハイリスクの場合
31. カンジダ感染症に対する予防投与は、リスクがかなり高い患者群では推奨される。HSCT、白血病の寛解導入、サルベージのインダクション。 (A-I) 薬はフルコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、Posaconazole、ミカファンギン、Caspofunginが選択肢。

32.Aspergillus感染に対するPosaconazoleでの予防投与はAMLかMDSに対して強い化学療法を行う13歳以上の患者で、予防がなければアスペルギルス感染症を起こすリスクが高いと考えられる場合には考慮する。(B-I).

33. 移植患者で生着前にAspergillusの予防投与に効果があるかどうかはわかっていない。しかし侵襲性のアスペルギルス感染症の既往がある(A-III)、または好中球減少の期間が2週間を超えるようなら(C-III)、糸状菌に活性のある抗真菌薬を投与を推奨する。(C-III)

 低リスクの場合
34. 好中球減少の期間が7日を超えない症例ではルーチンでアスペルギルスの予防投与は推奨されない。(A-III).

今回はここまで。

2011年2月 8日 (火)

IDSA Febrile neutropenia のガイドライン

数年前から出る出るといわれてたIDSAの発熱性好中球減少症のガイドラインがようやく出ました。
今年に入ってからMRSA、FNと続いています。
例によってSummaryの部分を少し訳しました。あくまで個人の勉強用ですので、誤訳などある可能性があります。情報が必要な人は原典にあたってくださいね。

ところどころコメントが入っています。

GUIDELINE RECOMMENDATIONS FOR THE EVALUATION AND TREATMENT OF PATIENTS WITH FEVER AND NEUTROPENIA
Clin. Infect. Dis. 2011 Feb;52(4):e56-93.

I. リスクアセスメントの役割。何がFN患者のハイリスクと低リスクを分けるのか?
MRSAのガイドラインもそうでしたが、章のタイトルがみんな疑問文です。
Recommendations
1. 発熱をみた時点で重症感染症による合併症のリスクをアセスメントすること。(A-II)
リスクによって薬剤の投与経路(経口か点滴か)、治療の場(入院か外来か)、治療期間が変わってくる。(A-Ⅱ)

2. 多くの専門家が考えるリスクの高い症例とは以下
・7日以上の長期にわたる好中球減少
・好中球減少が深刻(≦100)
・and/or 合併症がある(低血圧、肺炎、腹痛の出現、意識障害)
これらの症例はまずは入院させるべきである。(A-II).

3. リスクの低い患者(好中球減少が短い、合併症がない)は内服治療の候補である。(A-Ⅱ)

4. ちゃんとしたリスク設定をするならMASCCスコアを使いましょう(B-Ⅰ)
 i. MASCCスコア<21は高リスク。MASCCスコアか、臨床的なクライテリアでハイリスクとされた人は入院させましょう。(B-I).
 ii. MASCCスコア≧21は低リスク。(B-Ⅰ) 内服または外来での経験的治療の患者は慎重に選ぶこと。(B-Ⅰ)

II. 初期評価としてどのような検査と培養を行うか?
Recommendations
5. 初期の検査は血算、BUN/Cre、電解質、トランスアミナーゼ、ビリルビンくらいはすること。(A-III).

6. 血培は最低2セット。もし留置されているCVがあれば同時にそのルーメンからも採血する。CVがなければ末梢から2セット採取。(A-III)
体重40kg未満の患者(本文を読むと小児のことのよう)では血培の採血量は総血液量(通常は70mL/kg)の1%未満にすること(C-Ⅲ)

カテ血からの採取については複数のルーメンがあればその全てから採取した方がよいと本文には記載があります。

7. 臨床的に疑わしい部位があればそこからも培養をとる(A-Ⅲ)

8. 呼吸器の症状や所見があれば胸部レントゲンもとる。(A-Ⅲ)
まあそりゃそうだ。

III. どの抗菌薬を使うか?どこで治療するか?
Recommendations
General Considerations

9. ハイリスクの患者では点滴抗菌薬でのエンピリック治療を行う。
抗緑膿菌作用のあるβラクタムの単剤(CFPM、PIPC/TAZ、カルバペネム)を推奨する。(A-Ⅰ)
他の抗菌薬(AG、FQ、VCM)は肺炎とか低血圧とかの合併症があるときや、耐性の感染症が疑われるか証明されている際に追加を検討(B-Ⅲ)

セフタジジムは推奨から落ちました。GNRの耐性が広がってきたのと、連鎖球菌などのGPCにカバーが弱いのが根拠のようです。前回のGLではβラクタム±アミノグリコシドという推奨だったのが、晴れてβラクタム単剤が推奨されています。

FNでの際の使用に安全性の問題があるのではないかという疑義が呈されて議論を呼んだCFPMはその後の研究ではっきりした結果がでなかったので残りました。

10. バンコマイシンを含むグラム陽性球菌活性のある薬剤をFNの初期治療にルーチンで使用するのは推奨しない(A-Ⅰ)
カテ感染、軟部組織感染症、肺炎、血行動態が不安定といった限られた病態では考慮する。

11.耐性菌の感染が疑われる状況、菌血症が疑われる場合や患者の状態が不安定の場合は初期治療の抗菌薬の修正を考慮すること。(B-Ⅲ)
 i. MRSAなら早期にVCM、LZD、ダプトマイシンの追加を。(B-III).
 ii. VREならLZDかダプトマイシンの早期の追加を。(B-III).
 iii.ESBLならカルバペネムの使用を考慮。(B-III).
 iv. KPCならコリスチンかチゲサイクリンの早期の使用を。(C-III).

12. ほとんどのペニシリンアレルギーの患者はセファロスポリンは問題なく使用できる。しかし即時型のアレルギー(じんましん、気管攣縮)の既往がある場合はβラクタムをさけて、CPFX+CLDMやAZT+VCMなどで治療を開始する。(A-II).

13. 無熱の好中球減少患者でも感染症を疑わせる症状や所見があればハイリスク患者として評価して治療を行う。(B-III).

14. 低リスク患者を内服または点滴で治療する場合でも、医療現場で投与を行うこと。臨床的な基準を満たせば、外来での治療に移行する。(A-I).
 i. CPFX+AMPC/CVAは内服でのエンピリック治療に推奨する。(A-Ⅰ)LVFXやCPFXの単独投与とかCPFX+CLDMとかはあまり研究されていないが、実際のところはよく使われている(B-Ⅲ)
 ii. LVFXを予防投与に使っていた人は初期治療にLVFXを使わないこと(A-Ⅲ)
  iii. 熱が続いたり、状態が悪化した場合は入院させること(A-Ⅲ)

IV. 治療開始後にいつどうやって治療を推奨するか?
Recommendations
15. 初期投与の抗菌薬の調整は臨床的なデータと微生物学的な結果によって行う。(A-II).

16. 熱が続く原因がはっきりしないが、それ以外は安定している患者の場合、初期治療の抗菌薬を変更する必要はほとんどない。感染症が同定されたら、抗菌薬をそれに応じて変更する。(A-I).
とりあえずバンコマイシンを突っ込んでみても、解熱するまでの期間は変わらなかった、というスタディがあります。

17. 臨床的・微生物学的に同定された感染症は臓器と感受性にあわせた抗菌薬で治療する。(A-I).

18. 初期投与の抗菌薬にバンコマイシンも追加されていた場合、GPCによる感染症の証拠がなければ2日で終了してもよい。(A-II).

19. 治療開始後も血行動態が不安定な場合は抗菌薬のカバーを耐性のGNR、GPC、嫌気性菌、真菌に広げた方がよい。(A-III).

20. 低リスクの患者で病院内で治療を始めた人は状態が安定していれば治療を簡易化してもよい。(A-I).
 i. 腸管からの吸収に問題がなさそうな人は点滴から内服に変更してもよい(A-I).
 ii. 入院していても低リスクと判断される人は外来に治療の場をうつしてもよい。ただし毎日十分なフォローアップができることが前提。(B-III). 発熱が持続するか、48時間以内に再度発熱がみられた場合は、再入院させてハイリスク群と同様にマネージメントすることを推奨する。 (A-III).

21. 広域抗菌薬開始から4-7日経過しても発熱が持続して、感染源がはっきりしない場合は抗真菌薬のエンピリックな投与を考慮すること。(A-II).

今回はここまで続きはまた今度。

2011年1月11日 (火)

骨関節の感染症編 IDSAのMRSA治療ガイドライン

IDSAによるMRSAの治療ガイドライン、続きまして骨関節の感染症です。

人工関節関連のところは訳が読みにくくてすみません。原文でも読みにくいです。

内容的にはおそらく<N Engl J Med. 2004 Oct 14;351(16):1645-54.>
とあまりかわらないと思いますが、確認してみてください。
(訳が間違っている可能性もありますので、原著を参考にしてください。
このブログはあくまで個人の勉強メモです)

ST合剤の投与量が菌血症の時(TMP 5mg/kg)よりも少なめ(4mg/kg)に書いてあります。
根拠は本文を読んだ方がよさそうです(書いてあるかどうか確認してませんが)。
Table3に診断名と薬剤の投与量が一覧表になっていますが、そちらでは骨関節で3.5-4.0mg/kg/回 8-12時間毎となっていて、少し記載にばらつきがあるようです。
エビデンスといっても小さなスタディの寄せ集めなので元となった論文で使ってある量とか、Expert opinionに依拠しているためではないかと推測します。

V. 骨関節感染症

【骨髄炎】
36.   外科的なデブリとドレナージが治療の主軸であって可能なかぎり行うべきである。(A-II).

37.   最善の抗菌薬投与ルートは確立していない。
患者の状況によってIV、PO、IV→POを患者の状況によって選択する。(A-III).

38.   IVで使えるのはバンコマイシンとDaptomycin。
代替薬はST合剤(TMP4mg/kg/回 1日2回)+RFP600mg
LZD600mg1日2回、CLDM600mg1日3回 (B-III).

39.   専門家によってはRFPを上記に選択した抗菌薬に追加する。(B-III)
菌血症を合併している場合には菌血症がクリアされてからRFPを追加する。

40.   MRSAによる骨髄炎の最適な治療期間は不明。最低8週間が推奨されている。
専門家によっては1-3ヶ月あるいはデブリが不十分な時はそれ以上の
期間、内服のRFPをベースにした併用療法(感受性に応じてST、Doxy-Mino、CLDM、FQ)
を推奨している。(C-III).

41.   ガドリニウムで造影したMRIが画像の第一選択。(A-II).
特に早期の骨髄炎と合併した軟部組織感染の検出にすぐれる。
血沈とCRPは治療の効果判定に有用な場合もある。(B-III).

【細菌性関節炎】
42.   ドレナージかデブリを必ず行うこと。(A-II).
抗菌薬の選択は骨髄炎に従い、治療期間は3-4週間を推奨。(A-III).

【デバイスに関連した感染症】
44.  Early onset(手術から2ヶ月以内)の感染か、
急性の血行性の安定している人工関節の関節炎で症状の持続期間が3週間以内で
デブリをしたがデバイスが残っている場合、
最初は骨髄炎に準じた点滴治療にRFPを追加して2週間治療した後、
FQ+RFP、ST+RFP、テトラサイクリン+RFP、CLDM+RFPで股関節なら3ヶ月
膝関節なら6ヶ月治療する。(A-II).
インプラントが不安定になっている場合か、Late-onsetの感染症か、3週間以上症状が持続していた場合にはデバイスを除去して治療する。(A-II).

45.   Early-onsetの脊椎のインプラントの感染(30日以内)か
感染している部分にいれたインプラントの治療は
点滴治療+RFPに続いて、長期間の内服治療を行う。(B-II).
最適な治療期間は不明。内服は少なくとも骨が癒合するまでした方がよいだろう。
Late-onsetの感染はデバイスを除去すること。(B-II).

46.   ST、TC、FQ、CLDM(いずれも±RFP、)による長期抑制療法は
デバイスが除去できない患者では考慮する。
FQは必ずRFPと併用すること。なぜならドレナージが不十分な場合には
FQ耐性が出現する可能性が高いから。(B-III).

【小児の場合】

47.   小児の急性血行性骨髄炎、関節炎に対してはバンコマイシンが推奨される。(A-II).
菌血症や血管内感染のない患者で安定していれば、CLDM10-13mg/kg/回IV
6-8時間毎で(40mg/kg/日)も耐性率が低い状況(例えば10%未満)ではEmpiric therapyとして使えるかもしれない。(A-II).
治療期間は個別に設定するが、典型的には関節炎には3-4週間の治療
骨髄炎には4-6週間の治療が推奨されている

48.   小児におけるバンコマイシンとクリンダマイシンの代替薬は以下のとおり。
Daptomycin 6 mg/kg/day 1日1回 (C-III)
LZD 600mg PO/IV 1日2回 12歳以上 (C-III)
12歳以下では10mg/kg 8時間毎 (C-III)

2011年1月 8日 (土)

バンコマイシン編 IDSAのMRSA治療ガイドライン

IDSAのMRSAガイドライン抄訳第2弾 バンコマイシンの投与編です
といってもこの部分は以前にでたバンコマイシンの投与法のガイドライン
Am J Health Syst Pharm. 2009 Jan 1;66(1):82-98. からとってますよ、とのことでした。

以前に比べると大量の投与を推奨して、目標トラフを15-20に設定することが推奨されています。
面白いのがあまり重症でない軟部組織感染であれば昔ながらの投与量でもよい、という
推奨があるところですね。

Ⅷバンコマイシンの投与量設計とモニタリング

60.   腎機能が正常な患者では15-20mg/kg/回(actual body weight)の投与を推奨。
なお1回の投与量が2gを超えないようにする。(B-III).

61.   重症感染(敗血症、髄膜炎、肺炎、IE)では25-30mg/kg(Actual body weight)のLoading doseも考慮される。
レッドマン症候群やアナフィラキシーのリスクがあるので、大量のバンコマイシンを投与するときは
2時間以上をかけたり、抗ヒスタミン薬の前投与を考慮してもよい。(C-III).

62.   トラフ値はもっとも正確なバンコマイシンの投与量設計の指標である。
4回目か5回目の投与の直前の定常状態で測定する。(B-II).

63.  重症感染症(菌血症、心内膜炎、骨髄炎、髄膜炎、肺炎、重症軟部組織感染症)
の場合はバンコマイシンのトラフは15-20μg/mLを目標とする。(B-II).

64.   腎機能正常で肥満のない人であれば、ほとんどの軟部組織感染に対しては
1gを12時間毎でも十分でトラフ濃度測定もいらない。(B-II).

65.   重症感染と肥満、腎機能障害、分布容積の変動が大きい患者ではトラフのモニタリングを推奨する。
(A-II).

66.   バンコマイシンの持続静注は推奨されない。

【小児の場合】
67.   小児ではバンコマイシンの投与設計のデータが乏しい。
重症感染症では15mg/kg/回 6時間毎を推奨。(B-III).

68.   小児の目標トラフを15-20μg/mLにすることの安全性と効果については
もっと研究が必要だが、重症感染症では考慮すべきである。(B-III).

2011年1月 6日 (木)

IDSAのMRSA治療ガイドライン

年明け早々にIDSAからMRSA治療のガイドラインがでました。

個人的に興味のある血流感染の推奨を訳してみました。
まだ本文までは詳しく読めていません。
訳に間違いがある可能性大なので詳細は原典をご確認ください。

興味深いと思ったのは
・ 菌血症に対してGMやRFPの追加は推奨されていない
・ ST合剤の投与量が具体的に書いてある
 (これまであちこち調べても結構ばらばらの記載だった)
・ Persistent bacteremiaに対する対処が項目として設けてある
 (答えはないんだけど・・・)

Liu C, Bayer A, Cosgrove SE, Daum RS, Fridkin SK, Gorwitz RJ, et al.
Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America for the Treatment of Methicillin-Resistant Staphylococcus Aureus Infections in Adults and Children.

Ⅲ MRSAによる菌血症と感染性心内膜炎のマネジメント
 【自然弁の場合】

19. 合併症のないS. aureus菌血症(SAB)の治療はVCMかdaptomycin(6mg/kg 1日1回)を最低2週間。
合併症のないSABの定義
 心内膜炎が除外
 人工物がない
 最初の血培から24-72時間後の血液培養が陽性化していない
 治療開始後72時間以内に解熱
 転移性病巣の証拠がない

上記にあてはまらないComplicated bacteremiaでは
4-6週間の治療を推奨。Daptomycinは8-10mg/kgに増量することを推奨する意見もある。 (B-III).

20.  IEの場合はバンコマイシンかDaptomycinの6週間投与を推奨。

21.  ゲンタマイシンのバンコマイシンへの追加は自然弁のMRSAのIEでは推奨しない。 (A-II).

22.  リファンピシンのバンコマイシンへの追加は自然弁のMRSAのIEでは推奨しない。 (A-I).

23. 侵入門戸の確定と他の臓器に除去すべき感染のフォーカスが
広がっていないかを調べるべきである。 (A-II).

24.  血培の陰性化を確認するために2-4日後の血液培養の再検を推奨。 (A-II).

25.  心エコーは全員に行うべきである。TEEはTTEよりも好まれる。 (A-II).

26. 弁置換術を考慮すべき状況
 疣贅が大きい(>10mm)
 治療開始から2週間以内に2箇所以上の塞栓症が起きた
 重症の弁の機能不全
 弁の穿孔、開裂
 非代償性の心不全
 弁周囲、心筋の膿瘍
 ブロックの出現
 発熱か菌血症の持続

【人工弁の場合】
27.  人工弁の心内膜炎の場合はVCM+RFP+GM (B-III).

28. 早めに弁置換術の適応を考慮する(A-II).

【小児の場合】

29. 小児ではバンコマイシン15mg/kgを6時間おきで菌血症と自然弁のIEは治療開始。
治療期間は2-6週間で感染源、血流感染の有無、転移性病巣の有無などでかわってくる。
代替薬の安全性と効果は小児ではデータが少ない。
クリンダマイシンとリネゾリドはIEか血管内感染の懸念がある場合は使うべきではないが、
菌血症が速やかに消失して、血管内のフォーカスによらない場合は考慮してもよい。

30. 小児で菌血症とIEに対してルーチンにリファンピシンやゲンタマイシンを併用するべきかどうかについてはデータが十分ではない。個別に判断すること。

31. 先天性心疾患がある小児、菌血症が2-3日以上持続した小児、
その他感染性心内膜炎が疑われる所見がある小児では心エコーをすること。

X.  持続する菌血症の場合とVCMで治療失敗した場合どうするか

71.  除去すべき感染フォーカスが残っていないかを探すこと。 (A-III)

72. 感受性があればDaptomycin high dose(10 mg/kg/day),
この場合は他の薬剤(ゲンタマイシン、リファンピシン、リネゾリド、ST、βラクタム)と
の併用を考慮する。 (B-III)
本文によればVCMにRFPやGMを足すことではなくて薬剤の変更を推奨すると。

73. VCMとDaptomycinへの感受性が落ちている場合のオプションは
Quinupristin-dalfopristin 7.5mg/kg 8時間毎
ST 5mg/kg 1日2回 IV
LZD 600mg PO/IV 1日2回
Telavancin 10 mg/kg/回 1日1回
これらのオプションは単剤あるいは他の薬剤と併用する。 (C-III)

気が向いたら他のセクションも訳してみます。

«MSSA菌血症に対してβラクタムはみな同等か?